第4話 異世界の普通

 「とりあえずこの世界でやるべき事を教えてくれ。」


 転移前に何とかがいるとか言ってだけど覚えてない。


 『あんたには万能の力があるんだし自分で調べられるでしょうが!?』


 それだとお前の存在意義がなくなるぞ?


 「情報解析ってチートスキルが頭の中にあって今使おうと思ったんだがなぜか使えないんだよ。」


 他にもそれに似た能力を色々試しているが使用が出来ない。


 やっぱりこれ詐欺か?


 『そんなことある訳がな……あー。これはあれね。あんたの体が能力に慣れてない事や経験が足りないとか……』


 「それはつまり?」


 『わからないの? つまり今のあんたはその能力をまだ使う事が出来ないということよ!』

  

 異世界で無双出来るチート能力をもらったのに使う事が出来ないとかそんな事あるのかよ?


 「じゃあもしこのまま敵と遭遇したらどうするんだよ?」


 『そんなに騒がないの!』


 騒ぎたくなるわ。


 こんな一大事なのに。


 チート能力がまさかの欠陥能力とかお話にならないぞ?


 『とりあえず今、あんたが使える能力だけを頭で識別出来るように変更しておいたから。もし経験を積んで能力が使用出来るようになったら随時更新されていくわ! 感謝しなさい!』


 最初からそうしてくれよ……


 さっきはたまたま能力が発動して魔物を討伐出来たからいいものの危うく死にかける所だったぞ?


 「で、今確認をしたところ情報系の能力が使えないと。悪いんだけど改めて情報を……」


 『はい、これでいい?』


 クラウが素っ気なくそういうと頭の中に情報が入り込んでくる。


 『この世界の救済方法 この地の勇者と魔王を滅ぼした神すら寄せ付けぬ堕天使?の撃破。』


 これだけ?


 いや当てがないよりはましなんだけどさ、もっとこう敵の細かな潜伏先とか戦力とか戦績とかそういうのはないの?


 『今私の事をこんな少ない情報しか送れない奴とか思ったでしょ?』


 そこまで思ってないけど……


 「そんなことは……」


 『わかっているわよ。私だって何でこんな少ない情報しか寄越さないのよって思っているし。』


 それはつまりこの情報はクラウが直接調べたものではないということか。


 『敵が情報を制限してるとかもあるんだけど、多分私の上の奴らが試練だなんだでわざど伝えないとかそういうのも原因なのよ! ほんっとに世界の非常事態に何を考えてるのよ!?』


 アニメの知識になってしまうがおそらく世界の流れを守るために最初は手解きするがその後はなるべく一方に肩入れしないとかそういう事なんだろうよ。


 だがまあ神が敗北しているであろうこの状況下でその方針は少々頑固すぎる。


 




 「とりあえずこの世界の目的についてはなんとなくわかった。礼を言う。ありがとう。」


 本当はいきなり堕天使を倒してくれとか冗談じゃねーよとか文句を垂れたいところだけど、クラウはクラウで苦労がありそうだしここは感謝の気持ちを述べることにした。


 『は、はあ!? いきなり何よ!? 素直に感謝なんかしちゃって!? あんたらしくない!』


 いや、クラウと出会ったのはさっきが初めてだし俺らしいかどうかとかわからないだろ。


 「別に? やってもらったことに対してお礼を述べただけだよ? だからクラウは気にしなくてもいい。」

  

 感謝する度に一々何でとかどうしてとか言われてもこっちが困るし。


 『そ、そう? そこまで言うならあんたの語彙力のない感謝の気持ちを受け取ってやってもいいけど?』

 

 「そうか。」


 なんとかこの場収まったという事でいいんだよな?





 「目的がわかったのはいいが途中の情報が乏しいのでどこかの国や町に行って情報を集めたい。近い所はあるか?」


 本当の理由は野宿は堪えるから今夜の拠点とか生活用品の購入とかしたいなんだけどな。


 けど本音を言ったらどうせ文句がくるだろうからここはまともな理由を並べておく。


 『そうね……今候補が』


 ドオオオオオオオオオオオオオン!!


 「『!?』」


 何か大きな爆発音が聞こえたぞ!?


 「クラウ! 今の音は!?」


 本当は突然の爆発音なんて厄介事に首を突っ込みたくはないのだがこういうのはアニメとかだとこなす事で道が切り開かれるとかよくあるパターン。


 『誰かが魔術を発動したみたい! べ、別にチート能力を多少使える状態だと判明したあんたの事を心配している訳じゃないけど本当にいく気!?』


 そういう事か。


 あとそういう心配が出来るならさっき戦闘中もそれを考慮して静観してて欲しかったな。


 うるさいと気が散るし。


 「まあな? 目先の問題を見捨てるというのは後味が悪いだろ?」


 『ふ、ふん! べ、別に異世界転生慣れしてないのに変に無茶して大見得を切っても全然かっこよくも偉くもないからね!?』

 

 はいはいそりゃあどうも。


 「で、場所は?」


 『ん!』


 頭の中に詳細な場所が表示された。


 『あんたの走りじゃ少々時間がかかるみたいだし、転移を使うといいわ!』


 転移? えーと転移転移……


 『あーもう! 早く!! これよ!』


 あったこれか!


