第29話 ウサギ小屋
昼休みの騒動の直後に、ざっくりとお姉さんにウサギ小屋で相談する旨を伝えた。
ついでにトレジャーハンターについての情報も聞いておいた。
『うちの事務所で話し合いするのは了解したわ、内容が内容だけに即答しなくて正解だと思う。
トレジャーハンターはマッパー上位職の中では1番人気無いわね。
マッパーって結構優秀な一般職で、スキルでダンジョン内の地図を作成するオートマッピング、特定のモンスターを追跡出来るモンスターマーカー、ダンジョンのゲートを探知するゲートチェッカーが凄い便利で上位職は基本この延長線上でもっと便利なスキルを覚えるの。
特にアナライザーは様々な解析スキルを覚えるからかなり人気ね。
逆にトレジャーハンターはそういったマッパーの上位職の有効なスキルを諦めて戦闘も出来るようになるんだけど、戦闘の専門職にはどうしても劣るわ、決して弱くは無いしダメではないけど、正直うーんって感じよね』
そうだよなぁ、一般職が戦闘職より戦闘が得意になったら、もっと有名になってて俺でも知ってるはずだもんな。
俺が知らない時点でマイナー職だよなぁ。
放課後、俺はそのままウサギ小屋に向かう。
なんか、人の気配を感じるなって思ったら朱里ちゃんも後ろからついて来てた。
行き先同じなんだから当たり前か。
「こんにちわー」
「初めましてよろしくお願いします」
俺と朱里ちゃんがウサギ小屋に入ると、お姉さんと恵ちゃんが居た。
恵ちゃんにも連絡入れておいたんだけど、来てくれたんだ。
4人で話し合いが始まる。
ぶっちゃけ俺はたまたま当たったオーブだし自分に使えないし、売るにしても金額が大きすぎてなんか実感湧かないから、あげても良いと思ってる。
ただ、お姉さんも言ってるけど、お互いに関係性が希薄なんだよね。
同じ学校といっても話した事もない、顔見知り以下の関係。
現状でパーティに入ってもらっても、朱里ちゃんのレベル上げのキャリーしてるような状態で、俺たちと朱里ちゃんで恩恵受けるのは朱里ちゃんの方だ。
Aランクの5人パーティくらいの規模じゃない限り、ポーター2人体制なんて普通はしないからポーターとしての需要もない。
オーブをあげる事はそこまで抵抗ないけれど、対価無しで渡すには価値がありすぎる。
受け取った朱里ちゃんにも、嫉妬で何かしらしてくる奴もいるかもしれない。
こういう内容の話し合いだった。
「結局、何でもいいから払うもんあれば問題無いんやけどなぁ」
恵ちゃんがボヤく。
「でも、私にはこの身体くらいしか…」
「身体って言っても現代社会に奴隷制度は無いのよ」
「あっても同級生を奴隷とか、俺嫌ですよ」
「「「うーん」」」
「邪魔するでー」
いきなり、浅黒い女子プロレスラーみたいな2人組が入って来た。
「邪魔するなら帰ってー」
恵ちゃんが応対する。
「あいよーってなるかぁ!」
これが関西のノリって奴か。
「うちらは関西で活動してるAランクパーティの戦乙女や、よろしゅー」
「はぁ」
何だろう?なんとなく嫌な予感がする。
「さっそくやけど、現金で5億作って来た、これでランクアップオーブ売りいや」
「え?なんで?」
「そら、ウチらが使った方がずっと有効に使えるからや」
「えーでも最高落札額12億ですよ、半額以下ってせこくないですか?」
「おい、ガキィ、あんまり欲の皮突っ張らせんなよ、ウチらに目つけられても良いんか?」
「関西で活動してるなら、俺関西行く予定ないからあんまり影響ないと思います」
「ああん?1回痛い目にあうか?」
「はい、そこまで!これ以上やり合うなら協会が介入するわよ!」
お姉さんが止めてくれた。
「ふん!」
どう見ても戦乙女じゃなくてアマゾネスにしか見えない人たちが帰っていった。
「話戻すけど、やっぱりパーティに入ってもらって、親睦深めるのと人となり見極めて決めるしか方法無いと思うんだよね、問題に先送りって言われそうだけど」
「私がんばります!認めてもらってトレジャーハンターになります!」
朱里ちゃんはやる気だ。
「…胸でしょ」
恵ちゃんの視線が痛い。
「そ、そんな事ないよ」
恵ちゃんから顔逸らす。
「お兄さんウチじゃ満足出来へんの?」
「ちょ!誤解されるような事言うのやめて!俺何もしてないよ!」
「ハグしてあげたやんかぁ」
「して貰ったけど!嬉しかったけど!」
「私も頑張ってハグします!」
「ありがとう!じゃなくてぇ、違うからね!ハグが2人分ヤッホーとかじゃないからね」
「語るに落ちたわね」
お姉さんまで!
「じゃ、じゃあさ!なんか他に代案あるの?あるなら言ってみてよ!」
「それはないんやけどぉ」
「私も無いわね」
「ほら!ほら!やっぱり俺の案しかないじゃん!」
「まぁ仕方がないわね、しばらくパーティ組んで行動してから決めるで」
「ウチもお兄さんに飽きられないように頑張るわぁ」
「私もいっぱいハグします!」
「じゃあ、これからは3人で頑張ろうね!」
「鼻の下伸びてるわよ」
「ええ!痛っ!」
恵ちゃんにつねられた。
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