第60話 トロッコダンジョン 2
「あいつ、やりやがった!」
「巻き込まれないように距離をおこう」
ゴブゴブさんの提案で俺たちは離れたところで、ドワーフの戦闘を見守る事にした。
「ん?朱里ちゃん、何してんの?」
「いや、ドワーフの戦闘って珍しいって聞いたんで、録画しておこうかなって思って。
バズりそうだし」
「勝手にあげて良いの?」
「あまり褒められたものでは無いけど、特に罰則はないよ」
俺の質問にゴブゴブさんが答えてくれる。
「そういうものなの?」
「ダンジョン内での透明性のためっていう建前があるからね…僕も撮っておこうかな」
「え?どうしたんですか?」
「なんか不穏な動きに見えるから、後々動画あった方が僕達を守るかもしれない。
ま、保険だね」
そういうとドローンを用意し出した。
不穏な動きって、なんだろう?
念の為、ウチの子達もいつでも動けるように警戒してもらう。
ドワーフは凄まじい勢いで攻撃しており、どう見ても3人組は不利な状況だ。
探索者には戦闘時のルールがあって、基本的には介入はしてはいけない。
探索者は自己責任を重視しており、それには死亡まで含まれている。
それと戦闘後の様々なトラブルが起きる可能性と全滅の二次被害防止などもあり、介入非推奨になってる。
とはいえ、見殺しにするのも人道的に批判が出るので、協会不干渉の上での介入は黙認とされている。
「明らかに不利なのに、顔が余裕の表情をしている、おかしい…」
ゴブゴブさんの顔が険しい。
「あいつら笑ってますね、どう見ても勝ち目無さそうなのに」
朱里ちゃんはずっと動画撮ってる。
「この状況で戦闘から逃げ出す手段ってある?」
「レスキューボールって言う緊急脱出のアイテムあるで、めっちゃ高いからみんな使わんけど」
「朱里ちゃん、恵ちゃん、光莉ちゃんはドンの後ろに隠れてて」
あいつら、俺たちに戦闘なすりつけるつもりなんじゃないか?
勇者が一瞬こっちを見た。
明らかにニヤッと笑いながら、アイテムを取り出した。
「レスキューボールや!」
恵ちゃんが叫ぶ。
「君たち、それでも勇者かね!しなくても良い戦闘して他人になすりつけるとは何事かね!」
「うるせぇよ、どいつもこいつも勇者らしくって、俺はクラスが勇者なだけなんだよ!
勇者なんて、好きに生きるのに便利なクラスなだけだ!
配信でしか稼げないゴミクラスのテイマーが俺に偉そうに指図するんじゃねぇよ!」
「その配信だがね、今のこの現場も録画しているからね、これを証拠にして協会に訴える事もできるんだよ!」
「はっ!生き残れたらの話だろう?」
こちらを馬鹿にしたようにニヤつく。
「ダンジョン内でも探索者を殺害したら、IDに記録が残るのは知っているかね?」
こいつならやりかね無いせいで、ゴブゴブさんもちょっと焦ってる。
「は?誰が俺らが手を出すって言った?お前らはドワーフ倒せるのか?」
勇者は完全に見下した態度でこちらに言ってきた。
そしてレスキューボールを発動する。
勇者達の身体が光り、この場所から消える。
ドワーフは通常は戦闘しないが、戦闘が始まってしまうと、ボスと同じ扱いになる。
倒さない限りフロアから上に抜け出す事は出来ない。
下に逃げることは一応可能であるが、その場合ドワーフは階層関係なく追いかけてる。
トロッコに乗るのには時間がある程度かかる。
最悪、下の階で遭遇した通常モンスターとドワーフの挟み撃ちにあう。
レスキューボールみたいなアイテムも持っていないので、ここで戦うしかない。
なんて言うか、気に入らないパーティを殺すのにこんなに適した場所は無いな。
「あいつら俺たちがここに来たの分かってて、行動してるよね?」
「協会職員には勇者絶対主義者がけっこうおるんや、勇者の為なら喜んで協力する奴らが連絡したんやと思う」
なんていうはた迷惑な奴らだ!
くっそー、絶対生き残ってやる!
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