第5話 勝利
「お前達! 何を遊んでいるのだ! こんな人間ごときに遅れを取った事がバレたら私があのお方に始末されてしまうのだぞ!? 本気でやれぃ!」
リーダーは他の魔物達に勢い良く次の命令を下していた。
「そろそろこちらから攻めたいけどこのまま行ってしまうと後ろが……」
『だったらそのシールドをその場で展開すれば良いじゃない。その代わり今のあんたの実力だと自身には設置出来ないけど。』
そんな事が出来るのか。
「何で最初から言わないんだよ。」
『わ、忘れていただけよ! べ、別に? 敵の攻撃の威力を知る為とかあんたの事も心配だったからあえて言わなかったとかじゃないから! 勘違いしないでよ!?』
「あーはいはい。そうですねー。」
忘れていたと言って後半に本音を言ってしまうやつね。
ツンデレあるあるだな。
『ほら! ぼさっとするな! 早くしないと敵に攻撃を溜める隙ができちゃうでしょ!?』
そうだったな。
そんな関係ない事を思考している場合ではないな。
「すまん。ありがとう。」
『ふん! だったらもう行く! それから今から背後を取るのには転移を使えばいいけど、色々な関係上この戦いでは一回しか使っちゃ駄目だからね!』
「オッケー。」
俺はその場で防御能力を使いシールドを残す。
「えーと、えーと。剣!」
剣を出して手に持つ。
本物か……ちょっと怖いけど慣れないとな……
持ち方は……適当でいいか。
『もっとその部分を持つ!』
こいつ厳しいな。
「そして、転移!」
「フハハハハ! 次は容赦しない」
「ふん!」
俺は敵が発言している途中で移動し剣を思い切り振った。
「「「ガアアアアア!!」」」
よし、リーダー格の魔物以外は討伐できたな。
「貴様いつの間に背後を!?」
魔物は俺の存在を認識すると羽を使って空を飛び距離を開ける。
「あ、それをされたら俺の攻撃が届か」
『飛行!』
と、そういうのもあるのね。
「飛行!」
能力を発動した瞬間俺の背中に翼が生え空を飛べるようになる。
「な!? 人間が飛ぶだと!?」
「そうみたいだ、な!」
俺はそのまま魔物に向けて剣を構えながら直進し引き離された距離を詰める。
「フハハハハ! 馬鹿め! 策無しに突っ込んでくるとは愚かなやつだな!」
魔物は俺に向かって魔方陣を展開し、先ほどの奴らと同じような攻撃をしようとする。
かわせるんだよなこれ?
空を飛んだのなんて初めてだし上下左右に回避するとか出来るのか俺?
『考えない! 私が最適な回避ルートを送るからその通りに動きなさい!』
って言われても俺に出来るかどうか
「脆天使による連雷!!」
魔物の魔方陣から複数の雷がこちらに向かってくる。
多いよ!?
こんなにあるんじゃまともにかわせないだろ。
『ほら送ったわよ! さっさと動く!』
いきなり頭の中にあの攻撃をかわすための道が表示される。
何か最初はもう駄目だと思っていたけどこれならなんとかいけるか。
俺は送られてきた指示を忠実にこなす。
一見するとそれは一瞬で実行するのは無理な位細かいものではあったが、今の俺はなぜかそれを即座に理解し体が動く。
「かわした!? だがこれならどうだ!!」
攻撃はより細かく、より苛烈になる。
俺はそれを回避する為に縦横無尽に動く。
腰が痛いな。
『二秒後の攻撃が回避できないわ! 剣で受けて!』
俺は剣を前に突き出してそれを受ける。
するとそれは剣によって弾かれ消失。
「あれを弾くだと!? 馬鹿な!?」
『敵に隙が見えた! そのまま直進して!』
「ああ!」
俺はそのまま目標に向かって一直線に飛ぶ。
「舐めるな! こうなれば私の最大の魔術を食らわせてやろう!」
魔物がそういうと先ほどよりもやや大きい魔方陣が出現する。
流石にこれは不味いんじゃ……
『魔術はこちらに向かって一点に放出されると出たわ! ならこっちは 雷 という能力を使いなさい!』
そんなの使えたっけ?
使えるのかよ……
俺は新しい能力が使えることにビックリしている。
理屈はわからんが万能のチートって本当に便利だわ。
『能力で敵の攻撃を打ち破ったら剣を前に姿勢はそのまま行きなさい! 変な事は考えない! しゃきっとする!』
見てるだけだからなんとでも言えるよな。
お前多分この場にいたら泣いてそう。
「とりあえずここは信じるぞ。」
俺はそれを正しい事であるとして、そのまま片手を前に付きだし突っ込む。
「雷!」
俺がそういうと手から
なんだこの弱々しい雷は!?
さっきの雑兵共が使っていたものと比べてもパッと見弱そうなんだけど!?
こんなのチート能力じゃないだろ!?
「フハハハハ! その程度とはがっかりだな! それに対して見よ! これは
そして俺の方に大きな光の塊が向かってくる。
なんかさらっとヤバい事聞こえたんだけど気のせいだよな?
弱そうな魔術が俺で強そうな光が向こうなんて気のせいだよな?
普通逆だよな?
そうこうしている内に二つの魔術は触れ合う直前まで来ていた。
このままだと俺負け……
「なに!? こちらが押し負けるだと!?」
何でだよ。
チートだから?
絵面が絵面だから素直に喜べねー。
俺はモヤモヤした気持ちで剣を強く握りしめるとそのまま前に剣を伸ばす。
「おりゃあああああ!!」
別に叫ぶ意味なんて皆無なんだろう。
こんな事をしても喉が疲れるし、能力が向上するわけでもないし、クラウ以外の他の誰かが助けてくれるわけでもないしな。
しかしこういうのは己を鼓舞する為である。
ただ目の前に現れた自身を害そうとする攻撃にぶつかる為気合いを入れたいから叫ぶ。
それだけ。
あ。
あと自分のチート能力の見た目がショボすぎるからそこに華を添えるというのも追加で。
俺は二つの魔術の衝突による消失部分ギリギリを無理に突き破る。
「なっ!? あの攻撃ですら通用しないだと!?」
びっくりしているみたいだな。
俺も同じだわ。
まさかこんな簡単に窮地を脱することが出来るとは思わなかった。
「こうなればここは人間討伐を一時中断、処罰覚悟で退却を……」
「逃がすか! 転移!」
俺は魔物の背後を取る。
『ちょっと!? 連続使用は控えろと言ったのに!! まだ使用していいタイミングじゃ……』
そう言うのは後でいいからさ?
「待て! 我々はただ人間を狩る為に」
「いきなり殺意マシマシの攻撃を使ってくるやつの話なんか聞く意味はねーよ。」
俺は躊躇なく剣を振り魔物を討伐した。
こういう時最後まで話を聞くのが良いみたいなのがあるけど、こんな何してくるかわからない状況でこいつを野放しにするのは危険だからそういうのは無しにした。
「さてこれでいいな。」
俺はその場に倒れていた全ての死体を弔い手を合わせる。
「……。」
戦いとかで弔いが遅れてしまい申し訳ない。
言い訳なんだろうがこういう事に対する気持ちの整理やらなんやらがあって色々な?
その、なんだ、とにかく安らかに眠ってくれ。
『……。』
クラウやけに静かだな。
もしかして俺と同じ事をしているから黙っていたりしてな。
そこら辺はこちらからは見えないからわからないけど。
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