プレゼント
「わずらうような顔してどうした?」
影が異常に大きく見えたから、一瞬、雪の中に存在する大男かと思ったが、友達だった。わずらうを困ったという現代語に頭の中で変換してから、おうと反応した。学校に大男なんているわけがない。
「今週幼馴染と3年ぶりに会うけど、手土産は何にしたらいいかなーって」
「ああ、あの高水ちゃんね、ふじたかちゃん」
幼馴染の
「知恵袋で聞けば?」
「いや、なんかな……。『自分で考えろ』とか叩かれそうじゃない?」
「んー、そうか? じゃあ、クラスの女子にでも聞けば」
「いや、聞くハードルがな……」
このクラスの男女を隔てる壁が厚いというわけではないが、僕は別にフレンドリーではないのでそういうのは難しいという顔をすると、スマホを貸してと言われたので、特になにも言うことなくスマホを貸す。すると、友達は僕にスマホの画面を見せながら、LINEの所を開いた。そうか、LINEで聞けばいいだろということか。
「え、何やってるの?」
LINEでトーク画面の上にいる人に聞くのかと思っていたが、友達は突如、新たにグループを作成したのだ。そして、そこにクラスの女子全員を招待し始めた。
「で、このグループラインでさっきのことを聞くんだよ」
僕が止める間もなく、友達がさっきの内容についてそのグループラインで質問した。僕が瞬きを一度する間に、
『どうした急にwww そういうキャラだっけ』
『どうした笑? 送り間違え笑?』
『んーとねー、私なら愛のキスとか、ハグとかー! キャー!』
『いや、私なら結婚指輪がほしいー! それに観覧車貸し切りでー!』
という形で、いわゆる一軍、二軍女子の間で盛り上がり始めたのだ。リアクションボタンも瞬く間に押されていく。LINEの中が見たこともないように荒れ、まるで戦場とかした。
「おい、荒れてるぞ! どうするんだよ!」
「はは、悪い悪い。てかこれ、おもろすぎ! 傑作だわ」
友達は何も悪びれる様子もなく、わざと笑いながら僕の顔を見てくる。これじゃあ僕が変な人と思われてしまうではないか。僕は平凡な人間なのだ。こんなことで目立つようなタイプではない。僕の心臓が飛び出そうになる。人生の基盤が揺らいでいるのではないかと強く思う。
『幼馴染なら、思い出を振り返られるものとか?』
知恵袋より圧倒的に役に立たない回答が送られ、荒れる中、ひっそりと存在を隠すように、一人から真面目な回答が来た。
「ほら、これとかいいじゃん!」
「確かにいい答えもあったけど、僕のメンタルは今のでかなりやられてしまったんですが……!」
確かにこの意見はいいと思うけれど、それよりも僕の受けたダメージはかなり大きい。この意見を貰うためにはこんなにも大きな代償を払わなくてはいけないのか。ただ、いい案が出たことに何処か安堵している自分もいる。
結局、これ以上いい案を思いつかず、彼女に思い出を振り返ってもらえるようなものをプレゼントすることにした。ただ、僕は❝それ❞を作るのが得意ではなかったため、少し怪我をしてしまった。痛い。だが、そんなことは気にする必要もないだろう。怪我をする大小よりも価値があるのなら。
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