第98話 違和感

その後もモンスターが出てくると、白銀のメンバーがすぐさま倒してしまう。

俺たちの出番はない。


その強さも異常だが、一緒にいるうちに何か違和感を感じ出した。


なんて言うか、感情が薄い。

そういうタイプの人もいるけど、パーティメンバー全員がそうなのはなんか怖い。


まず、全然会話しない。

そして、笑わない、怒らない。

なのに、モンスターを見つけると我先に襲いかかる。


「あのー聞いていいですか?この人たちって凄い無口なんですけど」


「正直に言えよ、人間性が無いって言いたいんだろ?」

言えるか!


まぁ、頷くけど。


「コイツらはな、一度探索者として詰んだ奴らだ」

「なんか悪い事でもしたんですか?」


「いや、単純に弱かっただけだな」

「こんなに強いのに?」


「そこで俺のスキル『滅心昇華』よ』

「スキル?」


「人間的な感情を代償にステータスの何処かが三倍に強化される」

「え?ランダムなんですか?」


「一度上がったところは二回目は上がらない。

喜怒哀楽で四カ所上げられるな」

「は、はぁ」


「面白いもんで感情がなくなると、生きていくのに必要な事くらいしかできなくなるんだな」

「それじゃあ、戦闘出来なくなりません?」


「そこで俺のスキル『獣心侵食』よ」

「スキル?」

っていうか、一体いくつスキル持っているんだ?


「人間性を犠牲にして、闘争本能を増大するスキルだな。

それで戦闘時のステータスも全て5割り増しになるしな」


どれもこれも聞いたこと無いし、能力が強すぎる。

…代償も酷いけど。


「闘争本能上げたら、急に暴れたりしないんですか?」

「そこで俺のスキル『喪心傀儡』だな」


「それって、名前的にこの三人って白銀さんに操られてるんですか?」

「厳密には違うが、まぁそんな所だな」


…なんだこの違和感

いくらなんでもスキル多すぎないか?

それに勇者特有のスキルもあるんだろ?


いや、そこじゃ無いか、なんだ?


「あのう、喪心傀儡ってどんなスキルなんですか?」

「相手の人間性を喪わせて、俺の命令を聞かせるスキルだな。

ただ、細かく操ってるってわけではないから、名前のの割には大したこと無いスキルだ」


分かった!

違和感の正体はスキルの系統だ!


前二つは代償はあるけど、それでもバフスキルだ。

勇者の特性としてはそこまで違和感はない

いや、なかった。


だけど、喪心傀儡は完全に違う。

勇者のカテゴリーから生まれるようなスキルとは到底思えない。


あと、今説明されたスキルもさっき使ったスキルもどれも、スキルとして強すぎる。

上級クラスのユニークスキルである恵ちゃんの黒の契約と比べても遜色ないスキルがあんなに沢山獲得出来るのか?


いくら勇者でも強すぎないか?


「あのー何で俺なんですかね?」

「どういう意味だ?」


「いや、いくら巻き戻しがあるって言っても俺じゃ弱すぎません?」

「んー、テイマーってのは特殊なクラスでな、スキルよりもクラスに能力が依存するんだわ」


「ん?というと?」

「お前の持ってるスキルを俺が持ってもモンスターをテイムできない」


『まるで、試した事あるみたいですね』

この言葉が口から出るのを俺はグッと喉の奥に押し込んだ。


あるんじゃないかコイツ…。

コイツ、他人のスキル奪えるんじゃないか?


全部の疑問が一つの線になった。


「…へぇ」

俺はこれだけを絞り出して会話を終了した。


こんな化け物倒す手段なんて本当にあるのか?

俺は目の前が真っ暗になった気がした。


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

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 よろしくお願いします。

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