第13話 ラスボスとの予想外の邂逅

 「あれを退けるなんて馬鹿げている! ここは一度態勢を整えるために引き返す! ……ぐっ!?」


 天使は撤退の意を叫んだ後、何かに気づいたような表情を浮かべ拳を握りしめている。 


 『この精神状態。自分の発言と心の中にある思いのズレから困惑しているみたいね。』


 何で?


 「徹底すればあのお方に……も、もう一度行きなさい!」


 横の怪物はもう一度口を大きく開けエネルギーを溜める。


 このまま防戦一方というのはカッコ悪いな。


 『この位置まで転移した後そこで防御しながら前進しなさい!』


 クラウから転移すべき位置が送られてくる。




 「わかっ


 た。」



 俺は指定先まで移動する。


 「はははははは! 距離を詰めましたか! ですがそこからではあなたは何も出来ないですよ!」


 『少しずつずれて走りなさい!』 


 俺はこのチャンスを物にするためにかける。


 「なんと愚かな! 撃て!」


 怪物はエネルギーをこちらに向けて放つ。


 「防御。」


 俺は走りながらそれを展開し敵の攻撃を受ける。


 「こ、これを二度も防ぐとは……!?」


 クラウの指示と、ついでに俺の能力の進化ののお陰だわ。

 



 「ったく。本当にインフレしすぎたわ。」


 俺は攻撃を受け切ると怪物に向かって全力疾走する。


 「早い!? もう一度」


 「もう一度なんてない。」


 俺は怪物に接近後反撃する隙を与える事なく剣を強く振る。


 「ガギャアアアアア!?」


 怪物は悲鳴をあげるとそのままこの場から消えていった。


 そこで一息、『前進!』ではなくその隣にいた天使に剣を向け接近する。


 「その笑顔はなんですか!? この程度で勝ちを確信しないで頂きたい!」


 天使は即座に槍をこちらの眼前に向けてくる。


 自分の本気が破れたにも関わらず武器を向けるのはなかなか良い動きだな。


 「この距離ではあなたの剣は間に合わない! 私の勝ちですね!」


 そうだな。


 さっきまでのお前ならな。


 俺はそれに当たる直前に剣をふる。


 するとそれは俺に届くことなく粉々に砕け散っていく。


 「私の槍が!? なぜ!?」


 悪いな。


 チートのお陰なんだろうがさっきの俺とは一味違うみたいなんだ。


 だからお前の槍はいとも簡単に壊れた。


 残念だがお前の攻撃はもう届かない。


 「まだだ! 天使による慈恵!」


 天使はこちらに魔術を放つ。


 『同じやつを使いなさい!』


 いきなり無茶苦茶言うよな。


 なんか使えるけどさ。


 「風!」


 俺は風を出しそれに向かってぶつかる。


 「なっ!? 押し負け……」


 二つの魔術が消えたタイミングを見計らい剣を伸ばす。

 

 「たな。おりゃあああ!」


 俺は勢い良く剣を振った。


 「ガアアアアアア!」

 

 






 

 

 俺は下で倒れている天使を見据える。


 もうさすがになんたら幹部は出ないよな?


 これ以上の連戦は勘弁願う。


 「わ、私を殺すんですか!?」

 

 こいつまだ息があるのかよ。


 「いいんですか!? 私に何かあればすぐにあのお方があなたを殺しにやって来ますよ!」


 「なんで?」


 「それは私があのお方のお側で天使でいることが許された存在だからですよ! そんな」





 「黙れ雑魚。使命を果たせない、堕天使になれる適正もない・・・・・お前にこれ以上語る資格はない。」







 「『!?』」


 背後から声がしたと同時に天使は口が塗りつぶされた様になくなる。


 「んー。んー。」


 『な!? また反応なしで!? というか魔術を使用した形跡もないのにどうやって!?』


 「やっと静かになった。」


 声の主は満足そうな声をあげると後ろから音を立てる。

  

 こっちに向かってくるのか?


 「んー! んー!」


 天使が目に涙を浮かべながらこちらに何かを訴えていた。


 瞬間目の前に人間のような存在が現れる。


 「あはははは! こいつ涙なんか流してるよ! なんだ? 助けてほしいのか?」


 「んー! んー!」


 「ざあーこ! 知らないよ! 死ね!」 


 「んー! んー……」


 天使はそのまま息絶えてしまったようである。  


 「さてと。もうそこの雑魚の事は置いといてさ? 次の話をしようよ。」







 『ゆうと! 今解析で反応が出たわ! そいつよ! この世界の最終目標の敵は!』


 こいつがこの世界のラスボス?

  

 いや早いよ!?


 まだ最初の町にすら行けてねーぞ!?


 この世界の施設やら常識やらを堪能する前にくるのは反則だって!?


 「僕はプライミェル。天使という暇潰しの地位に着く前に弱い神から追放された哀れな存在だよ。」

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