第3話

僕は本でしかこの世界のことを知らないからクロに色々聞いてみようかな。


「各種族がそれぞれ都を持っているんだよね」

「えぇ、最大の都は竜人族の『ヘラクリオス』です。吸血鬼族の都はあまり発展しておりません。ですので、もし向かうならば別の都が良いかと」


なるほど、吸血鬼の都は発展してないのか。でも、やっぱり竜人族の都が1番か……。どこまでいっても偉そうな奴らだ。どうしてそこまでして1番になりたいのか………。


「……ところで、他の吸血鬼族はどうしてるの?」

「我が都から1人たりとも出ておりませんわ」


?あんまり発展してないのなら他の種族との交流は大切なはず。それすらしてないのか……?


「どうして?」

「実際には出られないのです。水血晶がなくなり、力の減少が始まりましたわ。それから、日の下を歩くことが出来なくなったのです。現在都は、大きな雲に覆われ、日の当たらないようになっているのです。」

「なるほどね」


どれだけ大規模な能力をつかったんだろう。力が衰退しているはずなのに………。でも、僕が人間族だってばれる心配は殆どないかな……?


「ところで、君は普通に日の下を歩いているけど、問題はないの?」


日の下を歩くことが出来ないって言ってたのに、クロは普通に歩いている。【真祖】なら、より力の減少が大きいはずなのに。


「わたくしは、大丈夫です。これでも真祖、多少力の減少があっても他の者よりも丈夫なのです。」


多少、ね。本当に多少なら竜人なんかに負けないはず。つまりは、能力が大幅に減少しているけど、本来の丈夫さには影響していない、と。


「それで、最初はどこに向かわれるのですか?」

「んー、魔人族の都かな?1番近いし」

「魔人族の都『ラグドール』ですか。確かに妥当かもしれないですね。治安もいいし、なにより、差別が殆どないと有名ですから」

「差別?」


昔あんなに手をとってまで人間族を滅ぼしたのに、仲間割れって感じか。バカだな。


「竜人なんかが特にわかりやすいですが、わたくしたち吸血鬼族は劣等種と見下されているのです。もし、カミル様がそのような差別を受けられたりしたら…………っ!!」


うーん、クロから殺気が溢れている。これはまずい。力が衰退しているとはいえ【真祖】だ。暴れられたら大変なことになる。


「落ち着いてよ。僕はそんなのに負けないから。逆に差別してきた側が可愛そうになるくらいだよ」

「そ、そうですわね。わたくしとしたことが、とんだ失態ですわ」


落ち着き、冷静になったようだ。恥ずかしそうに顔を赤らめているクロをみて少し和んでいた。


「でも、劣等種何て言っているのに水血晶は返してくれないんだね。そんなに【真祖】の本気が怖いのかな?」

「ふふ、そうかもしれないですね」


そんな話をしながらしばらく歩いていると、行商人に会った。彼らも魔人の都へ向かう途中らしい。荷車に乗せてもらうことにした。


その行商人からマントを買い、身に付け、フードもした。これで少しでも僕が人間族だとばれる心配が少なくなっただろう。

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