第2話 クラス会議




半日経ち、次の日の昼過ぎ。

午前で授業が終わった教室で、俺は教壇に立ち、教室を前から見渡した。


クラスメイトはそれぞれの席に座っている。

先程までガヤガヤと話し声が聞こえていた教室は、少しづつ静かになり、教壇に注目が集まる。


俺の隣に立つ級長の黒川が、その視線を受けて話し出した。


「はい、それじゃあ今から、姫宮葵強化会議を始めま〜す」

「「うぇ~い!」」


黒川の発言を受けて、クラスメイトが拍手をしながら返す。


昨日の夜、俺の能力についていくらか話したあと、時間も遅かったので、今日の午後にしっかり話し合おう、ということになった。

俺の能力の考察や、これからどうするかの計画、クラスでどうサポートするか、という会議だ。


覚醒者は覚醒していない人達でサポートする、という考えは確かに広まっている。

クラス替えがなくなり、仲間意識の強まったクラスメイトなら尚更だ。

現に他のクラスで生まれた覚醒者たちはそのクラスで総力をあげて協力されている。

とはいえ、やはり実際ここまで好意的に協力の姿勢を見せられると嬉しくなる。


「ありがとう、ありがとう!」


拍手に答えるように感謝を伝えておいた。


一旦落ち着くのを待ってから、黒川に促されて今度は俺が口を開く。


「先生に能力を説明して、学校のノートパソコンを2台譲ってもらいました。それで取り敢えずYourTubeのチャンネルを開設しました。能力との連携も済ませてます。」


ノートパソコンの画面を見せながら説明すると、クラスから「おぉ~」と声があがる。


「将来的には、姫宮はダンジョン探索に集中出来るようにしたい。チャンネルの運営とか動画やサムネの編集は俺らが担当することになると思う。後は他のSNSを使った宣伝とかな」


黒川が隣で補足する。

このクラス全体で、俺のチャンネルを動かしていく感じだ。

こういったクラス会議も、今後何回も重ねることになるだろう。


「チャンネル名は?何にしたの?」

「いや、まだ決めてないよ。これから決めようと思って」


飛んできた疑問に答える。


「チャンネル名の前に、葵の名前は?そのまま本名使うの?」

「ネットリテラシー...」

「今の世の中だったら、名前くらいの個人情報がバレてもそこまで問題ないんだけどな〜。危ないかな?」

「いいんじゃない?別に」

「本名を明かさないに越したことはないのでは?」

「そっか。そうだよな〜」

「下の名前だけにするとかは?」


クラスから色々な意見が出されて、それに応えていく。


結局、みんなで話し合った結果、俺の名前は「あお」で通すことになった。親しい友人が使うあだ名だ。


チャンネル名もそれに応じて、「あおチャンネル【ダンジョン探索配信】」に決まった。


その後も話し合いは続き、色々なことが決まっていく。


ダンジョン探索は生配信で流すこと。

帰ってきたらクラスメイトがパソコンで編集し、動画もチャンネルにあげること。

また、Twitterとlinstagramのアカウントも新しく作った。


そして話題は俺のスキル、【バズ・エクスプローラ】に移る。


これに関しては昨日の夜ある程度話し合った。

ある程度はみんな理解しているが、黒川が改めて黒板にまとめていく。


このスキルでできることは1つだけ。

ダンジョン内でも動画を撮影することが出来、それを生配信や動画にしてYourTubeにあげることが出来る。


そしてこのスキルが覚醒したことで、俺が強くなる方法は3つある。


まず1つ目。

ステータスのレベルアップだ。これは能力とは関係ない。

覚醒者は魔物を倒すとレベルが上がるようになる。それに応じてステータスも伸びる。

知力は殆ど上がらないらしく、魔力も人によって伸び幅が異なるらしいが、熟練の覚醒者はステータスだけでも常人ではありえない強さになるらしい。


次に2つ目。

スキルレベルのアップだ。

これはステータスのレベルとは別の、【バズ・エクスプローラ】のレベルである。

「あおチャンネル【ダンジョン探索配信】」の登録者数と総視聴時間が伸びると、スキルレベルも上がるらしい。

具体的に何人でレベルが上がるのかなどはまだ分からない。


スキルレベルがあがると、アビリティを獲得出来る、と書いてある。

アビリティとはスキルとは別の能力で、魔法が使えるようになったり、スキルが強くなったりするらしい。ネットにころがっていた情報なので、詳しくは分からない。


最期に3つ目

一時的なバフ。

これはスキルの効果によるものだ。

ダンジョン探索を配信している時、その配信の同時接続者数と、コメント数に応じて、俺のステータスがバフされるらしい。


総じて、俺の配信がバズればバズるほど、俺が強くなるという事だ。


黒川が黒板に情報をまとめ終わり、クラスから声が上がる。


「う~ん。これってやっぱり、今の姫宮は弱いままってことだよね」


そう、そうなのだ。

覚醒してからまだ魔物を倒していないからステータスが伸びていないのはもちろん、動画配信を始めたばかりは人も集まらないだろうから、スキルレベルや同接によるバフも期待出来ない。

つまり俺は今、覚醒前と何ら変わりない戦闘力なのだ。

街中をうろついている弱い魔物でも、生身の人間が1人で倒せるほど甘くない。


「ダンジョン配信してるってだけで人集まらないかな?」

「ダンジョンってカメラ使えへんから、動画は愚か、写真も出回ってないブラックボックスなんやろ?その動画ってだけでバズるんちゃうの?」

「かなりバズりやすいのは間違いないだろうけど、それでもそれほど甘くないだろ」

「普通のYourTuberは飽和するほどいるし、そもそも動画が埋もれてしまうと思う...」

「一度軌道に乗ったらすぐに拡散されそうではあるけどねぇ」


この問題点に対して、クラスメイトが口々に意見を言う。


「取り敢えずさ、まず俺らが自分のアカウントでチャンネル登録しない?47人もいるわけだし」

「確かに!それでひとつくらいスキルレベルが上がるかもしれないしね」


出された提案通りにみんなが俺のチャンネルを登録してくれる。

俺を除いて、チャンネル登録者数46人になった。


しかし、それでスキルレベルが上がることはなかった。


「あ~そこまで甘くなかったか」

「やっぱりまずはレベル1で頑張るしかないか」

「僕らが全員で配信を見ておけば、46人分のバフはかかるけど...」

「それでどれだけ強くなれるかだな」


とは言うものの、46人でスキルレベルが上がらなかった以上、バフの方も雀の涙だろう。

世に出回っている、他の覚醒者の能力から、ある程度推測できる。


「じゃあどうするんだよ。ろくに戦えないぞ」

「他の探索者とパーティ組むのは?軌道に乗るまで協力してもらったらいいんじゃない?」


出された案に納得する。


「確かに。パーティを組む覚醒者も多いしな。それで行こう」


逆になぜ今まで思いつかなかったのか、と疑問に思うくらいだ。


「じゃあさっそく今から他のクラスに覚醒者探しに行ったら?」

「そうだな。俺も着いていくよ。他にも誰か着いてきてくれ」


黒川が着いてきてくれるらしい。

他に、白峰と赤城の2人が着いてくることになり、4人で仲間探しの旅に出た。

まあ旅と言っても、屋外にすら出ないが。






第2話 クラス会議

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「色」が含まれる名前はクラスメイトです。個人を覚える必要は多分ありません。


大阪の学校なので、関西弁の人もいます!

関西人以外にも理解できそうな程度に控えてますが、

意味がわからない部分があれば感想欄で言ってください!修正します。

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