第5話【大学】俺の大学同期は理解ある変な奴だった【Vtuber】
■難波芸術大学 キャラクター造形科 教室
うずめちゃんとの打ち合わせを終えてから数日。
GWをバイト三昧で過ごしながら、浴衣のラフアイディアを俺は練っていた。
浴衣だけではなく、髪型やアクセサリーも併せてバランスを整えなければいけないので、かなりの大仕事となる。
さらにはグッズ用のデザインに、休みの間についでで良いからと
あの人はぶっちゃけてから、俺に対する遠慮がなくなっている。
なので、個別に連絡先を交換した月城さんに厳しく叱って貰うようにお願いした。
ただ、あんまりにも俺が断りすぎると、怖いヤの付く弟が来る可能性があるので、俺の人生はだいぶ詰んでいる。
「久しぶりの大学だぁ……キャラクター造形の勉強ができるから、一石二鳥だけど、つらいなぁ……」
「どうしたんだい、GWも働きづめだったマイベストフレンド猿渡くん!」
「高城かぁ……お前はGWは地方イベントにいっていたのか?」
「何をいう、GWは秋葉原のホビーショップの展示に行くのが通例さ。いいものがあったら買っていきたいしねっ!」
(`・ω・´) といった表情でキメているのは大学に入ってからの友人である高城翔太だ。
俺と同じ2浪して大学に入ったという仲間であることを知ってから、よくつるんでいる。
今、うずめちゃんのママになっているのは経緯は伝えていないが、知っている男でもある。
ちなみに、顔の造形はかなりよく黙っていれば眼鏡をかけたインテリ系イケメンなのだが、喋ればオタトークと無駄なポーズを決めるために高城に近寄る女子はGWをあけた今、絶滅していた。
「それで、悩んでいる顔をしているのは例のうずめちゃんの件かな? 配信みたよ、浴衣をデザインするんだってね」
「そうなんだよ……ラフパターンをいくつか用意して見せたいんだけど、なかなかしっくりこなくてなぁ……」
「夏までに完成となると、デザインは今月中に決めたいといったところかな?」
大学に入ってよかったと思うのはこうして創作の相談ができる仲間ができたことである。
俺の聞きたいこと、詰まっていることを理解してくれるのはありがたかった。
「そうなんだよ……推しの衣装だから、いい加減なものにしたくないからラフ案でも悩んじゃってさぁ……他にも案件が来ているからそれもやらなきゃだし……」
「それじゃあ、他の簡単な奴から済ませたらどうだい? 猿渡くんって、マルチタスクができるタイプじゃないから簡単に終わるのからやっていくんだね。あと、浴衣女子のデザインはソシャゲを参考にするのもありだよ」
高城の言葉に俺は肩の荷が下りたような気がする。
確かにデザインで悩むものよりかは、決まっているデザインのSDイラストのほうが描きやすい。
まずはそこから初めて、筆が乗ってから他に移るのはありだ。
タスクを頼まれた順に処理しようとしていて頭が固くなっていたようである。
高城に相談してよかったぁ……。
「それで、このアドバイス料として、僕のお願い聞いてくれないかな?」
「俺にできることであれば……」
「Yaoyoro’sの社長さん紹介してくれ、うずめちゃんのフィギュア作りたいんだ!」
遠慮しがちに俺が答えると、高城は机に頭をこすりつけながら大きな声で叫んだ。
「声がでかいよ! Yaoyoro'sの社長って、天原さんだよな?」
「そう、天原様。あの神のごとき麗しい造形美に僕のハートはキャッチされてキュンキュンしているのさぁ!」
頭を机にこすりつけていたかと思ったら、突如立ち上がって、両手で胸を抑える謎のポーズをとり出す。
なお、この教室にいる奴らは高城の奇行に慣れたやつばかりだ。
面構えが違う……ああ、俺を同類を見るようなまなざしでみないでっ!
「ええっと、あの人は高城が思っているような人じゃない、ぞ?」
一か月あまりで敬称が取れてクソ太陽神に格下げになった駄女神を俺は頭の中に浮かべる。
「Yaoyoro’sのインタビュー動画やSNSをみるんだ。とてもいいVtuber事務所の社長じゃないか」
「ああ、それはキレイな天原さんだからだ……」
「そう、綺麗な天原様だよねぇ」
日本語ってなんでこんなに難しいのっ!
俺は心の中でさめざめと泣いた。
とはいっても、紹介するには悪くない奴である。
グッズ制作を拡大していきたいと考えているあの人たちには渡りに船だろう。
「わかった、今度伝えておくから……返事はわからないがな」
「ありがとう、マイベストフレンド猿渡くん!」
ぎゅうと高城に抱き着かれたとき、授業開始のチャイムが鳴った。
最悪のタイミングである。
全然デザイン進まなかったなぁ……。
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