第2話 反応いいからって揶揄い過ぎると、話が進まない

「おほん」


「初めて見た…おほん」


「うるさいっ!」


 あれから20分くらい騒いだ後、仕切り直し、って咳払いをしたリーフを茶化すと怒られた。


「あぁもう!話が進まないから少し黙っててよ!」


「かしこま」


 ふざけないと死ぬの…?と疲れた様子で呟く女神様。大変そうだね。


「キミには、今から異世界に行ってもらいます。と言っても、巻き込まれただけの、いわば一般人のキミは、たぶん特別なスキルも能力も、何もない。そんな君を、こっちの不手際なのに、危険な世界に手ぶらで送るなんて事はしちゃいけないし、したく無いんだ。だから、特別に一つ!物によっては一つ以上になったりするけど、何でも願いを叶えてあげる!あ、でも増やすとかはダメだよ?」


 なるほど。詫び石的なサムシングね。

 てかほんと可愛いなこの神様。俺、140〜50センチの貧なる者が好きなんだよね。……ロリコンじゃないからな?子供は好きだけど、妹とかそういうのに向ける好きだからな?

 そんなことは置いといて。さて、なにを願おうか…願い事なんて無いし、一日猶予があれば、直ぐに魚と同じように海の中で過ごせるようになるくらいに適応力があるから、多分異世界でも生き残れるんだよね。となると、マジで何もないぞ…?強いて言うなら安心できる仲間………あ、いい事思いついた。


「決まった?」

「ああ、決まった。俺は、リーフ、あなたが欲しい」

「……へ?」

「あ、この方が良かったか」


 惚けて動かないでいるリーフに近付いて、右手で顎クイ、左手で頬を撫でて、キリッとした顔で同じ内容をもう一回言う。


「俺は、貴女が欲しい」


 顔をみるみるうちに真っ赤にしたかと思えば、風になって10メートル近く離れた。


「な、ななななななにゃなにゃ?!にゃにを、へあっ!?」


 狼狽しすぎで草。新参だって言ってたし、多分この人歯が浮くような事言われたことないんだろうな。神様だから、周りにいる女性全員高身長ボンキュッボンで、自分には魅力がないとか思ってそう。


「な、なんだお前!なんなんだお前!うわ、は?!」


 うーん、可愛いなこの生物。


「落ち着けって」

「…………!!!!!」


 一足跳びで抱き締めて、頭を撫でながら囁いてみる。面白いくらいに真っ赤になって、完全に硬直した。

 おもしろいからこのまま揶揄ってやろ。








「………なんだおまえ」


 手を出したら弾かれる風の壁の中に隠れたリーフは、さながら警戒心の強い子猫の様になっている。俺の一挙手一投足に過敏に反応するその様子は、あまりに硬く弾く力が強すぎる凶悪な壁の奥にいるとは思えない可愛さがある。


「まあまあまあ、揶揄いすぎたのは謝るから、おちついて」

「うるさい動くな近づくな!」

「何もしないよ?そろそろ真面目に話し合おうじゃあないか」

「お前のせいだろ!騙されないぞ、お前みたいなやつはそう言ってまた同じことするんだ…私は知ってるんだぞ!」


 完全に信用なくて草。どんなだと思われてるの?俺。


「マジで何もしないから、俺は約束は守るタイプ」

「………嘘だったら追い出すからね」


 優しい。

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