第6話 眠るなんてもったいない!?
ガラガラガラ。
浴室の扉が開く音。
ヒタヒタ。裸足で歩く音が聞こえる。
「ご主人様、お風呂掃除完了いたしました。着替えまでお借りしてしまい……恐縮でございます。こ、こちらは洗って必ずお返しいたしますねっ。あのぉ~、私に出来ることはありませんか? もうお休みになられますか?」
少しの間。
「『特にないよ』ですか……(しゅん……)。まだお時間があるので……『君は寝ないの?』ですか? はいっ! 私、寝溜め出来るので♪ えっ? 嘘じゃないです。それにいつでのどこでも眠れるので、大丈夫なんです。お気遣いなく。『こっちに来て証明してみて』と、言われましても……」
チリ~ン。風鈴の涼やかな音。
「ご、ご主人様のお願いとあれば……と思いますが、私の寝顔なんて……生クリームにバターを乗せて食べる様なものです。『意味がわからない』? で、ですよね」
ゴソゴソ。トントン。ベッドが叩かれる音。
「あん……。もぉ~ご主人様ったら……。ちょっとだけですよ。ご主人様がお眠りになられるまで、そばにいますね。私の寝顔など見ることがないように、こうしてっと」
ゴソゴソ。ギシギシ。
ベットが軋む音。
耳元で囁く声。
「こうしていれば、私のお顔は見られずにすみます。えへ(照)」
ギシギシ。
「あ、ダメです。こっちをむいちゃ! このまま、そっと目を閉じて、そうです。ゆっくりとお休みください。うん? 『何かが当たって、気が散る』って……もぉ~、ダメですよ。こんなささやかな胸、気になさらず、目を閉じてみてください。そばにいますから……うふ」
チリ~ン。
トクントクントクントクン。心臓の音が聞こえる。
「ご主人様……ドキドキされてます? うふっ。私もです」
モソモソ。布が擦れる音。
「『何をするの?』って、大丈夫です。そのまま目を閉じていてください。そぉ~、力を抜いて……。ここはおへそ。そこからすこぉ~し下。ゆっくりと……。『何か変』ですか? あれ? う~ん。おかしいですね……。ここに圧をかけると~、眠気を誘うって言われてるんですよ。あっ、ちょ、ちょっと、ご主人様っずるい~」
ゴソゴソ。布が擦れる音。
「あぁ~ん、それは先程の、恋人つなぎ!? 『こうしていよう』だなんて……ずるすぎます。あんっ、ご主人様だけ、両手を使えるのはずるいです! あ……っ。も、もうダメですっ。朝までこうしているおつもりですか? 『良いじゃん』って可愛く言われてもダメです。ちゃんと寝てください!」
ゴソゴソ。布が擦れる音。
「『手をつなぐだけなら良いよね』って……。仕方ないですね。ご主人様が眠りにつくまで、このままでいてさしあげます」
しばらくの間。
「『また会えるよね』って……ご主人様ったら……(しんみり)。えぇ、また会えます。いつでも。またお呼びください。それに……この服もお返ししないと。『今度はもっと』って……あ、またぁ~ダメですよ。目を閉じて……」
しばらくの間。
チリ~ン。
耳元の囁き。
「……お休みなさい。ご主人様」
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