第3話 初戦

 「……本当どっか言ってほし」


 俺が神様に本音をぶちまけようとした瞬間


 「ワハハハハハハ! こんな所に人間がいるぞ!」


 なんか羽の生えたゴブリンみたいな生物が上から姿を表してきたんだけど。


 これはあれか? 


 異世界の魔物というやつか?


 『ちょっと!? あんた今私にどっか行けとか言おうとしなかった!?』


 おい。


 目の前に魔物が現れたんだぞ。


 何を呑気に口論始めようしてるんだこいつ。


 「貴様どこからきた! その衣、見たところこの周辺の人間ではないと見受けられるが。」


 こいつ見た目が弱そうな割には中々鋭い事を言ってくるな。 


 『ねえ!? 聞いているの!? また私を無視する気!?』


 こいつはさっきからちょっとあれな事しか言わねーな。


 とりあえずこの女の話しは無視して話を進めなければ。


 「俺は遠い所からきた旅人だ。お前は?」


 魔物は俺が質問をすると不気味な笑みを浮かべた後口元を抑える。


 「脆弱な人間ごときがこの私に問いかけをすると言うのか! なんと愚かで無知なのか。」


 はいはいすみませんね。


 こんな馬鹿でどうしようもないやつが魔物様ごときに難しい質問をするなんて。


 「差し支えがなければ答えて欲しい。」


 『あんたは先ず私の質問に答えなさいよ!』


 もう今は黙ってくれ。


 今は会話に集中したいんだよ。


 「人間ごときに語る言葉ない、断ると言ったらどうする?」


 「どうもしないよ。じゃ」


 俺は魔物に手を振り背を向けようとする。


 コミュニケーション取りたくないなら取らないでいい。


 「私を前にして人間がこのまま帰れるとでも思うのか?」


 駄目なの?


 何も話したくないというからこちらから下がろうしたのに?


 「じゃあお前は俺の前に現れて何がしたいの? 見物?」


 「おかしな事を。私がここに降りてきた理由、それは、こう言うことだ!」


 魔物は羽を広げ空中に飛び俺との距離を開けた後、爪を鋭く伸ばしながらこちらに勢いよく向かってくる。


 なんだ俺と戦いたいなら最初からそう言ってくれよ。


 雑に話しかけてくるからてっきりこっちは仲良くなりたいのかと思っていたわ。


 「えーと。そうなるとこちらは向かってくる敵に応戦するための能力を」


 『聞いてる!? 私なんかあんたに無視されるような事をした!?』


 さっきから本当に


 「うるさい。」  


 『あー……それは、あーそういう事言うんだ?』


 なんだよその反応は?


 「大体」


 「ギャアアアアアアア!!」


 「!?」


 神様に反論しようとしている最中につい敵を視界に入れる事を忘れてたんだが、なんか悲鳴が聞こえ……て……


 俺は声のした方を見る。


 そこには先程まで獲物を刈るような目で進行をしていた魔物が今現在苦しそうにこちらを見ている。


 「貴様ァ! この私にダメージを与えるとは一体何も……」


 魔物は俺に対して文句を言っている途中で力尽きそのまま落下した。


 「なんか闘いが終わってるんだけど?」


 俺まだ何もしていないんだけど?

 

 『何をいってんのよ!? チート能力が有るんだから当然でしょ!? それよりこっちの用件はまだ始まっていないからね!?』


 魔物よりこっちのやつの方が厄介だわ。






 『という事で私はあんたについていくから! べ、別にあんたが心配だからついていくとかそういうのじゃないから! 変な気持ちを抱かないでよね!?』


 あの途中で現れた魔物との戦闘の後、俺は神様からありがたいメリットやらなんやらを叩き込まれた。


 もう勘弁してくれよ。


 こっちが反発したらそんなの想定済みとか言って謎の寛容見せてくるし、こっちが矛盾やらなんやらを言ってきたら完膚なきまでに罵倒してくるし。


 正直メリットデメリットとかどうでもよくただ単にうるさい。


 『それからあんたは私のことはクラウと呼び捨てで呼ぶこと!』


 神様相手に呼び捨てかよ。


 それはなかなか難しい注文だな。


 「そういうのは『出来るの? 出来ないの?』  


 ここで二択を迫るのは卑怯だろ。


 実質一択じゃないか。


 「出来ます!」


 『敬語!』


 「出来る!」


 『よろしい!』


 という事で今より神様こと、クラウと俺は世界に負をもたらす敵の討伐を目指して旅をする事が決まった。


 



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