第6話 予期せぬ帰還

 「ぐっ!? 痛って!?」

 

 弔いの後、さて出発しようかという時

急に全身に鋭い痛みが襲いかかってくる。


 ダメージ食らったとかそういう事か?


 いやでも全部交わしたはずだし……


 まさかさっき詰めた時の魔術がかすって後から効くタイプの物だったんじゃ……


 『だから言ったでしょ!? 転移の連続使用はしてはいけないと! それ体への負担が凄いのよ!? 言っとくけど今のあんたが使える回復能力じゃあすぐにはどうにもならないから!!』


 確かにそんな事言われたな。

 

 けど詳細な内容については聞いてないぞ。


 「だったらもっとちゃんと言ってほしかったな。」


 まあ限られた時間内で伝えろは少々言い過ぎかもしれないが。


 『それは私が悪……いや! 私の言葉を聞いて一から十まで理解できないあんたが悪いわよ!!』

  

 こいつ滅茶苦茶な理論でこっちのせいにしてきやがったぞ。


 ここはもっとまともな発言できるだろ。


 「初めての実戦中にちょっと言われた事から推測をしろと? そんなの無理だわ。そういう戦闘時の思考をするのはお前の役割なんじゃないのか?」


 任せきりというのは良くないが基本そう言う事をしてくれないとナビゲーションの意味がない。


 『それは……そ、そうやって人のせいにするき!?』


 「あーすみませんね。仕事できるできないの話を回りくどく説明したせいで勘違いをさせてしまって。」


 『どういう意味よ!?』


 俺は痛みに耐えながらもうるさい神様と熱い口論を繰り広げた。




 


 俺は痛みが和らいだ後目先の目的地についてクラウと話し合いをしていた。


 「……もしかしてここから結構歩いたりする?」


 俺の言葉を聞いたクラウは地図を表示する。


 『そうね。この辺だしおそらくあんたの歩きだと二、三日くらいは。』


 遠すぎだろ。


 そうなると街につくまでずっと魔物を警戒しないといけなくなるじゃん。


 そんなのはなかなかきつい……ってそうだ。


 こういう時の為に転移能力があるんじゃないか。


 ここでそれを使わない手はない。


 連続使用は駄目だという事だが目的地に向かって一回使用する分には何のデメリットもないはず。


 俺はさっきの地図を見て目的地を確認する。


 ここか。

 

 なんだよ、この旅は案外楽勝じゃんか。


 変に落ち込んで損したわ。


 「転移!」


 ……。


 あれ?


 なんか使えないんだけど?


 まさかまだ連続しように引っ掛かるとか?


 いやそれで使えないなんて話は聞いてないぞ?


 『あ、言っとくけど敵の仕掛けた罠の関係上この世界ではあまり遠い場所への転移は使えないから。』


 この子また説明省いたよ……。


 そういうことは最初に説明してくれ。

 

 これで戦闘中に逃げたい相手が出た時にその事実を知らなかったら死んじゃうだろうが。


 あーやだやだ。


 どうせチート持ってるから大丈夫だろうとか謎の自信があるんだろうな。


 他人事精神ここに極まれり。


 まあ俺もアニメ見ててそういう気持ちになるから人の事言えないけどさ?



 



 「なら移動手段は徒歩か? それはちょっと……」


 俺自慢じゃないけど徒歩は得意じゃないぞ。


 精々一時間連続がやっとのレベルだし。


 体力がとかじゃなくて精神的な問題で。


 『さっき自分の能力を使ったのもう忘れたわけ? 飛行よ! 飛行!』

  

 あったな。

 

 能力に関しては初めてだからその辺は忘れていたんだよ。


 とにかくここは飛行一択ね。


 歩くのはだるいし助かるわ。



 







 「ここで飛行を使うのは良いとして途中で魔物は寄ってくるよな?」


 『そうね。あんたはまだ魔物を回避する能力が使えないから当然よね。』


 つまり飛行中見つかったら即戦闘である。

 

 それに関してはチートがあるからいいけど、さすがにずっとは厳しい。


 だからせめて休む所、もしくは戦闘を避けるものが欲しい。


 「そんな都合の良いものは……と、そうだ。」


 俺はそんな都合の良い塊、チート能力から該当するものがないか探してみることに。


 『防御』


 休憩の時とかにはもってこいのものだ。


 しかし万一の時とかに無意識に能力が解除されたら危険になるからもっと安全な奴が欲しい。

  

 『剣』


 まあ戦闘用だな。


 『回復』


 傷を癒す。


 『転移』


 ちょいちょい転移するというのもありだけどそれだと万一の時に困るからなし。


 『雷』


 戦闘用。


 『帰還』


 ん?


 俺は見慣れない単語に首をかしげる。


 この帰還ってなんだ?


 いやもちろん言葉の意味自体ははわかる。


 だがチート能力という範囲においての意味はわからない。


 能力不明というのは実践においてリスクしかないよな。


 ちょっと無用心だけど物は試しで使ってみるか。


 「帰還!」


 そう唱えた瞬間俺の体が輝く。


 あれ、なんか嫌な予感がする。


 『え? 何を使ったのよ!?』 

 

 「帰還だけど?」


 クラウの許可なく好奇心で能力を使ったのは不味かったか?


 今後はそういうのは気を付けないとな。



 『あんたまさか勝手に帰還能力を使ったの!? ちょっと何を考えているのよ!? まだ申請中だったのに! それを今ここで使ったらあんたは問答無用でもといた場所、つまり日』


 その言葉の途中で俺はその場から移動した。


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