第13話 回復魔法
「すいません。おまたせしました!」
「いや、待ってないよ」
「......待ってはいたでしょう」
法院女学院正門近くの小屋。
駆け寄ってきた彩さんに声をかけられ、返事をするとジト目でツッコミをいれられる。
パーティ結成の後、そのままダンジョンに探索に行こうという話になった。
俺はともかく彩さんは全く用意していなかったから、一旦別れたのだ。
俺はすることもなかったので、話をしていた小屋に残って彩さんを待っていた。
「防具、あったんだ」
彩さんの格好を見て、俺は言う。
彩さんはオシャレな私服姿から、動きやすい服装に着替えている。ノースリーブのTシャツとショートパンツだ。
その胸には胸当てをつけていた。
「はい。一之瀬さん達が残していった防具が沢山あったので借りてきました」
といっても控えめな程度だ。
防具も薄い胸当てだけだし、武器も持っていない。
前線に出て戦うのは主に俺だけだからな。
彩さんは後ろで回復するだけの予定だ。彩さんの方に行った魔物も俺が対処することになる。
「守ってくださいね」と笑顔で言われたしまった。
代わりに、回収した魔石や俺の荷物を持ってくれるそう。
背中にリュックサックを背負っている。俺が預けた水筒やタオルなどが入っている。
準備が出来たので、配信を開始するために正門を出て、魔物から見つかりにくい路地裏に入る。
配信の立ち上げ中に襲われるのは勘弁して欲しいからな。
避難所を出てから配信を開始するのは、衛兵さんが映らないようにの配慮だ。
ステータス画面を開く。
ーーーーーーーーーー
姫宮 葵
Lv.2
攻撃力:12
防御力:11
体力:11
速度:10
知力:16
魔力:13
能力
【バズ・エクスプローラ】 分類:配信スキル 付与者:呑天の女神
スキルLv.5
チャンネル登録者人数:206人
アビリティ:魔法【
スキル【
スキル【
スキル【
ーーーーーーーーーー
初配信から二日。運良くネットでバズるーーことは無かったが、見つけてくれた人達がチャンネル登録をしてくれたようで、スキルレベルが2あがった。
それを確認して、配信を開始する。
ちなみに彩さんと仲間になったことと、これから探索することになったことは、クラスメイトには既に連絡している。
「こんにちは〜。あおチャンネルのあおです。予告出来なかったけど、これから2回目のダンジョン探索配信をします」
配信が始まり、カメラに向かって挨拶をする。
「さっそくダンジョンに向かう前に...報告です」
そう言って、画角の外にいる彩さんに目配せする。
彩さんは俺の隣にやってきて、カメラにその顔を映す。
「こんにちは。アヤです」
「新しいパーティーメンバーで〜す!パチパチ」
カメラに紹介して、拍手をする。
「ちょうど近くに、覚醒したばっかりの女の子がいたので捕まえました。これからあおチャンネルのメンバーになるアヤさんです。」
ဗီူ40人が視聴中
ゆきお『新メンバー!』
nanashi『まだ2回目ww』
76A25『可愛い』
76A7『可愛い』
Y4mmy『かわいい』
コメント欄が反応する。
クラスメイトはまだ集まっていないみたいだが、告知無しの配信開始直後からクラスメイト以外の視聴者がいることに驚く。俺の配信を待っていてくれたなら嬉しい限りだ。
彩さんを交えながら少し雑談し、主に彩さんについて話す。
そうしていると少しづつ人が集まってきて、50人を超えた。
「ーーってことで、一昨日と同じダンジョンを目指しながら、道中で機会があれば彩さんの魔法の検証するって感じで」
いつまでもここで話している訳にも行かないので、出発する。
俺が前を進み、後ろから彩さんが着いてくる。
当たりを見渡して魔物がいないか警戒しながら進み、配信のことも考えて適度に話を交える。
少し進んだところで、道から外れたところにグールが一体いるのを見つけた。
「あいつで検証しよう。近づくよ?」
彩さんに声をかけて、少しづつ近づく。
それなりに近づいたところで、予め拾っていた石を取り出して、後ろを向いているグールに投げる。
「【
石は想定以上の鋭さでグールの方に飛んでいき、その頭を穿つ。
グールは石を投げられたことで俺に気づく。
振り向いてすぐに襲いかかってきた。
俺は迎撃をせずに、両腕を体の前に出して構えをとる。
「【
グールが俺に飛びかかり、噛み付いてくるタイミングでスキルを発動。
腕に噛みつかれて出血するが、それほど酷くは無い。十分に動ける程度だ。
すぐに木刀を構えて攻撃に転じる。
数は繋った後にトドメのスキル。
「【
強化された木刀の一撃がグールの体に入り、グールが塵と化す。
魔石を拾って彩さんのところに戻る。
「回復お願い」
出血した腕を出して回復してもらう。
肘から先の2割ほどが出血している程度の怪我だ。
日常生活であればそれなりに大きな怪我に入るだろうが、動きにそれほど支障はなく、戦いの傷としては軽傷だろう。
「分かりました。【
俺の腕に手をかざし、魔法を発動する。
すると少しづつ傷が治っていく。
「おぉ...」
俺の体を外からいじられてるような感覚に、こそばゆい感覚と感動を味わっていると、傷の修復が止まる。
まだ半分くらい傷は残っている状態だ。
「もう一度かけます。【
もう一度魔法をかけられて、ようやく傷が完全に治る。
「ありがとう」
軽傷を2回の魔法で完治。
効果としては弱いのか…?
十数秒で傷を完治できる時点ですごいことに変わりは無いはず。
しかし、戦闘で負傷した時の有用性を考えると、使えるとは言いづらい。
他の回復魔法を知らないので、相対評価が難しい...と思って彩さんの方に目をやると、彩さんは黙って何かを考えていた。
まずい。気不味くなりそうな雰囲気。
励ますか?或いはイジって場を流すべきか…と図りかねていると彩さんが口を開いた。
「いや、弱いっ!弱いよ!」
「うん。弱いよね」
自分から言いだしてくれたので、俺もそれに応じて賛同する。
結局イジった雰囲気になって、彩さんとクスクスと笑い合う。
「パーティーから追放しないでくださいね」
「いや、しないよ」
茶目っ気たっぷりに彩さんが言ので、すぐに言い返す。
良かった。気にしてない...訳では無いだろうが、彩さんのおかげで気まずくならずに済んだ。
配信のことを考えても、パーティーメンバーとしてもかなりやりやすい部類の人だ。
能力はともかく、人としていい人材を引き入れたのかもしれない。
「まあ、レベルアップしたら強くなるかもしれないし、あんまり気にしないで...」
「いや、真面目に慰められるとホントに悲しくなるから」
第13話 回復魔法
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