第2話

私が小学校低学年の頃、人生で初めての転機が訪れました。それは父方の祖父が倒れたとの事でした。


まだ幼かった私には詳しい事は話して貰えませんでしたが、どうやら脳の血管が切れたみたいで一命は取り留めましたが記憶障害や言語障害、他にも身体が動かせなくなる等様々な後遺症が残りました。そしてしばらく入院した後、祖父は私達3人の家で面倒を見るとなりました。

祖父はあの狂った家の中では1番まともだったと思います。会いに行くと「よく来たね」と言ってくれてたまに戸棚からお菓子をくれることもありました。そして幼稚園や学校の話を聞いてくれてとても優しく、父と母が祖母と喧嘩している時には一喝してその場を収めることの出来る頼れる人でした。

そんな祖父が倒れてからまるで別人の様になってしまい幼いながらに戸惑ったのを覚えています。けれど倒れたばかりの頃は会話すら出来なかったのにリハビリに通う様になって少しづつコミュニケーションを取れるようになっていくのは嬉しかった記憶があります。

ですが現実はそう上手くいかないもので、祖父は間もなく亡くなりました。原因は泊まりでリハビリを受ける事があったのですが、その日家に帰れると知り、嬉しさのあまりご飯を急いで食べたことによりご飯が喉に詰まり亡くなりました。

あまりに突然の事でしかも亡くなり方が私の想像の斜め上を行っていたものですから現実味が無く、悲しいと思う事も涙を流すことも無いまま葬儀が終わり骨壷に収められてしまいました。


ただ祖父が亡くなった事で1人壊れていっている人がいるだなんてその時はまだ誰も気づいていませんでした。


その壊れていっているのは私の父でした。

明確に何時からなのかは分かりませんが、私が父の様子が変だと思ったのはあんなに好きだったテニスに行かなくなり、仕事も長期間休む事が増えた頃でしょう。

そんな違和感を覚えたままおそらく私が聞いてはいけないのだろうと直感的に思い父の事について詮索するのは辞めました。


そして月日は流れ私が小学校5年生の頃、私は周りの子より少し早めの反抗期に突入していました。反抗期というものは不思議なもので本心では本気で嫌っていないのに嫌悪感を覚えるということがあります。私はそれの矛先を父に向けてしまいました。普通の反抗期なら娘が父親に反抗期の矛先を向けるのは当たり前の事だと思います。漫画やドラマでもそういう描写はよくありますし。けど私の場合は向けてはならなかったのだと思います。


小学5年生というのは私にとって悪夢の始まりの年でした。

まず母の乳がんが発覚したのです。詳しい検査は大きい町へ行かなければ分からないとの事で地元の北国で一番大きな町の乳がん専門の病院で診てもらう事となり結果的に手術をしその後抗がん剤治療等もしていくという事になりました。それを聞き不安こそ無かったけどずっとソワソワした日々を送っていました。

そして母はその町で手術をするという事で約1ヶ月程家を空けると伝えられました。その代わりに母方の祖母が家に来てくれるとも伝えられていました。


母方の祖父は私が産まれる前に亡くなっていて祖母は1人アパートで暮らしていました。幼い頃はよく面倒を見てもらっていました。ですが幼心ながらに何となく性格の不一致もずっと感じていました。それが母が不在の間に明確になりました。


各々家には家のルールというものがあると思うのですが、祖母はそんなものお構い無しと言わんばかりでした。特に父が激怒する程で例えば、洗濯物を干すのに私の家では室内だと和室と決めてあったのですが、祖母はリビングの入口のところで洗濯物を干していたり、床の間に新聞紙をひいて洗濯物を置いたりといった事をしていました。リビングでの事は邪魔だなぐらいにしか私は思っていなかったのですが、床の間の事については流石にまずいのではと思いました。というのも私も幼い頃から床の間には上がったらダメだよと教え育てられ、床の間に置くものは花をいけた花瓶か雛人形ぐらいだと思っていたからです。案の定、父は大激怒し祖母は母から連絡が行ったのか家に来ることは無くなりました。


そんな中、先程もお話した通り私も反抗期に突入し母と電話する際にほぼ毎回父のあれが嫌だこれが嫌だと話をしていました。今思うとこの私の行動が良くなかったのかと思ってしまいます。

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