第41話 談合

 入り口まで戻ってきたので、受付のお姉さんに引き渡すために、事務所まで連れていく。


「すいませ〜ん、連れてきましたー」

 なんか、奥の方でお姉さんが電話してる。


「いや、でも!はい、はい、しかしですね!……はい…わかりました…わかりましたっ!」

 全部は聞こえなかったけど、所々声が大きくなった所は聞こえてきた。


「あ、どうも」

 電話が終わったみたいなのでもう一度挨拶してみた。


「あ、あのぉ、本当に申し訳ないんですが…もう一度ダンジョンに行って、四神全部を彼にテイムさせて貰えませんか?

 あ、もちろんその代わり報酬は5体分で5倍の報酬にさせていたただきますので…」


「あ、はい、じゃあ行きましょうか?」


「…え?良いんですか?」


「報酬貰えるなら大丈夫ですよ、いや、まぁ、先に言っておいてくれっていうのはありますけど」


「彼だけ不公平だとかはないんですか?」


「その分追加で料金払うんですよね?

 じゃあ、特に何もないです」

 なんか、不満顔だな、俺の意見も言っといた方がいいのかな?


「不公平って言うなら、そもそも1億用意できる人だけ先にモンスターテイム出来るのも不公平だし。

 それが500万になっても、やっぱりその金額を用意できない人にしたら不公平だし。

 無料になったらなったで人が殺到するだろうから、ダンジョンに入れる人だけ不公平だし。

 結局、公平になんてどうやっても出来ないし、そこをとやかく言っても仕方がないです。

 そういう公平じゃない部分も含めてその人の能力だよって思いますよ。

 それに、報酬貰えるなら、俺にはどうでもいい事ですし」


「そ、そうなんですね…」

 あ、なんか引かれた。

 俺もこういう所が周りと馴染めない理由ってわかっては居るんだけどなぁ。

 ダメだな、気持ち切り替えてテンション上げていこう。


 元々性格が陰気だから、変に思考がハマるとどんどん暗くなっていく。


「ところで、あの護衛の人達は付いてくるんですか?」


「おそらく」


「またなんか言ったら、やっちゃって良いですか?」


「えーーーと、立場的に良いって言えないんですけど…いや、まぁ、ダンジョンって不測の事態ってどうしてもありますから…」


「わっかりましたー!という事なんで、ちょっとでもイラッとしたら不測の事態起きますんで!」

 ポーションで回復してた護衛連中に向かって大きめの声で伝えて、早速移動することにした。



「だから言ったであろう、あの程度の事はもみ消せるのだ」

 おっさんがなんか自分の力みたいに言ってくる。

 お前の力じゃねぇだろうが!ウザッ!


「あのまま言う通りにしてたら追加料金貰えなかったですし、それに別にあなたの力で揉み消したんじゃなく、そこのご子息様のお父さんが揉み消したんでしょ?」


「ぐぬぬぬ」

 ぐぬぬぬとか言うんだ。

 顔真っ赤にして怒ってるけど、反論出来ないって事は当たってるよね。


 最初の起点になる一般ボスまで来た。


 さて、まずはこいつを倒さないとね。

 と、思ったら、石が飛んでいって当たる。


「おお、すまんすまん、つい攻撃してしまった」

 振り向くと戦士風におっさんがニヤニヤしながらこんな事言ってきた。


 俺は思いっきりため息をつくと。


「パル、ボス倒しちゃって。ノバはそいつの腕折っておいて」


「おい!何をグワァァ!」


「おっさんいい加減にしてくれないかな?今からダンジョン帰るか、この場で死ぬか選んでくれない?」


「何を言っておる!そんな事が許されると…」


「帰る?死ぬ?5つ数えて帰らないないなら殺すから!1、2、3、4」


「ま、待て!分かった!戻る!ダンジョンから出ていくから!」


「そっちの護衛の人も、このおっさんと一緒に戻って」

 他の護衛の人はどうしていいかオロオロしてる。


「帰らないの?じゃあ死ぬ?」


「ま、待った、帰るから、な、帰るから!」

 やっと、鬱陶しい奴らが帰ってくれた。


 これで、依頼に集中できる。


「お兄さんごめん、ちょっとお花摘みに行ってきてええかな?」

 お花摘み?…あぁ!トイレか!

 女の子だもんな、そこら辺でしろとも言えないなぁ。


 まだ序盤だし、ここからなら入り口に戻ってトイレ行った方が良いか。


「うん、良いよ。ここで待っていようか?」


「先に行っててええよ、すぐ追いつけるし」


「そっか、分かったそうする」


 俺たちは、リポップの時間を待って改めて起点になるボスを探すことにした。

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