第6話

「じゃあ、まずはタリスの封印を解かなきゃね。どこか広くて誰も来ないような場所、知らない?」


もしかしたら暴走するかもしれないからね。なにがあってもいいように広い場所じゃなきゃね。


「そうっすね……………西の森なら魔獣も多くて、誰も行きやしませんぜ」

「なるほど。じゃ、そこへ行こうか」


カフェを出て、西の森へ向かった。



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~西の森~


さて、森についた。確かに人の気配がなにもない。ここはいい場所だ。


「よし、じゃあこれから封印を解くよ。心の準備は良い?」

「はい、お願いしやす!!」


とは言っても………


「方法が2つある。苦しいけど早く終わる方。優しいけど遅く終わる方。どっちがいい?」


タリスはすこし悩む素振りを見せてから質問してきた。


「ちなみに、時間で言うと………」


時間、時間か…………難しいな。


「早いと1時間もかからないかな。遅いと1日かかるかも」


早い方は、僕の魔力を封印に押し当て、破壊する方法。魔力、聖力は生命にも結び付いているから相当な苦しみになる。僕の魔力は荒れ狂う暴力そのものだから。


遅い方は、僕の聖力を使ってタリスの封印を分析する方法。相当な時間と労力がかかる。聖力同士反発はしないだろうけど、赤の他人のものだから、それなりの反動もあるかも。


「……それなら、早い方でお願いしやす」

「…………だいぶ辛くて苦しいよ。覚悟はいい?」


たぶん、想像の10倍は苦しいだろう。それでも、出会ったばかりの僕に命をかけるという……それを理解しているのか?


「もちろん。仲間になるって決めたときからこの命、貴方様に捧げるって決めてたんで」

「……わかった。じゃあいくよ」


タリスを仰向けにさせて、僕は彼の心臓近くに手を置いた。そして、ゆっくりと魔力を流し込んでいった。


「ぐっ……………ぁぁぁぁあ”あ”あ”あ”あ”ぁ」


苦しそうに悶える彼に声をかける。


「耐えてね。これで壊れられても困るから」


すると、痩せ我慢だとわかる声で彼が答えた。


「も、ちろんで、やす」


そこに、クロがさらに声をかける。


「そんな苦しみなんて、カミル様の苦難に比べれば何てことないわ。耐えなさいな」

「お、嬢……うっ、す。この、程度……耐え、てっぐぁぁぁぁあああっ!!!」


苦しそうに悶え続けている。でも、今さら止められない。逆に傷ついて元に戻らなくなるから。



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~1時間後~



「よし、終わったー。お疲れ、タリス」

「カミル様、お疲れ様です。こちらをどうぞ」

「ありがとう」


僕はクロが用意してくれた水を飲みながら終えたことを伝えた。


「はあ、はあ………お、終わった…………………」


終わったことより苦痛が消えたことに喜んでいるように見えるな。


「これから、タリスは魔力の制御をしなきゃね。暴走させられてもこっちが迷惑だから」


タリスの魔力量は本当に多い。制御も大変だろうけど、暴走させられると、最悪、壊すしかなくなる。それだけは嫌だからね。死ぬ気で制御に取りかかってもらおう。


「わ、わかりやした……………俺の、魔力。こんなに満ちている」


タリスの言葉を証明するかのように彼の髪色がさっきよりも黒に近づいている。


余程嬉しいのだろう、自分の魔力が。そりゃそうだよね。今までそのせいで迫害を受けてきたんだから。幼少期に神童と呼ばれていたなら尚更か。


「何回も言うけど、くれぐれも暴走させないでね。本当に、大変なんだから」

「しかし、魔力を抑える?ってどうやるんすかね」


幼少期は無意識に出来てたかもしれないけど、今は出来ないのか。うーん、教えるのは難しいな。


「魔力自体は感じれてるんだよね?だったらそれを抑え込むんだよ。自らの意思で、ね。半分は慣れのようなものかもしれないけど」

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