第3話 同じ高校の一年女子、3

 あれから月日が流れたが、私のお母さんは塞ぎ込んでしまった。あの出来事は本当に正解だったのだろうか。私には分からない。いや、正しかった。そう信じたい。


 私の家で起きた出来事だが、実は別のスマホでライブ映像として配信していて、警察への根回しも予め済ませていた。何かが起こらなければ動いてくれない警察だが、実際に起きている事に対してはきちんと対応してくれた。二歩は、少し痛い目にあわせようとしただけだったんだって言い訳していたけど、人質をとっている姿を見られた時点でご愁傷様としか言えない。

 因みに、二歩と友達の会話が映された動画だが、あれはその友達から提供してもらったものだ。二歩は金を借りても返さないし、待ち合わせ時間にはいつも遅れるしで、そろそろ縁を切りたいと思っていたらしく、一度痛い目にあったほうがいいかもしれないなと言って協力してくれた。



…………………………



 学校の昼食の時間、私は意を決して、あの占いの人に相談することにした。占いの人の名前は待雪マツユキ ユウ。一つ上の先輩だ。一時期、記憶喪失になった人ってことで話題になっていた。


 弁当を持参してその人の教室へと入った。


「あの!待雪先輩。ご飯一緒にいいですか?」


 少し驚いた顔をしていたが、優しい声で了承してくれた。待雪先輩の隣の席には、占いで案内役をしていた美女もいたので、一個前の席へと座った。


「あの、実は相談がありまして」


 そして、実際に起きた出来事やお母さんが塞ぎ込んでしまったことなどを話した。


「なるほど。不倫男とそのまま結婚して、相手の裏を知らないまま過ごす方が幸せだったんじゃないか。そう思ってしまう自分もいるってところかな?」


「はい。実際に塞ぎ込んでいる母を見ていると、あの行動が正しかったのかどうかが分からなくなってしまって。あ、占いで協力してもらったのにこんな事を言ってしまってすいません」


「別に構わないよ」

「因みに、君は・・・えーと名前聞いてもいい?」


「あ、モモと言います」


「モモは、今彼氏とかいる?あ、いなくても、居たとして考えてね。彼氏が浮気していたとして、それを知らないほうが幸せだと思う?」


「私は浮気する人とは長く付き合いたくないので、早めに知っておきたいって思います。でも」


「でも、必ずしも全員が全員、そういった考えではない。そう言いたいんだろう?」


「はい。そうです」


「じゃあ、視点を変えて、モモ自身が、母親の再婚相手が不倫する人だと知らずに過ごすって事になったらどう思う?」

「今回の件にしてみると、相手の男性が不倫することを知らずに母親が結婚していたとしたらって事を考えてみて」


「それは嫌ですね。私だけで考えれば、あの人が不倫する人だと知れて良かったと思います」


「なら、少なくとも、モモを1番に考えた時には、あの行動は正解だったと言えるんじゃないかな?モモの母親はモモの幸せよりも自分の幸せを優先する人?」


「いえ、私の母は私を1番に考えてくれます」


「うん、ならその事を母親にも伝えてみたらどうかな」

「もしかしたら、自分の見る目のなさでモモに危害が及びそうになったことを後悔しているだけかもしれないし、一度本音で話したほうがいいと思う」


「そう、ですね。一度じっくり話をしてみようと思います」

「なんか、待雪先輩に思い切って話しかけてみて良かったです。本当にありがとうございます!」



 その後、浮気する男の見分け方なんかを聞いてみたが、これこれをする男は絶対に浮気しない、といったものは存在しないらしく、こういう男は浮気する傾向にあるといったものを何個か教えてもらった。なんか、モテる男や愛想の良い男なんかは大抵浮気するらしい。本当に浮気しない人を狙うなら、浮気したくても出来ないようなモテない男性を狙うしかないのだとか。ただ、浮気ってのは軽犯罪への向き合い方に似ていて、軽犯罪をバレなきゃいいだろうという考え方な人は浮気に対してもそういった考えの人が多いらしく、相手がこれをしたらどう思うかといったことを考えられる人は浮気をしない傾向にはあるらしい。けど、大抵の人は、悪い事だからやってはいけないという考え方ではなくて、バレたら犯罪になる、若しくは、バレるリスクを考えてやらない、といった考え方の人が多いから、浮気しない人を見つけるのは意外と難しいと言われた。この人は浮気しないって人を見つけたとしても、その人を四六時中監視でもしない限り、絶対に浮気しない人だと確信することは出来ないし、相手を信じることしか出来ないけれど、人というものを知れば知るだけ、そもそも期待しないほうが変な労力使わなくていいかもしれないと思う時がモモにも来るかもしれないけどね、なんて事も言われた。



「因みに、待雪先輩は浮気をする人ですか?」


「ふっ。どうだろうね。試してみる?」


 あっ、これは冗談で言われているな。というか、隣の美女ともう付き合っていそうだ。少し残念。ま、私はチョロインじゃないからそんな簡単に好きになったりなんかしないけどね。


 それはそうと、本当に感謝しています。待雪先輩。






 そういえば、二歩が2度も転けたのは偶然だったのだろうか?転け方が不自然のように感じたけど、流石にこれは待雪先輩が何かしたとかではないよね?

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