第2話 心の声
リョウとマユミは、毎日花園で顔を合わせるようになっていた。リョウは以前よりも少し明るい表情を見せ、マユミもまた、心の重荷が少しずつ軽くなっているのを感じていた。二人はまだ短い会話を交わす程度だったが、その時間はお互いにとって貴重なものとなっていた。
ある日、リョウは仕事の後に花園を訪れた。疲れた顔でベンチに座り、本を取り出す。しかし、その日の彼はいつもよりも沈んだ表情をしていた。マユミは彼の様子に気づき、静かに隣に座った。
「大丈夫?」とマユミが声をかける。リョウは少し驚いたが、彼女の優しい目を見て、心が少し和らいだ。
「今日は、ちょっと仕事でうまくいかなくて」とリョウはぽつりと答えた。
マユミはうなずき、「私も、最近はうまくいかないことばかりで」と話を続けた。二人はお互いの悩みを少しずつ話し始めた。リョウは仕事のプレッシャーと失敗について、マユミは家族との確執や親友の裏切りについて話した。
「なんだか、ここに来ると少しだけ心が軽くなる気がする」とリョウは言った。
「私も。同じ場所で同じ花を見ていると、不思議と心が落ち着くの」とマユミも同意した。
その日から、二人の会話は少しずつ深まっていった。リョウは自分の夢や目標について話し、マユミは自分が描く未来について語った。お互いの話に耳を傾け、共感し、励まし合うことで、二人の心は次第に癒されていった。
数日後、リョウが花園に着くと、マユミがすでにベンチに座っていた。彼は微笑みながら彼女に近づき、挨拶をした。マユミも微笑んで応えた。
「今日は少し歩いてみない?」とリョウが提案した。マユミは少し驚いたが、すぐにうなずいた。
二人は花園の小道をゆっくりと歩きながら、花々や木々を眺めた。風に揺れる花びらの音や鳥のさえずりが、二人の心に穏やかな時間をもたらした。
「ここに来るたびに、新しい発見がある気がする」とリョウが言った。
「本当にそうね。自然の中にいると、心がリフレッシュされる感じがするわ」とマユミも応じた。
その後も、二人は毎日花園で会うようになった。言葉を交わさずとも、共に過ごす時間が二人の心に大きな癒しをもたらしていた。リョウとマユミは、お互いの存在が日常の一部となりつつあることに気づき始めていた。
花園での静かな時間は、彼らにとって特別な意味を持つようになっていた。二人の心が次第に一つに近づいていくのを感じながら、彼らの物語は静かに進んでいった。
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