第7話【速報】うずめちゃんの新デザインが神すぎてファン歓喜www
■猿渡宅 作業部屋
その日、俺はうずめちゃんの配信をドキドキしながら待っていた。
待機部屋に入り、いつも通りのあいさつが流れるのを見る。
:今日も重大発表だってな
:前に行っていた浴衣イラストだろ?
:サルヒコママの新作楽しみ!
今日も重大発表と名を打ったタイトルに入ったファンは注目しているようだ。
俺は缶ビールをカシュッと開けて飲む。
作業部屋にいるのは何かあった時、すぐにデザイン対応するためだ。
汚すのが嫌なので、今は祝杯のビールだけである。
「あの日もそういえば、こんな感じだったな……」
うずめちゃんの新デザイン発表といって、出てきたのは俺が大学合格の祈願のために書いたイラストだった。
そこから、うずめちゃんの事務所とかかわり今ではママとして新デザインの制作やグッズのデザインもやっている。
浴衣以外のミニキャラ風のものもキーホルダーなどが作られて、すでに販売されていた。
天原さんに売り上げを聞いてみたら、ウヒャヒャヒャと女性らしからぬ笑いをしていたので、上々なんだろう。
『みんなー、こんうずめー』
:こんうずめー
:今日も可愛いー!
:うずめちゃぁぁぁぁぁん!
:こんうずめー
うずめちゃんが姿を見せるとチャットが挨拶で埋まった。
『今日の重大発表はみんなもなんとなーくわかっているかと思うけど、浴衣衣装ができあがったよ♪』
:いやったぁぁぁぁ!
:8888888
:8888888
:今日が楽しみで夜しか寝れなかったぜ!
:寝てるじゃんw
:それなw
楽しみにしている人がいるとわかると、なんだか気恥ずかしい。
俺がデザインしたものがこうして、認められているのは嬉しかった。
今回はちゃんと自分で仕事として受けて、お金の話もしたので喜びもひとしおである。
『着替えてくるから、ちょっと待ってね』
うずめちゃんが画面から消えると、ワクワクした様子がチャット欄にあふれた。
しばらくすると、下駄をはいた白い足が画面の上から生えてくる。
深い紺色の浴衣の足元から全体がゆっくり降りていった。
浴衣の柄には白や銀色で描かれた雨の模様が散りばめられている。
雨粒は、大小さまざまな形で描かていた。
:綺麗!
:雨模様なのがいい感じ!
:生きててよかったぁー!
銀色の帯が映ると、さらに盛り上がる。
:うずめちゃんはやっぱり巨乳
:巨乳でもバランスよく浴衣デザインにできるのはサルヒコママの実力だな。
:サルヒコママはこれから注目されるかもしれないな
:すでにYaoyoro’sが専属契約に動いているという噂も……
:ΩΩΩ<な、なんだってー!!
「結構いいとこついてくるんだよなぁ……」
専属契約はまだしていないが、今はYaoyoro’sのVtuberしか描いていない今であれば、そういわれても仕方ないことだ。
ビールをグビッと飲んで一息つく。
大学に入って3か月あまりだが、俺の環境は大きく変わった。
もちろんいい方向で……。
画面ではうずめちゃんの全身が映り、動いて挨拶をしている。
うん、かわいい。
:アップしている髪型もいいね!
:ありがとうございます。ありがとうございます。ありがとうございます。
:髪留めとかも月をイメージしていて、綺麗!
全デザインを発表されたことで、チャットは大いに盛り上がっていた。
スパチャも飛んだりしていて、うずめちゃんがそれを読んでいる。
特に問題もないようなので、俺は夕飯のために作業部屋を後にした。
◇ ◇ ◇
夕飯もすませたあとシャワーも浴びて戻ると、うずめちゃんからメッセージが届いているのに気づく。
「なんだろう? モデルにトラブルはなかったっぽいけど……」
俺がメッセージを確認していると、そこには驚くべきことが書かれていた。
”
サルヒコママへ
浴衣イラストありがとう!
みんなにも喜んでもらえてとっても嬉しかったよ。
それでね、みんなの応援の力を貰えたから1日だけど実体化できるようになったんだ。
だから、直接会ってみない? 人が大勢いるところだと大変なことになるかもだから、サルヒコママの部屋とか……
よかったらお返事ちょうだいな♪
天野うずめ
”
メッセージの全文を確認したとき、俺は変な声をだす。
「実際に会う……だと!?」
神様が実体化できることは天原さんとか、皇さんとかを見ているのでわかる。
だけれども、うずめちゃんが……それも俺の部屋で会いたいとかいうのは驚きと共に不安がでてきた。
確かに初めてデザインしたキャラクターがうずめちゃんことアメノウズメである。
直接会って、話すとしたって何を話せばいいのか思いつかなかった。
「でも……会わないっていったら、ショック受けそうだよなぁ」
うずめちゃんは優しい。
優しいから人一倍ショックを受けやすいのも長年見ていたからわかっていた。
「まぁ、直接お礼なども言いたいし……会うか……」
いろいろ理由を付けてみたものの、俺はうずめちゃんに出会うのが楽しみでしかたなかった。
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