第34話 正しい攻略 1

 お姉さんから連絡があった。


『候補者見つかったから次来る日教えて』


『いつも通り、週末伺います』

 若干業務的だけど、必要以上の連絡は禁止されてるから仕方がない。


 当日、ウサギ小屋にやって来た。


「こんにちわ」


「あ、もうすぐ頼んでた人くるよー」


 少し取り止めのない話をしていたら、ドアがガラッと開いた。

「どうもー依頼されたゴブゴブですー」


「あ!ゴブゴブさんだ!」


 有名チューバーのゴブゴブさんだ!

 チューバーってのは配信者のことね。


 最初の動画、『ゴブリンをネームドにしてみた』でネームドモンスターにした“ゴブ男”と1人と1匹で配信している。


 そんなゴブ男もランク5のゴブリンリーダーになり、レベルもカンストし、やる事もマンネリ化してきて最近視聴数が落ちて来ていた。


「いやー最近は企画もなかなか良いのが出来なくて、困っていたから本当にありがたいよ!

 ここでうまくいけば、試練の洞窟に挑戦してみたまで考えているんだよね!」


 確かに、バズりそうだし、今回にピッタリの人かもしれない。



 早速サファリダンジョンに向かった。


「こ、こ、こんにちわ、えっと、あの、矢口朱里って言います!よろしくお願いしまシュ!」

 朱里ちゃんがめっちゃ緊張している。


「今日は同じパーティで行動するんだから、もっとフレンドリーで居てもらうと助かるな!」

 さすが爽やか系チューバーのゴブゴブさんだ。

 歯がキラって光った気がした。


「おはよー、なんやこの人?」

「あ、この前言ってた検証を手伝ってくれる人」


「ゴブゴブです!よろしく!」

「あ、はい、よろしゅー」

 恵ちゃんは通常営業だった。


 ダンジョンに入るろうとすると、ゴブゴブさんがここでオープニングを撮るって言い出した。

 しかも、俺たちも出演するらしい。


 その時重要な事に気がついた。


「あ!俺たちパーティ名無い!」


「ほんまや!ウサギと愉快な仲間たちとかどう?」

 あ、恵ちゃんの中ではウサギがメインなんだね、知ってたけどなんか寂しい、うん、大丈夫、僕は強く生きるよ。


「え、なんかダサく無い?ブレイクボンバーとかどうです?」

 ウチの何処にブレイク要素があって、何処にボンバー要素があるんだ?

 なんか、朱里ちゃんッて見た目と中身違う?

 …あ、違うからオーブくれとか言えるのか!


「とりあえず、『ラッキーフット』幸運の足って名前にしよう」

 無難なありがちな名前出してみた。


「ええんちゃう」

 恵ちゃん、いいはいいでも、どうでもいいのいいだろう。


「私もそれで良いと思いましす」

 考えるの面倒くさくなってるな。


「お、準備出来たかな、じゃあオープニング撮ろうか」


「は、はいぃ」


「はい!始まりましたゴブゴブチャンネル!今日はいつもとちょっと趣向が違います!

 スペシャルなゲストをお迎えしております!

 はい!自己紹介どうぞ!」


「は、はひぃ!ご紹介に預かりました!バニーじゃなくてハニーじゃなくてラビッ…えっと幸運の足でラッキーフットの俊輔でひゅ!ふぉめんなさい!噛んでしまいますた」


「これ生配信じゃ無いから後で編集するから、気楽に行きましょう!」

 ゴブゴブさん優しい。


 テイク2

「はい、ご紹介にあ、あ、あずかりました!ラッキーフットの俊輔です!」


「はいオッケー、じゃあ他のメンバー紹介もしましょうか」


「あ、トレジャーハンターの朱里です」


 恵ちゃんは大きくバッテンして映る気がないらしい。


「あれ?そういえば、君トレジャーハンターって言わなかった?」


「はい!リーダーの俊輔さんにしてもらいました!」


「えええ!上級職じゃない!一般クラスはなかなかオーブ回って来ないから滅多に上級職にならないのに、凄いね!」


「俊輔さんが私に使って良いよって」


「うわぁぁ、凄いな!オークションに出せば億の金額行くのをパーティメンバーだからって一般職に使うなんて、なかなか出来ないよ!」


「はい!だから私の身も心も俊輔さんのものになろうと決めて!

 どんな要望にも応えようと…」


「わぁぁ!何言ってるの!これ全国に流れるんだよ!ほんと何してるの!」


「はい、ストップ、カットするね、でもオーブはもう無いっての流した方がこれからトラブル無くて済むから、それは流して欲しいって、依頼されてるから、そこは使うね」

 お姉さんのフォロー力すげぇ。


「はい、よろしくお願いします」

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