第62話 トロッコダンジョン 4

「色々みんなと相談せなあかんねん!」

恵ちゃんは怒ってるんじゃなくて焦ってるようだ。


「まず、お兄さんが使っちゃあかんて言ったのに巻き戻し使いました!」


「それは僕のせいだね本当にすまない」

ゴブゴブさんが頭を下げた。


「あぁぁ、ちゃうねん!そこじゃなくてここからやねん。

それを間違って朱里ちゃんのSNSにアップしてしまいました!

みんなほんまゴメン!」

恵ちゃんが最敬礼ばりに頭を下げて謝る。


「でも、すぐ消したんでしょ?問題ないんじゃない?」


「だったら、ええねんけど…そんな甘くないと思うんやわ」


「イマイチよく分かってないんだけど、巻き戻しってそんなに見せちゃダメなものなのかい?」

俺自身、イマイチ恵ちゃんがこんなに焦っている理由が分かってない。


「もうダンジョンが出来てから50年経つけどな、今まで死者を復活する手段はスキルでも魔法でもアイテムでも、見つかってなかったんやわ。

お兄さんの巻き戻し以外」


「あれ?エリクサーって見つかってなかったっけ?」


「瀕死を助けるのと、死者を生き返らすのじゃ全然意味が違うやんか、エリクサーじゃ蘇生出来へん」


「なるほど!で、そうなると俺はどうなるの?」


「未知のS級以上のダンジョン、そこは常に死と隣り合わせや、死んでも生き返らせられる方法があるなら、そんな便利なもん誰でも連れて行きたくなるやんか」


「て事は?」


「この先一生危険なダンジョンの中ですごすことになると思う」

え!なにその真っ黒くろすけな生活環境。


「それは流石に嫌だなぁ」


「ほんまごめん!

それでな、少しでもマシな状況にしたいと思ってるんやけど、そうなると大きい勢力との抗争に皆んな巻き込んでしまう事になってしまうねん!

それは申し訳無いから、ここで一旦みんな解散して、うちとお兄さんだけになった方がええと思うんやけど、どう?」


「私は嫌ですよ、というかオーブも装備も用意してもらって危なくなったからさよならってしたら、私最低過ぎません?」

真っ先に朱里ちゃんが一緒に着いてくる宣言をした。


「自分も嫌っす!ここでパーティから離れたらまた勇者に絡まれるっす。

それにドンちゃん達と別れるくらいなら、皆殺しを選ぶっす」


あ…自分じゃなくて周りを殺す選択するんだ…え?光莉ちゃんってもしかして武闘派?


「うーん、僕も今回の原因がウチのゴブ男が原因だから、じゃあさよならってしづらいなぁ」

ゴブゴブさんも難色を示す。


「あ、あの、俊輔くんは、僕にとって初めての友達っていうか、あ、僕が勝手に思ってるだけなんだけど…その、何が出来るかとか、分からないんだけど…協力して良いなら協力したい…」

最後の方は小声でかなり聞き取りづらかっったけど、ギリ聞こえた。

健二が思ってたより親密だった。

えー、そんな事思ってたのーなんかー照れるー嬉しい!


「みんないい人やんな!じゃあ、ソロソロ協会の人来るだろうから口裏あわせてな!

あ、ゴブゴブさん映像は消しておいてな!」


「そうすると勇者を糾弾する証拠が消えてしまうんだけど」


「しゃーない!巻き戻しのシーン残ってる方がヤバいねん!

あぁぁぁぁそうだ!ウチ戦えるのみんな内緒やで!」


認識阻害と認識誤認で恵比寿と分からなくても、ポーターがあんなに戦えると色々と推察する人出ちゃうもんな。


「これってお姉さんにも相談した方がいい感じ?」

「せやなお姉ちゃんの力借りんとヤバいな」



「元S級探索者、エグゼクティブカドレーの出番やで」

恵は誰にも聞こえないくらい小さな声でつぶやいた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る