 ぶつぶつ文句を言って来て鬱陶しいと思っていたがこういうピンチの時に支えてくれるのは助かる。


 「転移!」


 俺はその場から爆発のあったとされる場所まで移動した。








 「っと。ここ……か!?」


 俺が現場に直行するとそこには多くの人間の死体と周りに先ほど同じような魔物数体がその場に存在していた。

 

 ……これが異世界の普通なんだよな?


 俺目の前の目を瞑りたい光景をしっかりと認識する。

 

 「なんだ貴様!? どこから現れた?」


 魔物側のリーダー格のような奴が俺を見て驚く。


 「人に名前を聞くときは自分から名前を名乗れよ?」


 「人間ごときに名乗る名はない!」


 またそれかよ……正直正式名称わからないのはさすがにダルいな。


 謎の敵として頭に疑問を残しつつ戦うのはリスクがあるし。


 出来れば解消してその件を頭から切り離したい。


 「クラウ。あいつらの名前とかわかる?」


 『あんた私を都合の良い女扱いしようとしてるでしょ!?』

 

 それ俺が悪い男みたいな言い方だよな?


 これでも生まれてこのかた周りからそういう印象は持たれた覚えはないぞ?

 

 だからこれは違う……はず……


 『はあ……あいつらは堕天使に分類される魔物。脆天使=ゴ=ブリン。これでいい?』


 =ゴ=ブリン?


 普通にゴブリンとかじゃなくて?


 「何で=がついてるの?」


 『知らない。特別だからとかじゃないの?』


 そうですか。


 まあ言い方は普通と同じだからこの辺は特に気にしなくてもいいか。


 「誰と話している……?」


 魔物が不思議そうな顔をしていた。


 おっといけない。


 クラウの声は頭の中でしか聞こえないからこんなところを事情の知らないやつに見られたら俺が独り言をしているおかしなやつにしか見えないよな。  


 まあ魔物に何と思われようがどうでもいいか。


 「ごめん! ちょっとボーッとしていた。」


 「我々を前にしてボーッとしていただと? ワハハハハハハ! 何という愚かな人間だ!」


 魔物達は高笑いをしていた。


 「そうだよね。お前らみたいな堕天使を前にしてこんな態度は失礼だよな?」


 「なに?」

 

 俺の言葉を前にしてそいつらは静まりかえる。


 「お前ら脆天使=ゴ=ブリンなんだろ? 何かゴブリンなのに大層な名をもらってるやつ。」


 「その名で……」


 「ん?」


 「そのゴブリンという名を呼ぶな!」


 何かめちゃくちゃ怒ってるよ。


 どうやらその名前はあまり好きではないみたいだな。


 「すまん! 脆天使=ゴ=ブリンなら問題ない

?」


 「そうだな! だがもう遅いわ! やれお前達!」


 「「「はっ! 脆天使による雷!」」」


 次の瞬間、魔物達の前に魔方陣が展開され中央には光のエネルギーのようなものが形成される。


 あれが魔術ね。


 では適当に能力使って交わす……


 事をしたら後ろの彼らに当たってしまうではないか。


 そういうのはよろしくない。


 ならここは

 

 『防御を使って! 早く!』


 「防御。」


 俺がそういうと目の前にシールドが出現する。


 何か薄いんだけどこんなので防げるのか?


 「ワハハハハハハ! なんだその脆そうな壁は!」


 「しょうがないだろ。今はこれしか出せないんだから。」

 

 ここは辛抱だ。


 「良かろう! ならこのまま死ね!」


 その発言の後魔物達のエネルギーがこちら向かって一直線に伸びる。


 こういう事を言うのはあれだが何かアニメとかで見慣れているせいで迫力がないなと思う。 

 まあこんな余裕かませるのは神様からのチート能力があるからこそなんだ。


 それがなかったら今頃俺は泣き叫んでいるところだよ。


 だって丸腰であんな光が向かってくるのは普通に怖いし。  

 

 「フハハハハ! 言っておくがこの魔術はかつてこの世界に存在した勇者と魔王が対抗できる事なく敗れたものだぞ? それをそんな薄いもので防げると思うな!」


 まじで?


 これそんなにすごい物なの?


 じゃあ最悪この防御能力を貫通する可能性があると言うことか?


 もしかして今ピンチか?


 その攻撃は俺の考え中なんてお構いなしにこちらのシールドにそのまま直撃する。


 転生直後に出会って直ぐに魔王レベルを倒せる魔術とかあり得ないだろ。


 大体……ん?


 気がつくと攻撃はいつの間にか消えていた。


 「馬鹿な!? あの攻撃を受けて何ともないだと!?」


 「え? もしかしてこいつらそんなに強くない? もしくはこっちの能力が強すぎる?」

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