第4話
「ここが魔人の都『ラグドール』か。中々に発展しているね」
商人たちと一緒だったため思ってたより楽に都に入れた。
それにしても、初めての都だ。昔の都のことは知っていたけど、それに劣らずよく発展している。
でも、1000年経ったにしては昔とさほど変わってないな。変えてないのか?
「なぁ、都の発展ってここはどのくらいなんだ?」
「ここはよく発展している方です。発展していなければ、ここはすぐに竜人族に滅ぼされているでしょう」
そうなのか。確かに、隣は竜人族の都だが、そんなに広い土地を支配出来るほど良い統治をしているとは思えないな。…………それにしても。
「これで発展している方か。1000年前からあまり変わっていないのではないか?」
「えぇ、そうですわ。かつて、最も栄えた都である、我が都、『アサナースト』。そこが一気に衰退したため、他の都はそれを基準に発展させることしか出来なかったようです」
なるほど、吸血鬼族は偏見がなかった。差別もなく、多くの商人で賑わっていただろうな。
「聞いたことがある。何でも取り入れ、采配が良い都だったって。残念だな。見てみたかった」
これは本心だ。かつて最も栄えた都、その賑わいぶり、多くの種族が手を取り合っていたまさに理想郷。
そんな都が、今、どれだけ衰退しているのだろうか。年中雲に覆われ、日が当たらず、どれだけ苦しんでいるのだろうか。
「その言葉だけで満足ですわ。我らの都など、今は誰も立ち寄ろうとはしませんから」
クロの言葉からも悔しさと残念だという気持ちが伝わってくる。これも全て、竜人族が身勝手にも世界なんかを手玉にとろうとしたせいか。
今まで見聞きしたところでは、竜人族に世界を手玉にとる手腕はない。相手を騙し、脅し、弱体化しなければ挑もうとすらしない。ただ、子供が『自分たちが1番だ!』と言っているのと同じ。
「本当に、竜人は悪知恵しか思い付かないのか。愚かで、滑稽だな」
「ふふ、そうですわね。わたくしもかつて、都の統治者だった者。竜人の考えなどとるに足らないとわかりますわ」
「ただ、厄介なのは竜人族の『スキル』なんだよね。わりと便利なのが多いんだよ。それに、希少な回復系もいる。面倒だよね」
そんな話をしながら都を歩いていると、とある店から1人の魔人が追い出されていた。
「お前みたいな魔力の少ないヤツなんて、雇ってられるか!今日限りでクビだっ!!」
「そ、そんな………」
あれは…………ふふ、ポンコツだな。これ程まで酷くなっているなんて。種族自体、弱体化でもしているのか?こんなことにも気づかないなんて。
「大丈夫?お兄さん」
「あ、あぁ、ありがとう」
戸惑ってるな。そりゃそうか、知らない相手から急に声をかけられてるわけだし。でも、こんな逸材、見逃せないね。
「どうしたの?話でも聞こうか?僕はカミル。お兄さんは?」
取り敢えず、名乗っておこう。そうすればこの魔人も警戒を多少解いてくれるだろうし。
「お、俺はツミタリス。あんたたち、この都に来たばかりか?悪いな、気を遣わせちまって。でも大丈夫だ。俺は強いからな」
「魔力が少ないって、追い出されたのに?」
話は聞こえてたからね。それに、この人には秘密がある。きっと自分でも気づいていないのだろう。
「ぅぐっ………こんな子供に色々見透かされてるようだ。わかった。俺の話を聞いてくれ。それと、俺のことはタリスって呼んでくれ」
こうして、タリスと3人でカフェに入った。
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