第100話 覚悟
「次、今回みたいに人殺さないならなくなったらどうするんっすか?」
光莉ちゃんが、直球で質問してくる。
「流石に、毎回毎回そんな都合よく倒せるパーティがダンジョンに居ないと思うよ」
「そうとも言えないわ」
お姉さんが、反対意見を言ってきた。
「どういう事ですか?」
「協会には勇者絶対主義者が居るってのは前にも話たでしょ。
そいつらがダンジョンを完全に掌握しているならば、勇者用の狩場に仕立て上げている事も考えられるわ」
「そんな都合よくパーティ見つかります?」
「ダンジョンの管理者から、報酬が高くて難易度の低い依頼が入れば大抵のパーティは受けるわよ」
「依頼は誰が出すんですか?」
「でっち上げれば良いだけよ。
どうせ、ダンジョンから戻ってくる事は無いんだから、どんな都合の良いことでも書けるわよ」
協会の闇が深い。
「AAダンジョンに入るくらいなら、日本でもかなり上の探索者だと思うんですけど、それをそんな簡単に殺しちゃって問題ないんですか?」
「勇者主義のやつらにとっては百万人の探索者より一人の勇者の方が大切よ。
それにやつらも都合の良いのを極力選んでるはずよ、居なくなって喜ばれる探索者って案外多いから」
「まいったなぁ、多分次からは俺たちにも攻撃を強要してくると思うんだよなぁ」
「少し覚悟が必要かもね」
「AAダンジョンでパーティを襲う覚悟ですか?」
お姉さんの言葉にそう応える。
「もっと重い覚悟ね。
私達は復讐をしようとしているのであって、正義の味方じゃない。
毒を喰らって、泥水を啜るような、そんな覚悟よ」
「俺は良いですけど、それを光莉ちゃんや朱里ちゃんに強要出来ないなぁ」
「しますよ」
真っ先に応えたのは朱里ちゃんだった。
「良いの!?」
「前にも言いましたけど私にとってトレジャーハンターになるというのは、本当に重いことなんです。
あの時に言った『何でもします』は私の覚悟です。
だから、何でもします」
「あ、自分も良いっすよ。
元々人間って苦手で正直誰が死んだ言われても、へーとしか思わないっす。
自分聖女だから、バフするだけで経験値貰えるんで、罪悪感無いし」
とんでもねぇ聖女だな。
ん?
…バフ?
「え?光莉ちゃんバフって何?」
「あれ?気づいてなかったんすか?ウサギちゃんたちには毎回バフかけてますよ」
知らなかった…いつの間に!
「どんなバフかけてるの?」
「えーっとウサギちゃん達が傷つかないように防御系のバフっすね。
継続回復と、防御力アップと、回避力上がるのと、鋭敏っていう感覚系が上昇するやつっすね」
めっちゃかけてた。
「それってたかしには?」
「MP勿体無いからかけて無いっすよ」
「朱里ちゃんには?」
「あんま必要そうじゃ無いんでかけて無いっす」
「俺には?」
「え、戦ってないんだから要らないっすよね?」
純粋にウサギにしかバフかけてなかった。
えっぐ!マジで人間に興味ないじゃんこの聖女!
気を取り直して。
「まぁ、良いや、とにかくみんな覚悟を決めてやれるんだね?」
「兄貴俺まだ何も言ってないっすよ」
「え?お前やらないの?」
「いや、やるっすけど…」
「じゃあ、良いじゃん」
「なんか釈然としないっす」
「お前用の装備発注してるから、ここでやらないとか言われたら大損なんだよ。
それとも、その分お前払うか?」
「いくらっすか?」
「三億くらい」
「兄貴!一生ついて行きます!」
「一生は嫌だから、俺の都合いいタイミングで離れて」
「オッケーっす!武器いつくるんすか?」
「いつ来るの?」
お姉さんに向かって質問する。
「明日には来ると思うわよ」
「どんな装備っすか?」
「防具は朱里ちゃんと同じシリーズね、武器は鬼哭ね。
魔法戦士が使う武器で、お金で買える物としてはこれより良いものはまだ無いわ」
「ヒャッホウ!めっちゃ楽しみっす!」
たかしが単純でよかった。
「ところで、そこまで覚悟決めているなら、裏の仕事もする?」
お姉さんが、結構ヘヴィな提案してきた。
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