第28話 学校
ダンジョン攻略の翌日、いつも通り学校に通っていた。
特に友達も居ないし、楽しい訳でもないけど、なんとなく卒業はちゃんとしたい。
昼休みもいつも通り、購買部で買って来たパンを食べて昼寝をするつもりだった。
教室のドアが開いて見た事ない女子が入って来た。
気のせいか、俺の方を見てる気がする。
気のせいか、俺の方に向かって来てる気がする。
気のせいか、俺の目の前で止まった気がする。
「神成俊輔くんだよね」
気のせいか、俺の名前を呼んだ気がする。
「あれ?聞こえなかった?神成俊輔くんだよね?」
気のせいか…気のせいじゃないよなぁやっぱり。
「いや、学校で俺に声をかけてくる女子なんていない!これは気のせい!」
俺はパンを食べて寝ることにした。
「ちょっと待って!気のせいじゃないから!」
やっぱり気のせいじゃないかぁ。
なんか雰囲気的に楽しい結果が待ってそうじゃないんだよなぁ。
なんていうか、切羽詰まった感じ?
「ちゃんとこっち見て!」
「はい」
…近い。
そして彼女の身長はあまり高くないんだろうな。
俺が彼女の方を向くと、制服からはち切れんばかりの丸くて、大きくて、柔らかそうなもので視界が埋まってた。
「初めまして!矢口朱里です!」
揺れた。
「あ、初めまして」
「今日はお願いがあって来ました!」
また揺れた。
「あ、はい」
「クラスアップオーブを貰えませんか?」
凄い迫力だ。
「あ、はい…え!いやいやいや!あっぶね!思わずOKしそうになったよ」
恐ろしい!なんていうトラップだ!思考能力を奪うデバフをかけるとは!
「えっとすいません、私の顔を見てもらって良いですか?」
「ん?あぁぁ!ち、違うんだ!決して大きいから目が離せないとかじゃなくて!…あっ!いや、あの、その!」
しまったー!口を滑らせたー!
「男の人はそういうモノだって諦めてますから、そこは良いんですけど、ちゃんとお話ししましょ」
「…はい、すいません」
あれ?なんで俺が謝る状況?
「えーっと、改めてクラスアップオーブなんですが」
「価値は知ってる?」
「はい…私が無茶な事言ってるのも自覚あります」
「あ、良かった、価値知らないで喚いてるとかじゃなくて、とりあえず理由聞かせてくれる?」
「はい、私は探索者になるのが夢で、いつか立派な探索者になるって思っていっぱい探索者の事勉強して、色んな技術も練習して、頑張って頑張って、クラス取得したら、一般職のマッパーだったんです」
「あー、それは…なんとも」
「それでもどうしても諦められなくて、色々調べたら、マッパーには上級職って幾つか選べるんですけど、その中にトレジャーハンターっていうのがあって、それなら一般職でも戦闘も出来るし、でも上級職になる為のオーブなんて普通手に入らなくて…そんな時にウサギ使いがオーブ手に入れたって聞いて」
「ちょっと待った!うさぎ使いがオーブ手に入れたって情報はどこから?」
「え?ネットですよ、なんか同行した魔法戦士が大声でオーブくれって騒いでたって」
あーーー!あの時か!あいつずっと大声で騒いでたものな、まさかネットに情報流れるなんてなぁ。
「俺がウサギ使いだって事はどうして知ってるの?」
「協会員なら探索者協会に問い合わせれば登録してある情報は閲覧出来るから、同じ高校の神成俊輔くんって所までは分かるし、登録年月日見れば同じ学年だなってすぐ分かったし」
「なるほど、でも流石にはい分かりましたってあげられないよ」
「分かってます!だから条件として私を好きにして良いです!何されても文句言いません!報酬無しで探索の協力もします!だからお願いします!」
「待って!待って!ここ教室だよ!なんて事言うの!」
うわー男子どもの嫉妬の視線が痛い!
女子のゴミを見るような視線はもっと痛い!
「でも!でも!それぐらいしか私には無いから」
え、泣き出した。
もう、これ完全に俺悪者じゃね?
「待って、流石にここで決められないから、ちょっと一回ウサギ小屋来て相談しよ!ね、ね、学校で話す内容じゃ無いから、あっちのお姉さんに話通しておくから」
「…はい、ごめんなさい…私が無理言ってるのは分かってるんです…でも、他に方法思いつかなくて」
相当思い詰めてるんだな、思わず良いよって言っちゃいそうだけど。
これ、恵ちゃんは何も言わなかったけど、売ったら代金の半分は恵ちゃんのものだと思うんだよね。
相談無しであげるのは違うよなぁ。
「ちょっとー可哀想でしょーオーブだか何だか知らないけど彼女にあげなさいよー」
「そうだぞ、そんなオーブくらいあげたって良いだろうが」
1度も話した事ない女子と、名前も覚えてない男子が何か言い出した。
「じゃあ、お前らで金出し合って俺から買えよ、それで渡せば良いだろ」
「うわ、だっせー男だな!」
「良いわよみんなでお金だしあって買ってあげるわよ!みんなー協力して!」
「こんな最低な薄情な男をみんなで見返そうぜー!」
好き勝手言いやがって。
「ランクアップオーブの最高落札額で買ってくれよ、売るから」
周りの奴らが散々俺に悪態をついて罵りながら検索する。
ランクアップオーブ最新落札価格
12億6千万円
この騒ぎに参加したクラスメイト12名
「特別に1人1億円づつ持って来たら売ってやるよ、いつ払ってくれるんだ?」
全員無言で下を向きながら離れていった。
幼稚な正義感って本当に害悪しかないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます