第4話
「ふう......やることがないですね」
「ったくフーカの奴、人のことを散々に言っておきながらぐーすか寝やがって......悪戯してやる」
機内にて、通路側に座っているうたねさんは私を挟んで寝ているフーカさんを恨めしそうに見ていた。
「あまり言ってると起きられますよ」
「うげ、それは後が怖いなあ。んでマヤちゃん、なんか面白いものない?」
そして起きられた場合のことを想定したのか、彼女のターゲットがフーカさんから私に切り替わる。しかし生憎私も特にこれといって面白いものは持ち合わせていないのだ。
「ゲーム機はないですしマウスが使えないのでパソコンでゲームも不可、サブスク系の契約もしていないのでアニメを見るということもできないです。精々開発環境と配信環境が揃っているくらいでしょうか」
「そっかー。僕もパソコンはあるけどゲームが出来な.......あ」
「どうされました?」
「ゲームじゃないけど悪戯ならできるかも」
*
「うおー......前にマヤちゃんの配信で見た黒い画面だ」
「実はただログインしているだけなんですけどね」
私は弊社開発部門の中でも主任技術者として業務に従事しており、各種サービスの中核であるサーバーの糸を引く為の管理者権限が付与されている数少ない人間でもある。
とはいえ何から何まで好き勝手に引っ掻き回してしまえばとんでもない損害を出してしまうことになりかねない。その為弊社では会社の中核を担ったり他社さんに提供していたりするサービスなんかのように、勝手に弄ってはいけない『聖域』と勝手に弄っても怒られない配信用ソフトのベータ版のような『無法地帯』にサーバーが分けられている。
私は無論どちらの権限もある程度は付与されている人間ではあるのだが、今回のような場合に暴れられる場所はただ一つ。
弊社専用の配信用ソフト用サーバーである。
配布されている配信用ソフトとは違い、あんぷろに属すライバーに渡されている配信用ソフトは独自のチューニングを施してあるのだ。
それによって専用ソフトは弊社サーバーに直結され、マネージャーによる配信時間の管理や非常時の強制終了、Disbordとの同期などによる箱内コラボの円滑化等の恩恵や運営からのサポート体制などが充実させられるようになっているのである。
そしてそのサーバーはそれぞれの配信用ソフトが同期した中核、つまり全てはそこの管理者権限を持っている私の手の中という事になるのだ。
「幻想の管理人って本当だったんだね」
「実はそうだったりします。何なら管理者なので此処から好きなライバーの配信ソフトを触ることも出来ますよ」
「こわ」
「まあ運営から配信を止めることも出来ますからねえ」
先程も触れたように、ライバーが配信中に変な気を起こしたり何らかの理由で配信を止められなくなった場合に運営側から配信を強制的に落とすことが出来るようになっているのだ。
そして実は運営側でライバーの配信を強制終了することが出来る以上、技術的には配信用ソフトの遠隔操作も可能という事である。
「さて、マネージャーさんに許可を取ったのでやりますかね」
「良いねえ。もう何やってるか私にはわかんないけど」
「取り合えず普段の配信ソフトで出来ることはなんでも出来ます。ノイズにする?首折りにする?それとも......終了?」
「最後えぐいな」
「画像も貼れるんで、適当なうたねさんの18禁イラストとかでBANさせるとかも出来ますけど」
「キーボード叩きながらしれっとすげえこと言うな。この闇深ドスケベエンジニア、想像を超えてきやがる」
「うるさいですね。大体18歳未満が見たから何だって言うんですか」
「まあ......健全な青少年の成長に良くないんだよ」
「中高生になってもえっちなこと知らない方が問題だと思いますよ」
「パワーワードだなあ」
「自分で言うのもなんだけどさ、僕結構そういうディープなネタ扱うこと多いんだよ。君ほど開き直った人間はこれまで見たことがない」
「まあ何も隠してないですからね」
「体重は?」
「48kgですね」
「恥じらえよ」
「ちなみに身長は155cmなのでBMI値は20程です」
「そこまでは聞いてない」
「さて、接続できたのでここからはやりたい放題ですよ。体重でも公開しときます?」
「やめてあげようか」
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