第8話
さて、タリスに《制約》についても説明が終わったし、そろそろ魔力制御を終わらせよう。
「タリス、魔力を結晶化出来ない?」
「け、結晶化!?どうやって………」
「こうやって」
そう言ってやり方を見せてみた。わりと天才肌なタリスだから、1回見ればやり方を覚えるだろう。
魔力を一点に集めて具現化する。それを圧縮すると、結晶化する。魔力の結晶化なんて、ただそれだけの簡単な作業だ。
「ほら、これが魔力の結晶。タリスが制御出来てない魔力を結晶化すればいいんだよ。何時でも取り込めるし」
そう言って今作った結晶を取り込んで見せた。
「なるほど…………やってみやす!」
それから30分後、ようやくコツをつかんだのか、コロコロと小さな魔力結晶が出来てきた。
「お、いい感じ。まだ、制御しきれてない魔力があるから、今度は大きくしてみることを意識してみてよ」
「はい!」
余程嬉しかったのか、楽しいのか、タリスはどんどんコツをつかんでいく。
「…………………っ!!で、出来やした!これでどうでしょう!」
そう言ってタリスが見せてきたのは直径5cmほどの大きさの魔力結晶だった。
「上出来だよ。これで身体の方に残った魔力を制御出来るようになってるはず。ほら、やってみて」
言われるがまま、タリスは魔力制御をはじめた。すると、みるみるうちに魔力が制御されていく。証拠に、黒く染まっていた髪が元の青色にもどっている。
ちなみに、魔人族の髪色が黒に近いのは魔力が多いから。完全に制御仕切れず、髪色にまで変化が出る程、魔力量が他種族より多い。
タリスは魔力を封印されていたせいで髪色に黒はあまり混ざっていなかった。だから、見た目で魔力が少ない出来損ないって呼ばれてたんだろう。
「うん、出来たね。それらの結晶は、身に付けておけば何時でも取り込めるから。装飾品としてでもつけときなね」
「わかりやした!」
元気良く返事を返して、彼は落ちている魔力結晶を拾い始めた。
「ようやく終わりましたか」
「そうだね。いやー、長かったな」
「子供でも出来ることがこんなにも出来ないなんて、恥さらしもいいとこですわ」
クロは相変わらずタリスに厳しいな。でも、ちゃんと魔人族としてでなく、タリス本人を見てあげてる証拠でもある。
「な、なにをそんなに見ていらっしゃるのですか。あの者を完全に信用したわけではありませんよ?」
「わかってるよ。僕もまだ信じきれてないし。でも、少しずつクロが変わっていってるのがわかって嬉しいんだ」
「カミル様…………」
僕は笑顔でそう言った。少し眉を下げながらこちらを見ているクロ。きっと僕の心情を理解できているのだろう。
僕は変われない。他種族は憎むべき相手でしかない。今すぐにでも復讐したいくらいには。でも、まだ母さんとの約束を果たせていない。だから、旅をする。
この旅が終わったとき、僕の取る選択はきっともう決まっている。ただ、今が少し楽しいと思っているだけだと思う。……………気のせいとも言い切れない。
変われないのがこんなにも辛いなんて、思いもしなかったな………
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