第61話 トロッコダンジョン 3

「玄武とドンで交代でタゲ取って!

 女子は下がってきた奴に回復!

 他のやつはタゲ取らないようにしながら確実に削って!」


 俺は簡単に指示を出した。

 咄嗟だったけど、ゴブゴブさんと健二も俺の指示で文句はないみたいだ。


 玄武2体とドンがその指示に従って、挑発などを使ってドワーフの攻撃を自分たちに集中させる。


 あまり育ってない健二の玄武でも2回、俺のドンとゴブゴブさんの玄武なら3〜4回は攻撃に耐えられるので3体で回していれば、かなり安定して戦える。


「お兄さん、なにあってもノバの巻き戻し使ったらあかんで」

「どうしたの急に?」


「撮影は勇者問い詰めるのにまわさなしゃーないって思うんやけど、巻き戻しがそれに映るとめっちゃヤバいねん」


「うつっちゃダメなの?」


「あかん、協会に知られたら絶対酷い目にあう」

「分かった」

 俺たちが話している間も戦闘は続いている。


 朱里ちゃんも撮影を光莉ちゃんに任せて、攻撃に加わっていた。


 それにしても、聖女も回復力が半端ない。

 撮影しながら器用に回復して回っているけど、確かまだ20レベルくらいのはず。

 もう少しレベル上がったら、バフとデバフ、さらに攻撃系の魔法まで覚えるっていうんだから、みんな聖女欲しがるよな。


 俺自体はまともに戦えないから、回復ポーション蓋開けて飲ませる係に徹している。

 俺だけじゃなく、テイマーのゴブゴブさんと健二、一般職(?)の恵ちゃんもだけど。


 アイテム係多いな!


 しかし、たった1体のドワーフ相手に15体のモンスターと朱里ちゃん、回復係に聖女とスライム、そしてアイテム係4名


 これで全然決着つかないんだから、ドワーフってとんでもないな。


 あれ?そういえば。

「健二、スマイルスライムって進化させた?見た目全然変わらないけど」


 スマイルスライムってランク1だから、このダンジョンで充分レベルカンストするはずなんだけど。


「キングスマイルスライムってランク5なのでまだレベルカンストしてないんですよね」


「へぇそうなんだ…え!?」


「健二君!ランク5というのはほんとかね!」


「あ、はい」


「それ協会に報告した?俺知らなかったから何もしてないよ…」


「え?報告いるんですか?」

 あ、健二くんっておぼっちゃまだった。

 自分から何かするとか今までした事ないよな。


「いるよー、ここ出たら報告しなよ!」


「あーゴブ男ぉぉぉ!」

 すっかり楽勝ムードになっていたら、いきなりゴブ男が倒された。


 気づかないうちに、ドワーフがバーサークモードになっていたらしく、ランダム攻撃が運悪くゴブ男に集中したらしい。


「ノバ!巻き戻し!」

 反射的にノバに指示を出してしまった。


「お兄さん!」

 恵ちゃんが慌ててる。


 フィルムが逆転するように、戦闘が巻き戻っていく。

 30秒前まで戻ると戦闘が普通に再開される。


「ゴブゴブさん!今のうちにゴブ男離脱させて!」


「分かった!ゴブ男こっちに戻ってこい!」


 恵ちゃんに言われてたのに使っちゃったよ。


「光莉ちゃん!撮影止めて!消さなあかん!」

「え?え?」

 恵ちゃんが凄い剣幕で言うもんだから光莉ちゃんがちょっとパニックになってる。


「はよ!はよ消さな!…あ!」

 光莉ちゃんが朱里ちゃんから預かったスマホは最新型のダンジョン対応タイプだった。


 どういう物かというと、今までのタイプより大容量のデータをダンジョンから外に発信出来る様になっていた。


 配信者がダンジョンからリアルタイムで配信出来る程度に。


「間違って送信してもーたー!」

 日頃使い慣れてない他人のスマホって操作ミスしやすいよね。


「送信取り消しすればまだ大丈夫っす!えっとえっと、わかんねぇっす!」

 光莉ちゃんが取り乱してる。


「朱里ちゃん戦闘中やし、あーもうしゃーない!」

 恵ちゃんも焦ってる。


「しかし、あのドワーフ、バーサークモードあるんですね」

 なんか、女性陣大変だなぁ。


「ドワーフ倒すなんて普通しないからね、私も全然情報収集していなかったせいもあるけど、あるとは思っていなかったよ」

 俺はすること無いんでゴブゴブさんと談笑してようかな。


 バーサークモードは一部のモンスターが持っているスキルバーサークを発動した状態のことである。


 これが発動すると、完全ランダムで相手を攻撃する攻撃が追加される。

 あと、攻撃力が上がり防御力が下がる。


 そういう特徴がある。


 発動条件は『HPが50%〜20%までになった時に相手に攻撃を受ける』だ。

 で必ず発動するわけじゃないけど、攻撃を受けるたびに発動の判定するので解除してもすぐバーサークする可能性がある。


 ドワーフは接近戦しかしないのと、周りを完全に囲んでいるので、俺たちに攻撃が届くことはなさそうだし。


 あんなの食らったら、一撃で殺される自信あるわ。


 あれ?恵ちゃんと朱里ちゃん交代して、朱里ちゃんが何やら光莉ちゃんに預けた携帯いじってる。


 恵ちゃんが参戦したら、あっさり決着ついたけど…良いの?



 ドロップ品は魔石とミスリルのインゴット、謎の金属製のハンマーだった。


「ハンマーがドロップしても誰も装備しない…ん?」

 ピノが謎のハンマーに抱きついてる。


「え?欲しいの?え?これ使って戦いたい?マジで!」


「どうしたんだい?」


「いや、ピノがこのハンマーで戦いたいらしく」


「あー、因幡の白兎がお話で出会うのは大国の主か」


「え?どういうことですか?」


「大国の主は大黒様のことだよ、大黒様といえば小槌を持っているものだからね、因縁あるんじゃないかな」


 言われみれば、ハンマーっていうより打ち出の小槌っぽい形状してるな。


「すいません、この装備貰っていいですか?」


「僕は構わないよ、他のみんなは?」

 みんな肯定してくれた。


「みんな集合!色々言いたい事あんねん」

 若干、恵ちゃんが怒ってる?

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