第23話 帝国騎士の急襲
「……大変です!帝国兵です!!!!」
「「なに?」」
ゆったりとした会食の終わりに2人でデザートを頂いていると、急に外が騒がしくなり、騎士たちが叫んだ。
魔力の揺らぎを感じなかった……どうして?
「まさかこのタイミングで襲ってくるのか?参ったな。窓と扉を全て閉めろ!守りを固められるか?外の状況は?」
王子は頭を抱えつつ、立ち上がって指示を出し始める。
「エリーゼ様!」
そして私の方にはエレノアが駆け寄ってきた。
ドレスは動きづらいわね……。
そこへ、外から帝国騎士の声が響く。
『クリストファー王子。貴殿には不正に帝国領内を嗅ぎまわった疑いがかけられている。せっかくの使者ではあるが、調査に協力いただく。武装を解除して直ちに出頭せよ』
「まさか……」
「王子。出てはなりません。出て行っては相手の思うつぼです。殺されてから嫌疑をかけられるだけです」
さすがは暴虐の限りを尽くして成り上がってきた帝国の考えることだ。
王国ですらその対象にしたというのは驚きだが、恐らく私が暗殺しない、もしくは失敗したと判断したのだろう。
「もちろん、ここで捕まるつもりはないが……」
王子も理解しているわね。
それなら脱出してもらえばいいわね。
「ダリウス!」
「あぁ、既に地魔法で建物を覆ってある。ある程度の魔法攻撃は防げると思うが……」
「この屋敷には魔力の認識阻害がかけられているみたい。おそらくは……昨日、私が会食に赴いている間に……」
気付けなかったのは私の落ち度だ。
よく考えたらセバスチャンとの通信があんなに途切れるのは不自然だった。
私は皇帝からの提案に踊らされ、不自然な点を見落としてしまっていた。
「王子、申し訳ございません」
「謝罪は後だ。今は突破することを考えてほしい」
「はっ!」
情けないが、もう失敗はしない。
ドゴーーーン!!!!
そこに衝撃音が鳴り響く。
出てこない王子にしびれを切らして魔法を撃ってきたわね。
ダリウスがかけた魔法が防いでくれているけど、それすら計算済みかしら。
『出てこないのであれば、帝国への敵対行為とみなし、この場で処分させてもらうぞ。行け!』
大声をあげる帝国騎士は恐らく進軍の指示を出したのだろう。
既に全ての窓を閉じているが、建物に向けて進んでくる騎士たちの足音が重く響く。
魔法も放たれていて、壁にぶつかって爆音があがる。
ガッシャーン!!!
そして帝国騎士の魔法がまどを打ち抜いてきた。
「くっ、多勢に無勢だな……」
その窓から見るに、おそらく1,000近い騎士に囲まれている。
この建物は帝国が用意した建物だ。
おそらく逃げ道は塞がれていると考えていい。
しかし何のメリットがあって今この時点で王国に敵対するのか?
まだ帝国の支配は盤石ではないはず。
帝都は活気づいているが、乱世となっていたこの地域をたかだか数年で完璧に支配下に置いているとは思えない。
さらに王国との間にはまだ他の国も存在する。
それらを壊滅させ、支配地を広げてからぶつかってくるものと思っていた。
なのに……。
いや、これはもしかして敵対行為ではないのか?
王太子の陣営と手を結んでいるとすると、ここでクリストファー王子が死ねば王国の後継者はアホ王太子だ。
帝国にとって、王国のトップがアホなのはメリットしかないはず。
さらにアホ王太子の陣営が既に帝国に渡りをつけて今回のことに手を回しているとすると、報酬まで支払っている可能性もある。
帝国にとっては将来の脅威を取り除きつつ報酬が入り、さらには国際問題にはならない。
なにせアホ王太子は許すだろうから。
もしかしたら王宮では今頃、国王陛下が襲われているのかもしれない。
これが企みだったのか……。
アホ王太子ではない。
あのアホにこんな絵は描けないはずだ。
王宮魔術師か?
ガッシャ――――ン!!!!!
帝国騎士たちはさらに魔法を放ってきた。
その攻撃は建物の壁を穿ち、窓や扉を破壊する。
地魔法で強化したと言っても、何度も攻撃魔法に晒されればもたない。
「くっ……」
私は何か手はないかと外を探り続けていたが、魔法で爆破されて飛んできたガラスを避けきれず、肩のあたりをざっくりと斬られ、剣を落としてしまった。
「エリーゼ様!」
そんな私を見てライラが叫ぶ……。
「一番乗りだ!覚悟!!!」
そして破壊した窓から帝国騎士が侵入してきて私に向かって剣を振り降ろす。
しまった……剣を拾おうにも間に合わない。
「ルイン!伏せろ!」
早く逃げてほしいが、帝国騎士たちの包囲に隙がなく、まだこの場にいた王子が叫ぶ。
キィーーン
その帝国騎士は王子が投げつけたのであろう剣を弾く。
「ふん。全員殺せという指示だ。悪く思うなよ!」
そして改めて私を見下ろし、そんなことを言いながら剣を振る。
「……」
私は咄嗟に目を閉じてしまった……
が、いつまでたっても衝撃が来ない……
あれ?
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