第4話 担任の女教師(散雪カンナ)

 今日は文化祭一般公開の日。私のクラスは『揚げパン』を売る。ただ、それとは別に店を出す生徒がいた。待雪 優と黄梅オウバイ 美月ミヅキだ。待雪君の占いが校長先生に気に入られてから見る見るうちに話が進み、昨日の学内開催ではPR動画でバズり、もうなんか凄いことになっている。教師なのに語彙力が皆無だけど、本当になんか凄いことになっている。


 いま私は、変装して占いの店に並んでいる。占いというか、相談したいことがあったのでこうやって並んでいるのだが、内容が内容なだけに、身バレしないよう準備をしてきた。


 占いの店は、予想以上に客が訪れたらしく、途中から整理券を配っての抽選へと変わった。が、私は教師パワーを使って美月ちゃんにお願いをしたことで当選し、今ここにいる。


 あ、私の番がきた。失礼しまーす。中に入り待雪君と対面する。


「よろしくお願いします」


「よろしくお願いします・・・では早速ですが、本当に知りたい事を聞いてください」


 よし、言うか。変装してるから敬語で。


「はい。あの、実は私、痔が酷くて、今までも切れ痔とはずっと付き合ってきたのですが、今回はもう歩いたり少し動くだけでも激痛が走り、流石に病院へ行こうと思ったんですが、この辺に女性医師の肛門科の病院はなくて、それで、病院に行かなくても治る方法があったら教えて欲しいです。あと、病院に行ったとしたらどんな事をされ、また、すぐ治るのかどうかを知りたいです。占いで聞く事ではないですけど、どんな質問でも答えてくれると聞いたので」


「聞きづらいことだったと思いますが、こうやって勇気を出した事、とても尊敬します」

「まず、病院に行った場合、これは貴女が今回病院に行った場合を指しますね。人の目の前で糞便をさせられた後に洗浄され、その後、お尻の穴を思いっきり見られます。ただ、貴女の痔は手術出来ないタイプらしく、痛み止め等の薬を渡されて終わるので、基本的には何かが変わることなくお尻だけ見られて終わります」

「ですが、2週間ほどで痛みも和らいでいくのでそれまで我慢していただければ、今の辛い日々も改善されていくでしょう」


「2週間・・・ですか」


 2週間もこれに耐えなきゃいけないの?どんな地獄?こんな事誰にも言えないから、痛みがあることを我慢しながら生活しなきゃいけないのに。


「申し訳ないです。私には貴女をすぐに治せる力もありません」


「いえ、とんでもないです。病院に行った場合の結果を教えてくれただけで充分です」


「良ければ、ここからは無料で相談に乗りますよ。何かあればどんどん聞いてください」


「え?いいの?」


「はい。どうぞ」


 何かあるかな?あ、そうだ。


「えーと、私の友達にマウントばっか取ってくる子がいるんですけど、上手い返し方とかってありますか?」


「多分、マウントへの上手い返し方と調べると色々出てくると思うので、貴女が思い描いている人へのクリティカルヒットを教えますね。あ、出来ればもっと詳しく教えてくれますか?」


「はい。その子は結婚していて専業主婦をやってるんですけど、毎回毎回会う度に結婚しないの?とか、彼氏はまだ?とか聞いてきて、居ないと言ったら、えーこんなに可愛いのにー勿体ない、結婚は良いよ、幸せすぎて辛い、とか言ってくるんです。まだ、悪意がないような感じなら許せるんですが、明らかに悪意を持って言ってくるので、なんだかなーって思ってしまって、縁を切ることも考えたんですが、昔は本当に仲が良かったので・・・」


「なるほど。結婚マウントですか。因みに先生は、あ、センセーショナル!な気持ちにはなりますか?」


 え?バレてる?先生って言ったよね?誤魔化しきれてないよ?美月ちゃんから伝わった?いや、美月ちゃんには事情を話したし、そういう事をする子には思えない。え?もしかしてこの変装、あまり効果ない?は、恥ずかしすぎる。

 少しの沈黙のあと、また待雪君が話し始める。


「えーと、因みに貴女は、その子がどのようになって欲しいですか?謝罪や反省をして欲しいのか、徹底的に追い詰めたいのか、どうですか?」


 あ、気付いていないという体で話を進めるんだ。じゃあ私もそのままでいくか。


「そもそも、あの子が謝罪や反省をする未来が訪れることってあるんでしょうか?」


「あー、無い、ですね。正確には、クリティカルヒットする事で少しだけ反省はしますが、それを態度には出さないです。あー、終わってんな、こいつ」


「え?」


「あ、すいません。その子、こう言っては悪いですが、もう手遅れです」


 その後、縁を切るかどうかの基準を聞かれ、その友達にクリティカルヒットを与える方法や、その準備について詳しく教えてもらった。その内容は、占いって何だっけって思ってしまうような緻密さで、普通の人なら馬鹿にするようなものであったが、PR動画の件や待雪君から発せられる不思議な雰囲気とかも相まって、取り敢えずやってみようと思えた。ただ、待雪君も痔の事に配慮したのか、準備は2週間以上後からのスタートだった。











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⚠︎痔は私が実際に経験したことを書いていますが、うろ覚えの所や私自身が男性のため、必ずしもこういった対応を取られるとは限らないです。まあ、普通にお尻の中を見られるのは恥ずかしかったですけど、病院の方はとても紳士的な対応をしてくれました。

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