ただここにいて
鈴乱
第1話
『知らな、かった』
いつもと同じ光景。
まだ
手持ち無沙汰にペンをくるくると回しながら、なんとなく、場全体を眺める。
『みんな、頑張ってるな〜』
当事者であるはずなのに、どこか遠く
目の前にはやらなきゃならないことがあるはずで。
それは
大人なら当然こなしてしかるべきこと、で……
『あぁ、ダメだ』
頭の中にモヤがかかる。
まるでこれ以上考えるなと言うように、思考が途切れて、頭が働かなくなる。
『……治んないなぁ』
自分は正直、もっとデキるんだと思ってた。
誰かのお役に立てる、そういう存在だと、思っていた。
けど、実際は違ったみたいで。
『頭働かねぇし、身体も動かせねぇし……まったく……』
似たような経験はある。
これは、前触れなのだ。
自分の全てが、目の前にある世界を拒絶する時の。
『……仕方ねぇなぁ』
今は、従うしかない。
いくら心が逸って、あれもこれもと要求を突きつけようが、それをどうにかするための身体が拒絶一辺倒なら致し方ない。
自分がこの場を辞することを告げた時の周囲の悲しみと驚きと絶望の顔が脳裏に浮かぶ。
『すまねぇなぁ……』
申し訳ない気持ちは多分にある。
だけど、これ以上は双方にとって毒だ。
自分にとって。周りにとって。
ここに課されたミッションにとっても。
その毒がこの場を侵食しないうちに、さっさとここを去るのが得策だ。
自分にとってはそれが最善。
きっとそれは、周囲にとっても……。
そう、今は信じるより他にない。
ただここにいて 鈴乱 @sorazome
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます