第39話 騒動
「あそこの御曹司には簡単に払えるお金かもしれないけど、こっちは知り合い中に頭下げてやっとかき集めたお金なのよ。
そういう苦労分からないから、あんな身勝手な要望出せるのよ!」
1番最初は、若いお姉さんだったんだけど、ダンジョンに入ってからずっとこんな感じで愚痴を聞かされてる。
「銀行とかじゃないんですね」
「銀行じゃ、審査通るまでに時間がかかり過ぎて間に合わないからね、探索者の知り合いに頭下げて回ったわよ。
千載一遇のチャンスだからね」
「そこがよく分からないんですが、そんなに高いお金だしてまで早くテイムしたいんですか?」
「当然よ!まず最初にテイマーは配信者が多いのは知ってるわよね?」
「はい」
「今話題のランク6モンスターを持っているのは君とゴブゴブさんだけなんだけど、ゴブゴブさんは試練の洞窟目指すって言って、配信をほとんどしなくなってるのよ。
レベル上げと自身のランク上げに集中したいって言ってね」
「あーじゃあ、いま麒麟の配信したら、独占できるんですね」
「その通り、協会がこのダンジョンでの配信を禁止したから、余計ね」
「へぇ」
「それに、この先依頼される後続の育成で貰える報酬で、今回の払った金額のほとんどは戻ってくるの。
これも大きなポイントね」
「なるほど」
「それに先に麒麟を持っている人の方がわずかだけど、ここのダンジョン利用を優遇してくれそうだしね」
「ん?優遇?」
「利用料が500万になるまでに、一体何名が麒麟を持つようになると思う?」
あ、そういえば、考えて無かったな。
ちょっと計算してみよう。
今回ので俺含めて、4人。
次で、12人に4人で16人
3回目、48人と16人で64人
4回目、192人と64人で256人
5回目、768人と256人で1024人
6回目、3072人と1024人で4096人
うわ、1万人超えるよ。
「凄い人数になりますね」
「でしょう。
しかも雑魚倒すんじゃなくて、条件付きのボス級倒さなくちゃ行けなくて、そこに他の子達もテイムするって考えたら、どう考えての1日100人くらいしか入れないと思うの。
ていう事は、1体につき100日以上かかるのよ」
「全部で1年以上、状況によっては2年くらいかかりますね」
「しかも、海外からの要望も強くて、国内だけじゃなくて海外のテイマーにも入場許可出すって話よ。
全部集めるのに何年かかるのか分からなくなるわ」
なるほどなぁ、早ければ早いなりのメリットあるんだなあ。
そんな感じで世間話をしながら、麒麟までたどり着く。
「ありがとう!噂には聞いていたけど、凄いステータスね!早速他のダンジョン行って配信するわ!」
ウキウキって文字が見えるんじゃないかってくらい浮かれてた。
次は直接あの集団と揉めていたおじさんだ。
こちらも事情はだいたい同じようなもんだった。
そして、ラストの御曹司パーティになった。
「………」
「………」
会話がない。
喋ってくるなオーラもすごいし、態度もデカい。
あの戦士風の人は明らかに不機嫌だし。
さっさと終わらせて帰ろう。
今回の報酬の使い道は決めてある。
全額装備に投入しようと思ってる。
上のランクに行こうと思ったら、どうしても越えられない壁がある。
俺だけランク6は1体しかいないことだ。
もちろん、ユニーク個体な子達だから、そこらのランク6に負けるとは思っていない。
それでも成長が止まってしまうと頭打ちになるだろうってのは予想出来てしまう。
それを打破するには試練の洞窟に行くしかないけど、通用するかが正直未知数だ。
そこでオーブあげたんだから、朱里ちゃんにガッツリ働いてもらう事にした。
今回の報酬(金額がデカすぎてイマイチ実感が湧いてない)を思いっきり注ぎ込んで一流の装備を揃える。
余ったお金で俺と恵ちゃんのアイテムも揃える。
お姉さんには世話になってるから、ブランド物を買っても良いかな。
装備の力でゴリ押ししよう作戦だ!
なんて事を考えたらすぐに
青龍のとこまできた。
サクッと倒してしまおう。
「あ、ちょっと待て、お前らはここに居ろ」
なんか戦士風のおっさんが俺たちに言ってきた。
「え?あ、はい」
「坊ちゃんどうぞ」
そういうと青龍をテイムしてしまった。
ん?どういう事?
「ほら、次行くぞ、ボサっとするな!」
「あ、はい」
これで良いのか?
恵ちゃんを見ると、トランシーバーで何か話していた。
朱里ちゃんはスマホで動画を取り出している。
この2人、俺より良い動きしてるなぁ。
「あ、今、協会の人と連絡ついたわぁ。
規約違反やから、このまま帰ってくるか、青龍をリリースして麒麟の確保にするか決めてくださいやってぇ」
恵ちゃんが戦士風のおっさんにそう伝える。
「うるさい!お前達は大人しく、言う事を聞け!」
「聞けないです」
朱里ちゃんが毅然とこたえる。
「分かってないな、この程度のトラブルはいくらでも揉み消せるんだよ!
どうも、しつけないといけない様だな」
そういうと、向こうのメンバーが武器を構えだした。
「それは、俺たちと戦うって事ですか?」
とりあえず、確認しないとね。
「いやいや、少し躾けるだけだ。まぁ、多少怪我したり動けなくなるかもしれないがな」
「ダンジョンで動けなくなるっていうのは、殺すのと同義だと思うんですけど?」
向こうのメンバーがニヤニヤ笑いながらこちらに近づいてくる。
勝てると思っているらしい。
「お兄さん、不慮の事故ってダンジョン内では起こるもんやで。先に手を出したのは向こうやし、ええんちゃう?」
恵ちゃんが普段見せない顔を見せてるよ。
なんか楽しそう。
「じゃあ、いっか。
おじさん達、殺そうとしたんだから、殺される覚悟もできているよね?」
自覚あったけど、やっぱり俺って人として大事な何か欠けてる気がするなぁ。
目の前の人が死ぬかもしれないのに、なんとも思わないや。
「Eランク風情が、俺たちに勝てると思ってるのか?」
『テイムリンク』
さてっと、うちの子相手にどこまでやれるのかな?
「恵ちゃん、ほどほどにね」
「任しときぃ」
何故だろう恵ちゃんの笑顔なのに、スプラッターホラーの映画見てる気分になる。
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