第49話 信号機 4
うーん、戦局があまり良くない。
爆弾だけで片脚を破壊しきれなかった。
耐久力が高いモンスターはHPだけじゃ無く、物理防御も高い。
そして、ゴーレムは状態異常にならないしデバフも一部は無効にする。
そのせいで反対側の物理攻撃メンバーも脚を破壊できていなかった。
「困ったね」
動きは鈍重で命中率も高くないので、そこまで不利って感じではないが、手詰まり感はある。
「効くか分からんけど、コレ使ってみる?」
恵ちゃんが濃い緑色の怪しい薬品を取り出す。
「これは?」
「腐食剤やで。
薬品の製作に失敗した時に出る廃棄物をそのまま捨てるのも勿体ないし処分費結構かかるねん。
そこで再加工してSDGs的ななんかしたらコレになったらしいで。
再処理分価格が上乗せされてるから、まぁまぁ高いねんなコレ」
「そうなんだ、じゃあ試しに使ってみようか?」
腐食剤はその名の通りモンスターの表面を腐食させて防御力を低下させる薬品だ。
便利なんだけど、欠点は時間がかかる。
使用後1分で防御力が1割程度低下する。
そして効果が減衰するので、2割低下するのには3分ほどかかる。
3割下げるには、6、7分かかる。
その頃には大体戦闘が終わっている。
使用量も1本で1割程度下げると追加が必要になるので、3割下げるには3本必要になる。
ましてやこういう大きなモンスターだと、一部分しか下がらないので更に必要量が多くなる。
なので、腐食剤の量も相当量必要なため、あまり効率良いアイテムとはいえない。
「多いなぁ!」
「こんなもん、なんぼあっても困らんやろ、ていうか沢山ないと意味ないやん」
「何本くらいあるの?」
「えっと、200本以上はあると思うで、まとめて買うからまけろ言うたし」
幸い健二はこっちの話聞いてない。
「ちなみに恵比寿さんならアレ倒すのにそれくらいかかるの?」
こっそり小声できく。
「あんなん、ワンパンでおしまいや10秒かからんよ」
「あ、はい」
恵ちゃんを怒らせるのはダメ絶対。
10分後
いやぁ、腐食剤って強力だね!
200本使ったらの話だけどね!
ジャンジャンかけていたら、効果が出るまでの時間も早くなるし、最終的には8割程度防御力が落ちてたんじゃないかな?
費用対効果何それ美味しいって状態だったけどね!
1体倒すのに200本使ってたらそのうち破産するよね。
ま、どんな方法だろうが無事ボスは倒せた!
なんと、ドロップ品が大量の魔石だった。
一般のゴーレムサイズの魔石が、2、30個あるんじゃないかな。
ボスゴーレムの魔石も別でちゃんと出てる。
宝箱もドロップしてるので、早速開ける。
黒い金属製の腕輪だった。
「はい、これどうぞ」
朱里ちゃんが鑑定ルーペを渡してくれる。
絆の腕輪
パーティ枠を増やす。
戦闘職2名、一般職2名、***
なんかパーティ枠増えたけどなぁ、そんなに増えてもしょうがない気もするなぁ。
そしてまた鑑定不能部分あるからコレも詳細鑑定行きだな。
「あのう、これってサファリダンジョンでテイムした人たちが団体で行動する為のアイテムじゃないでしょうか?
1番ポーターが必要になるクラスってテイマーですし」
さすが朱里ちゃんがなかなか鋭い事言ってきた。
ここも複数パーティ攻略前提みたいなボスだったし、あり得るな。
「なるほど、テイマー同士でパーティ組んで物量作戦出来るのか、でも今はまだ四神集めきってる人居ないしなぁ」
「え、いや、1人だけいますよね」
「ん?あー!ゴブゴブさん!」
「はい!」
「あのう、僕もテイムしたいモンスターいましてぇ」
健二がおずおずと横から手を挙げる。
「あ、そうなの?
遠慮しないで言えば良かったのに」
「え、いや、無理言ってパーティに加わってるのに、パーティの人数枠埋めるのどうかなって思ってたんです」
「あ、そうなんだ、気にしなくても良かったのに。
それで、何テイムしたいの?」
「それがそのぉ、スマイルスライムでして」
「うわぁ、また難しい相手を…」
スマイルスライム、バフと回復が得意というちょっと変わったスライムだ。
スライムダンジョンと言われる、スライムばっかり出てくるGランクダンジョンの最下層の20階でたまに見つかる。
何がめんどくさいって、めちゃくちゃ逃げ足が早い。
「やっぱりダメですよね…面倒かけてしまいますし…」
「あ、いや、待って。
回復とバフは居ると有り難いし、ゴブゴブさんも意外に話に乗ってくるんじゃ無いかな?
一回連絡とってみよう。
ゴブゴブさんが乗り気じゃなかったら、このメンバーで行っても良いし、面白そうだから行ってみよう!」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、次はスライムダンジョンに向かうね」
【後書き】
これ以降、1話更新にします。
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