第97話 殲滅
ダンジョンに入って、白銀パーティの強さを実感した。
鎧袖一触とはこのことか!
って感じ。
奪い合うようにモンスターに群がって、一瞬で倒してしまう。
こえーよ!どっちがモンスターかわからねぇよ!
俺たちが手を出す暇も隙も無い。
もちろん経験値も入らない。
パワーレベリングの話はどこいった?
もちろん怖いから何も言わないけどな!
階層を一つ下がり、しばらく歩くと白銀が立ち止まった。
「おー居た居た、お前らあのモンスターを殲滅しろ」
かなり離れたところにいるターゲットを指差す。
「へっ?」
「何してるんだ?早く行ってこい!」
「いや、でも、あれって…」
どっから見てもモンスターじゃなくて探索者なんですけど…。
「いいか?ダンジョンに居る生物は二つしか居ない。
モンスターと探索者だ。
モンスターってのは俺たちに危害を与える可能性があるモノだ。
ここまでは分かるな?」
「はい…」
「あいつらは俺たちに危害を絶対与えないと保証できるか?」
「いいえ…」
ダンジョン内での探索者同士のトラブルなんて、何処ででも聞く話だ。
だいたい、一般社会でさえ目の前の通行人が100%危害を加えないなんて保証は無い。
ダンジョンなら尚更だ。
「モンスターとは、俺たちに危害を与える可能性のあるものなんだから、あれはモンスターなんだよ」
なに、この地獄の三段論法?
「え、いやぁ、さすがにそれはぁ…」
人間が経験値美味しいのは知ってるけど、だからって通りすがりに居るだけの探索者を皆殺しにしようとは、いくら俺でも思わない。
というか、普通そんな考えになるか?
人間殺して経験値たくさん貰えるからって理由だけで、じゃあ殺すってならないぞ流石に。
こっちを狙うとか、色々悪さしてる悪党とか無いと無理だろう。
「ッチ、おい」
白銀が舌打ちして他のメンバーに目配せする。
『リンクエクステント』
聞いたことの無いスキルを白銀が使う。
その瞬間、残りの白銀メンバーが一斉に目の前の探索者に襲い掛かった。
「なんだお前ら!うわ!何するんだ!グワ!ギャー」
あっという間に探索者たちを鏖殺する。
その瞬間、もの凄い量の経験値が入ってくるのが感じられた。
通常ではわずか過ぎて感じ取れない感覚があまりの流入量のため感じ取れてしまう。
湧き上がる万能感。
AAランクのダンジョンに居る探索者だ。
弱いわけがない。
その者たちの経験値なのだから、今までと比べても圧倒的な流入量だ。
「どうだ、凄いだろう。
俺の勝手な予想だが、俺たち探索者はモンスターを殺して経験値を得る。
それは無くなるんじゃなくて俺たちの身体のどこかに貯まってるんだと思う。
それを根こそぎ頂けば、あっという間にレベルが上がる。
あれは、経験値を貯めてある袋だな。
貯金箱みたいなもんか」
そう言って白銀が笑う。
「俺たち何もしてないのに経験値入ってきたんだけど」
「俺のスキルだ。
何もしてない連中にも経験値を分け与えてやるんだ。
ありがたいだろ?」
強制的に共犯者にするスキルにしか思えないけどな。
無理矢理、麻薬を投入させられて中毒にさせられる気分だ。
こいつはヤバい。
共犯者意識と、大量の経験値という麻薬を同時に与えて、沼に嵌める。
だが、これを拒否すれば更に差は開く。
俺は吐きそうな気分を無理矢理押し込めて、ついて行くしかない。
恵ちゃんが一番危惧していた事はこれだったんだ。
もうこいつは、人間を同じ種族だなんて思ってない。
俺が絶対なってはいけない見本がここに居た。
【後書き】
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