第64話 トロッコダンジョン 6

「とにかく、あいつから離れるんだ!あいつは最初からバーサーク状態なんだ!

 玄武とドンに壁になってもらおう!」

 ゴブゴブさんの指示で全力で部屋の隅に走り込んで2人の玄武とうちのドンで壁を作ってもらう。


 その後はこのダンジョンでやっている手順通りにノバを出して注意を引かせ、その間に他のテイムモンスターたちを出していく。


 今までもそうだったのだけど、ざっとしかダンジョンの情報を見てない。


 モンスターも、ロックなんとかみたいな、岩っぽい名前のついた防御力よりのモンスターがいるくらいの認識しかなかった。


 なので今目の前にいる様な特殊なモンスターの事はさっぱり分かってない。


 探索者としてあるまじき行為である。


 猛省して今後はもっとダンジョンの前情報を集めることにしよう。


 …その前に生きて帰らないとならないけどね。


 とりあえず、怒れるドワーフの事を皆んなに聞かなきゃ。



 ひと通り情報収集が終わった。

 若干説教が混じってた気もしなくないが、今はそれどころではない。


 怒れるドワーフの特徴を踏まえて、今はノバ1体で接近戦を仕掛けている。


 他のメンバーは全て距離をとって、遠距離攻撃をしている。


 最初からバーサークモードなので、ヘイト管理とか意味が無く誰に攻撃行くかわからない。

 ただ、遠距離の攻撃手段を持っていないので、1対1で接近戦をすると他に攻撃をする余裕がなくなると言う特徴があった。


 遠距離攻撃してる相手に近づこうものなら、接近戦をしている者が背中を攻撃し放題になる。


 流石にそれをしてまで遠距離攻撃を相手にはしないようだ。


 とはいえ、魔法耐性がやたら高く、即死を含めた全状態異常無効なので、魔法で削り切るのもかなり難しい相手ではあるんだけど。


 しないよりはマシなので、他のメンバーも主に魔法で遠距離攻撃してもらってる状況だ。


「あ!まずい!」

 ノバが1発喰らってしまった!


 防御を一切せずに、溢れんばかりの体力にものを言わせて全力攻撃をし続ける相手なので、たった1発でも大ダメージを受けてしまう。


 まずい!と思った瞬間ピノが新装備のハンマーでドワーフに殴りかかった。


 その隙にノバがこちらにダッシュで向かってくる。


 射程範囲に入ったところで健二のキングスマイルと聖女の回復が飛ぶ。


 回復しきったノバがダッシュでピノと交代しに行く。


 俺の切り札はノバのスキルだから、どうしてもノバが接近戦しないとならない。


 頑張れノバ!負けるなノバ!


 俺は安全圏で応援するぞ!


「そろそろじゃないかな」

 ゴブゴブさんが戦況を見ながらそう呟く。


 切り札は1回しかチャンスが無い。


 ゴブゴブさんや他の皆んなと、どのタイミングで使うか相談しておいた。


 ドワーフの動きが一瞬止まる。

 怒れるドワーフがHPの30%を下回った時に起きる、怒髪天モードに移行する。


 防御力を完全に無くして、その分攻撃力が500%増えるという、ドワーフの必殺のモードだ。


 だが、このモードになるという事は残りHPが30%以下であるという証でもある。


「今だ!ノバ!覚醒宿命だ!」

 いちいち声に出さなくてもいいんだけど、ついノリで叫んでしまった。


 既にノバは宿命の扉も覚醒させていた。


 そして覚醒宿命の扉も運命の扉に負けず劣らず、強力な効果を有していた。


『時の停止』


 対象のモンスター1体の存在する空間を30秒間完全に停止させる。


 1mmの誤差もなく、その物体の存在する空間のみ停止させるので、外部から攻撃し放題である。


 その攻撃で起きる衝撃は停止空間に全て蓄積されて、時が動き出した時に一斉に対象に伝わる。


 そして今、3人のテイムモンスターと朱里ちゃん、ついでに光莉ちゃんまでもが全力で攻撃している。

 恵ちゃんは…スリングで1回だけだね、あーやっぱり本気になったら余裕なんだろうな。


 ー30秒後ー


「ドビャグヴォバァ!」

 全方向から一斉に蓄積されたダメージがドワーフに襲いかかる。


 これぞ、俺達の切り札中の切り札である。


 日頃はまったく感じないレベルアップによるステータス変化が感じられた。


 あのドワーフ相当経験値高いらしい。


 ドロップ品は赤い一房の…髭?

 ご丁寧にまとめて縛ってあってまるでポニーテールみたくなってるけど、このゴワゴワ感はドワーフの髭だよね?


 ドワーフの赤い怒髪

 効果発動後1分間、知性50%、筋力200%になる。

 回避行動は取れるが、防御行動は取れなくなる。


 えー髪の毛じゃ無いってー絶対髭だってー。


 これもピノが欲しがった。


 ピノがパワーファイター化してき出したけど、それはそれで面白いからいっかな。


 なんにせよ、無事戦闘が終わったので、戻ることにした。


 ダンジョンから出たところで、救援部隊の人たちと鉢合わせした。


 ………あぁ!救援信号出してた!


 救援部隊の人たちの説教を喰らう羽目になった。


 20人くらい居るもんな、さすがにこれは大人しく説教されとこう。


【後書き】

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