第63話 トロッコダンジョン 5
少し休憩していたら、救援の人がやって来た。
勇者がレスキューボール使った時点で、ドワーフが未討伐状態になるのが確定し、報告義務として他パーティがいた事は報告が入るらしい。
の、割に遅いよね。
わかっていたけど、こういう時って大体終わった時か、手遅れになる時まで来ないよね。
いや、救援できるだけの戦力が集まるまで来れないのは分かるけどさ、意味ないよなって思ってしまう。
正直めんどくさいので、ゴブゴブさんに全部任せた。
その方が手っ取り早そう。
戦闘人数が多すぎたせいで、ドワーフの経験値も入っていない。
この後どうしようっかなぁ。
もう少し潜りたいんだけどなぁ。
「ちょっと良いかな、協会の人が事情を確認したいそうなんだが」
ゴブゴブさんに連れられて、協会の人ってのがやってきた。
「倫理取締り委員の安藤です」
「あ、どうも」
「一応確認だけど、今回の件は勇者パーティにけしかけられて戦闘行為を始めたって事で良いのかな」
「はい、そうですね」
「けしかけたのは君たちでは無いと」
「はい、そうですね」
「倒せる実力があるパーティを無理矢理救援して、アイテムを横取りしたりとかは無いんだよね」
「随分、失礼な事言いますね」
「すまないね、これも職務でね」
「あなた方が戦闘中に来てくれていれば、そんな疑問出なかったんですけどね」
「我々としても二次災害防止の為確実に勝てる戦力が集まらないと動けないのだよ」
「それで間に合わなくて、パーティ見殺しにしてたら本末転倒だと思いますけどね。
もう少し鍛えたらどうですか?」
この人の言ってることが、言い訳にしか聞こえないから、なんかイライラする。
これ俺たちの実力がもっと低くて全滅してて同じ事言えるのかな…言えるんだろうな。
前線で戦ってる人たちじゃ無いもんな。
あれだよね、お役所仕事ってやつだよね。
結果はどうであれ、やってますよって奴。
「わざわざ心象悪くする物言いは、得策じゃないと思うんだがね」
俺はハァァァっと大きなため息をついた。
「で?他に聞きたい事はあるんですか?」
「いや、これで充分だな」
なんか、無駄に疲れたな。
「あのう…」
一旦入り口まで戻ったらなんか声かけられた。
パーティのリーダー格っぽい人だ。
「ん?なにか?」
「今回はありがとうございました。
あの子って聖女ちゃんですよね?」
「聖女…ちゃん?」
「あ、はい、最近デビューした女の子で、みんなそう呼んでますよ」
「ああ、そうなんだ、うさぎ繋がり?よく分からないけど、うちのパーティに加入してくれたんだよ」
「そうなんですか!それでそのう、勇者の事は知ってますか?」
「うん、なんか凄い執着してるよね」
「あ、はい、元々彼女のパーティだったメンバーは脅されて無理矢理パーティ解散させられて、その後勧誘したパーティも脅されたり、暴力受けたりしまして。
ちょっとでも反論したり、抵抗したパーティには制裁食らわせてるらしいんですよ。
実際亡くなった方も居るって聞いてます」
今回も俺たちだからクリア出来たけど、他のパーティだったり全滅してたかもしれないもんな。
「ひどいね、協会に言わないの?」
「今回のも見てわかると思うんですが、協会のルールの穴をついてくるんで、協会としても明確に悪いとは言いづらいらしく…。
それに、ほら勇者じゃないですか、日本で現役で3人目、引退した人入れても5人目の。
その為、多少の事は目をつぶるようにって逆に言われちゃうんです」
「そうなんだ…」
くっそー良いクラス着きやがって、こっちは最弱って言われてるんだぞ!
微妙に周りの視線が冷たいんだぞ!
あの勇者、次は泣いても許さないで良いんじゃ無いかな。
てか、次はキッチリ潰そ!
その為にもレベル上げだな!
「みんなまだ大丈夫?もう少し潜りたいんだけど」
みんな快く了承してくれた。
良いパーティだ。
数時間後
「あのう、今日中に攻略するつもりです?」
朱里ちゃんが質問してきた。
「え!そ、そんつもりあるわけないじゃんか!」
ちょっと視線が泳ぐ、なんか調子いいんでこのまま行っちゃおうかなって思ってた。
「流石に無謀っすよ」
光莉ちゃんが話に割り込んできた。
「そうだよね、じゃあ、キリの良いところで帰ろうか」
そう言ってトロッコに乗って次の広間に辿り着くと、そこには真っ赤な鬼が居た。
いや、真っ赤なドワーフが居た。
「怒れるドワーフだ!まずいぞ!このダンジョン最強モンスターだ!」
ゴブゴブさんが焦ってる。
「一応確認ですが逃げる手段は?」
「無い、諦めて戦うしか無い、救援信号を出そう」
普通のドワーフだってあんなにかかったのに、それより強い奴相手なんでしょ。
救援間に合うとかぜってー無理じゃん!
俺は奥の手を使う覚悟を決めた。
【後書き】
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