第50話 着ぐるみ

 クリスタルダンジョンから上がって来た。


 ドロップ品や魔石の買取をしてもらう為に受付の方へと向かう。


「うさぎ?」

 ピンクにうさぎ耳の何かがベンチに座ってスマホいじってる。


「うさぎパジャマやね」

 パジャマ?

 え?パジャマって寝る時着るもんじゃないの?

 それで外で歩くの?


「部屋着ですけど、可愛いからあの格好で出かける子も居るんですよ。

 滅多に見ないですけど」

 キョトンとしている俺に朱里ちゃんが解説してくれた。


「そういうものなんだ」

「そういうものなんです。

 私も初めて見ましたけど」


 どうやら、希少種らしい。

 黒いツインテールが可愛らしい女の子だ。

 なんかこういうコンセプトのアイドルグループとかに居そう。


 ついつい見ていたら視線があってしまった。

 …

 …

 …

 気まずい…無言が気まずい!


 頑張って視線を逸らした。

 なんか、コレも失礼な気もするけどしょうがない、じっと見つめるわけにもいかないし。


「あの!うさぎ使いさんっすか?」


「え!あ、はい、うさぎ使いです」


「自分うさぎ大好きなんす!パーティ入れてもらえないっすか?」


「え、無理」

 あ、ガビーンって顔してる。


「あの!あの!自分結構良いクラスで!役にたつと思うっす!」


「えー役にたつって言ってもなぁ、てか何で俺がうさぎ使いって分かったの?」


「ネットに見かけたって載ってたっす、なんでなんとか会えないかなって、ずっと待ち伏せしてたっす」


「え、何時間もここにいたの?」


「8時間くらい待ってったっす!」


「俺たちが潜ってすぐに来て、そのままずっと待ってたくらいの時間だよそれ。

 よくそんなに粘ったね」


「何としてでも、うさぎさんの…うさぎ使いさんのパーティに入りたくて粘ったっす!」

 今完全にうさぎさんのって言った。


 こんな格好するくらいだからうさぎ目当てだとは思ってたけど。


「なんや?どうしたん?」


「あ、恵ちゃん、この子がパーティに入りたいって言うんだけど、どう思う?」


「ん?ええんちゃう?うさぎ好きの悪いやつはおらん!」

 悪いやつ…悪いやつ…クラス偽ってポーターやってるのは良いのかな?


「なんや?なんか言いたそうな顔して」


「ん、いやなんでもない、恵ちゃん可愛いなって思って」


「いややわぁ、そんなとって付けた感じで言ってぇ、そんなん言われても喜ばんでぇぇ」

 あれ、めちゃくちゃ嬉しそうにクネクネしてる。


 言われ慣れてそうなもんだけど、そうでもないんだな。


 ん?肩トントンされた。

 朱里ちゃんが自分を指さして顔を傾げてる。


「あ、うん、朱里ちゃんも可愛いよ」

 お、ニコって笑って満足げだ。


「うおう!」

 思わず声出ちゃったよ!

 振り返ったら、めちゃくちゃ至近距離でうさぎ娘の顔があった。


 ジーっと見てくる。

 …

 ジーっと見てくる。

 …

 ジーっと見てくる。


「えっと…可愛い…です?」

 あ、納得したのか、離れていった。


「で、なんの話だったっけ?」


「この子…名前はなんていうんや?」


「あ、えっと、名前は?」


「光莉、岩動光莉っす!」


「この子、光莉ちゃんをパーティに入れるって話やったよ」


「そうだ!どうしようか?」


「俊輔さんが良いなら誰も反対しないと思いますよ」


「そっかぁどうしよっかなぁ」


「お願いっす!」

 すごい見てくる、つぶらな瞳で凄い見てくる!


「わ、わかったよー、でもダンジョン入るのにその格好はダメだからね」


「分かったっす!ありがとうっす!嬉しいっす!」

 ピョンピョン跳ねてる。


 本人も喜んでるし、まあいっか。


「よろしくね、それでクラスはなんなの?」


「聖女っす」

 …

 …

 …

「え!?」


「聖女っす」


「聖なる女って書くやつ?」


「それ以外に聖女ってあるんすか?」


「いや無い」


「これからよろしくっす!」


「ちょっと聞きたいんだけど、他から勧誘来なかった?」


「めっちゃ来たっすよ、特に勇者がうるさくて、しまいには暴れるから、ずっと逃げ回ってたっす!あいつ調子のりすぎでムカつくんすよ!」


 あれ?なんだろう?トラブルの予感。

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