王宮の犬~王太子の愛人の話を蹴って働く魔族(=魔力に秀でた人間族)の長である私には報復なのか無茶な指令ばかり……超強い協力者もいるし、いつかきっと安住の地をみつけてやるわ!~
第6話 アッシュを讃えるメンバーと、悔しがる王宮
第6話 アッシュを讃えるメンバーと、悔しがる王宮
『そうですか……わかりました。王宮の方には私から報告をあげておきましょう』
「お願いね。くれぐれもアッシュのことは内緒で」
『わかっておりますとも』
とりあえず通信の魔道具を使ってセバスチャンに連絡を取り、アッシュが皆殺しにしてしまったことを伝えた。
敵が文字通り跡形もなく消え去ったので、そのままこの場所を使わせてもらっている。
テーブルやイスは部屋の隅に避けられていたので、アッシュの暴虐にさらされずそのまま使用できたの。
なのになんでよ。
アッシュはずぅっと私をハグしていて離してくれないし、誰もやめるように言ってくれない。
むしろなんでみんな微笑ましげに見守るかスルーなのよ!
おかしいでしょ!?
あなたたちの素晴らしい上司であるか弱い女伯爵が、頭のおかしい人に捕まってるわよ!?
ちょっとは心配しなさいよ!
『エリーゼ様。報告書を書いて王宮に届けておきました。確認はされましたが特に問題は指摘されませんでした』
「ありがとう」
王宮の方には『魔神を信仰する宗教であり、傀儡の魔法などを使ってきたためやむなく殲滅した』って報告書を書いて届けてもらった。
相変わらず仕事が早い。
これで報酬はちゃんと受け取れると思うけど、わざわざ遠征したのに戦力的な増強はなし。
こんなことではいつになったら"王宮の犬"を辞めて安泰に暮らせるようになるのかしら……。
ほんとに、あまりにも王太子の嫌がらせが酷いようなら真面目に移住を検討した方がいいわね。
私だけを狙った嫌がらせくらいならいいけど、仲間や領地にまで何かしてきたら許さない……。
「アッシュさん、今回の魔法はどういうものだったんですか?瞬きする間に次々と敵の首が落ちていったんですが」
「カッターだ。移動しながら撃っただけだ」
「マジですか?すげぇな……」
カッターというのは紙とか薄いものをちょっと切断するくらいの子供でも使える日常魔法だ。
身体を清めるクリーンとかと同じ枠の魔法だよ。
決して、人の首をスパンスパン切り落とせるようなものではない……。
ダリウス。感心するようなことではなくて、やりすぎだと怒るところよ!
「いつ見ても隔絶した魔法の威力ですよね」
「魔力量が多いのは間違いないのですが、どうやってそんな風に魔法を改変されているのですか?」
この場にいると常識がおかしくなるから一応説明するが、魔法というのは長い時間をかけて体系化されてきたこの世界の英知そのものであって、気軽に改良するようなものではない。
それこそ神の時代から連綿と続く、伝統と格式ある技術。それが魔法なのだから。
ライラもカリナもキャッキャしてる場合じゃないのよ!
「そもそも動いたって言うけど、エリーゼ様が呼び止めるまでアッシュ様の姿を捉えることすらできなかったんだが……」
「全て転移だからな。移動中は見えないはずだ」
「はぁ?……そっちの方がおかしいだろうに……」
呆れているグレゴールの反応は正しいわ。自信を持ちなさい。毒されていないことに。
どこの世界に1歩歩けば行ける距離で転移を繰り返すバカがいるのよ。
転移なんて1回使ったら普通魔力がすっからかんになるのよ。
もっと攻撃の方に魔力を使うわバカ以外は……って、それをやったらやったでこんな建物一瞬で消え去ってしまうわね……。
「結論。過剰戦力すぎるので不要なのよ!!!」
「えっ?」
なんで驚いてるのよ?当たり前でしょ?
50人もいた敵を瞬きする間に全員首を綺麗に落としたあと、ゆっくりと跡形もなく消し去って処理するとか、過剰戦力以外の何って言うのよ!?
さすがに敵がかわいそうよ。
ここに誰がいたのかすらもうわからないのよ?
「……不要だったか……その……ごめん」
メンタル豆腐かよ!
現実世界の強さはもういいから、精神世界で鍛えてきなさいよ!
「エリーゼ様……実際助けてもらったんですから、その……ちょっと抑えましょう」
「えっ……?」
私か?私が悪いの?
えっ?なんでそんなにみんなアッシュよりなの!?
もう……。
仕方ないからずっと私を抱きしめ続けてるアッシュの胸にちょっとだけ頭を預けて
「ありがとう」
とだけ囁いた。
混戦の中で、誰かがケガをするかもしれなかったしね。
助かったことは事実だから。
「今後は……」
ちゅう……
「ん……」
なんでよ!
今後は控えてって言おうとしたのに、なんで顔を真っ赤にしながらキスしてきてるのよ!
キミの頭はお花畑か!
くそぅ、嬉しそうな顔をして……まったく。
「ちょっと抑えて。ねっ。お願いする必要があると思ったらお願いするから。アッシュのこと、頼りにはしてるのよ?」
「うん……ごめん。心配で……」
もうっ。
改めてしっかり抱きしめてくるんじゃない。
結局いつも可愛い感じで終わるのがムカつくのになぁ、まったく。
熱くなるな私の顔!!!
心地よく感じるな私の心!!!!!
今は恋愛なんかしてる場合じゃないのよ。
私には魔族の未来を切り開く責任があるし、アッシュにはアッシュの人生があるのよ。
彼は年下だし。
せっかく幽閉から解放されたんだから、もう少し外を見てくると良いと思うわ。
そうすれば偶然幽閉から解放した私への想いなんて勘違いだと思うはずよ。
「感知の設定を、腕が千切れたらとかにしておけばいいのかな?」
「そもそも感知しないで!!!」
「(大きなケガをしたらにしておこう……)」
「なにか言ったかしら?」
「なにも……」
***
溺愛コンテスト用の作品です。お読みいただきありがとうございます。
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