第12話 洗礼

 キャリーケースをゴロゴロと引きながら芋掘りダンジョンに移動する。


 これは非常に便利だ。

 テイムモンスター専用のマジックバックになっていて、小さめの旅行用サイズなのになんと最大5匹も入る。


 テイムモンスターがこの中に入ると休眠状態になるらしく、エサの心配をしなくて良い。


 心配と言っても、元々ダンジョンに通っていればダンジョン内の何かを吸収しているらしく必要ないし、ダンジョンの外にしかいなくても1ヶ月くらいなら問題ない。


 それを過ぎると、体内の魔石と同じサイズか同等になる程度の量の小さい魔石を与えないと弱ってくるらしい。


 まぁ、喜ぶのが楽しくて定期的に魔石あげてたけど。


 芋掘りダンジョンについた。


 入り口の建物は古民家カフェって感じの作りだった。


 結構立派な古い門みたいのがあって、そこを通り抜けるとダンジョン特有の一瞬で景色が変わる感覚が来る。


 そしてやっぱり古民家カフェみたいな建物があってそこがここの受付っぽい。


「すいません、ダンジョン潜りたいんですけどぉ」

 今までと違って結構混雑している受付になんとか辿りついて声をかける。


「初めての方ですか?ランクは足りていますか?」

 あ、ランク更新してないや。


「あ、ランク更新してないんで、ここでやって貰えますか?」


「では、証明書の提出お願いします」

 特に何も考えずに証明書を渡す。


 神成俊輔 レベル26

 クラス: ラビットマスター

 強さ 31 物理的攻撃力

 器用 35 命中率

 素早さ36 回避率、移動速度

 知性 35 魔法的攻撃力

 耐久力33 HP基準値

 賢さ 32 MP基準値

 HP 33

 MP 32


 スキル ラビットテイム

    モンスターサーチ

    モンスタースキャン

    テイムリンク


「え!ウサギ使い!」

 思わず声が出てしまったようだ。

 受付のお姉さんが、慌てて自分の口を手で塞ぐ。

 しかし周囲には聴かれてしまったらしく、ちょっとざわついている。


「すいません!」

 証明書の更新をしたカードを渡しながら必死に謝る。


「まぁ、事実ですし大丈夫ですよ」

 気楽に返答して証明書を受け取り、建物から出た。


 ここぐらい混雑していると、買取や食事の建物も別にあるんだなぁ

 なんて、呑気に考えながらゲートに向かう。


「うわっ!」

 いきなり後ろから肩を掴まれた。


 振り返るといかにもな格好でいかにもな顔つきの男が3人ほど立っていた。

 年齢は俺より少し上かな?


「おい、お前、新参者だよな、挨拶もなしにどこ行こうってんだ?」

 やっべー忘れてた。

 ローカルルールあったりするから、ちゃんと確認しておけって言われてた。


「あ、すいません。どなたに挨拶すればよろしいでしょうか?」


「はぁ?そんな事もしらねぇでここ来たのか?仕方ねぇなぁ」

 そういうと、手を差し出す。


 握手?

 そう思って握ろうとしたら。


「バカかお前!金出せって言ってんだよ!紹介料だよ!」

 えーお金かかんのー、困ったなウサギ小屋から歩いて来れる場所だったから財布にお金全然入ってないや。


「今持ち合わせないんですけど、なんとかなりませんかね?」


「お前ウサギ使いなんだろ?じゃあそこのキャリーにウサギ何匹か入ってるだろ、そいつら捌いて魔石取り出せば金作れるだろう」

 は?無茶苦茶じゃね?


「それをしたら、俺戦えなくなります」


「戦うぅ?ウサギ風情が戦ったって戦力になんかなんねぇだろうが!それいないと戦えないって、お前ウサギより弱いのか?」

 嘲りの声色で大声で周りにも聞こえるように言う。


 周囲の人にはそれを聞いて馬鹿にした表情や吹き出している人もいた。


 なんだかなぁ、イライラするなぁ。


「少なくてもあんた達よりはうちのウサギの方が強いけどね」


「なんだとごらぁ!」

 簡単に挑発に乗って来た


「ついでに言うと、そこで吹き出してるあんた!ニヤニヤしながらバカヅラ晒してるあんた!全部足して5人でかかって来てもうちのウサギの方が強いよ」


「はぁ!ふざけんな!」

 あっちも煽り耐性ないな。


「なら、実践訓練しようじゃねぇか!勝敗はどちらも勝ち負けを了承した時のみの条件で!」

 通称デスマッチ、認めなければどんなに相手が負けを宣言しても延々と攻撃できるルール。

 致死に至ると判断されれば強制終了になるので、どうしても終わらせたいなら自殺しないとならない。


 探索者は血の気の多いのと、自信過剰、承認欲求の強いやつで構成されていると言われる。

 実際は全員じゃないだろうけど、探索者同士の揉め事は多い。


 暴れられると、周りにも被害が出るし、死傷者まで出てしまう事もしばしばだった。

 それで作られた特殊な建物とそれに付随するルール。


 暴力沙汰は訓練所で実践訓練で決着をつけろと言うルールだ。


 死ぬ一歩手前で瞬間的に回復させる大掛かりな装置が配置されている建物で、思う存分暴れろ、周りに迷惑かけるなって事である。


 実際これを破ると、最悪死刑まである重い罪に問われる。


 向こうは5人で即席のパーティを組んで俺とやるらしい。


 こいつら俺が勝算も無しにこんなルールで挑んだと思ってるのかな?

 訓練所まで連れてこられ実践訓練の手続きを始めたので、最初の仕掛けを始める。


「ところで俺のテイムしてるウサギにボーパルバニーいるけど、そのまま普通に戦闘する?」

 相手の作業が止まった。


「待て、優先権ルールを適用する」


【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

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 よろしくお願いします。

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