第24話 殲滅

思わず目を閉じてしまった私に降ってきたのは……

 


「なっ……なんだ貴様は……どこから?」

帝国騎士のうろたえる声だった。

 

「ふん……」

「ぐぁ……」

そしてその騎士はあっさり絶命した。



「あっ……アッシュ……?」

「エリー。遅くなってすまない」

それをなしたのはアッシュで……いや、どうして?なんでここにいるのよ?王宮に連行されたんじゃなかったの?



「状況がよくわからないが、ちょっと頭を覗いていいだろうか……」

「はっ?」

なぜか戸惑っているアッシュが周囲の空気を無視してそんなことを言いだすから不覚にも呆然としてしまった。

さっき目を閉じてしまってただろって言われたら申し開きのしようがないんだけども。


「アッシュさん、私で良ければ」

「女の子はダメだろ。アッシュさん、俺の頭を覗け。それでわかるはずだ」

そして頭を差し出すエレノアを押しのけてダリウスが申し出る。


「助かる……なるほど。卑怯だな、帝国は」

一瞬で理解するアッシュと、自分のあたまを不思議そうになでるダリウス……。


「久しぶり……です、クリストファー王子」

「アッシュ……アッシュ兄なのか?まさか……?」

そして案の定、クリストファー王子は驚いている。

それはそうだろう。

姉を殺してしまったとはいえ、不本意に罰せられていなくなった人がいきなり窮地に助けに来たのだから。



「とりあえず殲滅すればいいよな?帝国だし」

「……」

私の方を向かないでほしい。この場の責任者は王子だから、王子に聞いて?

あと、今よ?今の思考は読んでいいんだからね?


「この場を切り抜けられるのであればお願いしたい」

「わかった」

そう言うとアッシュが消えた。

きっと転移したのね。


そこからはただの殺戮ショーだったわ。

描写すると気分が悪くなりそうだから、それだけ言っておくね。


え?

いや、ごめんなさい。


思い出させないで?


たぶん私が結構大きなけがを負ってしまったから怒っちゃったんだと思うんだけど、ただ首を落とした後に消し去った異教徒たちの方が相当ましだったの。


え?

もう聞かないでよ。

悪夢で見そうなんだから。


わかったわよ。一回だけ言うね。

アッシュは派手に魔法を撃ち込みまくったの。それで手足や内臓や脳みそをぶちまけながら次々に死んでいったわ……帝国騎士たちが。


ちょっとやりすぎよ……。

クリストファー王子は目を白黒させている。


「アッシュ!ここまで派手にやったら帝国の怒りをかうじゃないの!」

確かに王子は許可したようなことを言ったけど、『この場を切り抜けられるのであればお願いしたい』と言っただけであって、完膚なきまでに叩きのめせとか殲滅しろとか言ってないわよね?

喧嘩には落としどころって言うものがあって、ある程度のところでやめないといけないのよ?

そうしないと延々と戦い続けることになっちゃうのよ!?

 

「じゃあ、あいつらがやったことはこちらの怒りをかわなかったのか?」

しかしアッシュは言い返してきた。

くぅ……正論ではあるわよ。私だって利用されたことを怒りたいわよ!!!?

 


「エリー、まずはケガを治して……ヒール」

そう言いながら優しい顔で近寄ってきて腕の傷を治してくれるアッシュ。


「ありがとう……」

そもそもどうやってここに来たのよ?

疑問が多すぎて何から聞いていいかわからないわよ。


もうっ!

助けてくれたのは確かだけど……。


ついお礼の言葉を呟いちゃったけど……。

 

しかしアッシュは止まらない。

そのまま私を抱擁し、キスし、抱っこ……。


なっ……やめてよ恥ずかしい……えぇ……?

 

「もぅ……」


この場は頭の中お花畑なアッシュに支配されてしまった。

 

 


 


「これはどういうことだ!許さんぞ!我が騎士たちを!!!」

そして皇帝まで登場してしまった。


えっと、さすがにアッシュ。この人を殺したら不味いわよ?



 

「貴様が皇帝だな。エリーゼ・ルイン伯爵に許可を与えたにもかかわらず、不当な調査を行ったと濡れ衣を着せてクリストファー王子もろとも一網打尽にしようとしたことは許せん。抗議するとともに、その命で償ってもらおう。まさか勘違いとは言わんだろうしな……」


アッシュはそんなことを言いながら皇帝が引き連れて来た騎士たちを殲滅した。

もともとこの場を包囲していた騎士はもう1人も生きていない……。


まさに過剰戦力……。

私、王国を裏切って帝国についてたらこれと戦わないといけなかったのかな……(震え)


 

「ぐっ、いや、情報系統の乱れによるものだ。不幸なことだ。謝罪する」

「はっ?」


そして恥も外聞もなく皇帝はミスを認め、新たにやって来た騎士たちに後処理を指示して帰って行った。


危機察知能力は相当なものね。

だからこそ皇帝になれたし、これまで戦乱の世を生きてこれたのね。



そうして私たちには改めて別の公館が与えられ、使者が訪れて誤解によって騎士を差し向けたことの謝罪があった。



「思いもよらぬことで帝国騎士の数を削ることに成功したから、王国と戦争になるのが伸びたかもしれないな……」

遠い目をしながら王子が呟いていたが、あえて誰も反応はしなかった。



任務を終えた私たちは速やかに王国に帰還した。


なお、アッシュはいるだけで帝国を刺激するので、当然だけど先に帰らせたわ。

彼は大人しく帰って行ったけど、持っていた包みはなに?

帝国の城でなにか盗んできたとかじゃないでしょうね?

嫌よ?帰ったら皇帝の首をプレゼントされるとか、ただのホラーよ???

 

 

あと、王子からは帰還してから改めて話がしたいと言われたけど、アッシュと、よね?

私はそこの場に行かなくていいわよね?

私は部外者だし……。




***

溺愛コンテスト用の作品です。お読みいただきありがとうございます。

作品フォローと星評価の数で露出度が上がりますので、どうか応援(作品フォロー、レビュー(コメント、星評価(☆☆☆→★★★))、応援(♡)、コメント)よろしくお願いいたします。


なお、私の代表作であるリッチ様のお話も読んでもらえたら嬉しいです。よろしくお願いします。https://kakuyomu.jp/works/16818093078652902480

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る