巡るもの

季節は巡るものだ。

春が来ればいずれ夏が来て秋が来て冬になる。

誰かと出会う時に誰かとの別れを思うのと同じで、冬が来ると春を思い浮かべる。

桜が好きだから、葉が落ちて枝だけになった桜の木を見て、もうすぐ満開の季節が来るなと思った。

月が綺麗だったから、明日の天気も晴れだといいなとぼんやり思い浮かべた。

あなたを見て、私を見ていた。

言葉を重ねる度に、私と似ていて違う貴方に惹かれた。同じ様な環境、性格を持ってしてもどこか違うあなたに惹かれた。

恋なんかじゃなくて、もっと深くて表せないような愛を、親愛を積み重ねた。

もっと言葉を交わしたいと思った。同時に相容れない存在に対して疑問と忌避感も生まれた。

何を考えているのかもっと知りたかった。

私が見るのはあなたの背中ばかりで、私はそれを見て何を思い描けばいいのだろう。

もう届かなくなってしまった手を見つめて、何を後悔すればいいのか。

けれど時間は止まらない。

残酷なまでにすぎさる日々は、立ち止まったままの私を強制的に進める。

まるでエスカレーターに乗っているように、足はとめたままただ月日が過ぎ去る。

自力で階段を上ることも無く、抗うことも無く、歩いて速度早く上っていこうとも思わない。

そうやって止まった時間の中で自分と向き合う。

あの時言えなかったこと、誰にも相談できずに抱えたままだったこと、苦しかったこと、楽しかったこと、困ったこと。

それら全てに正解なんてないけれど、そうやって過去を見ているうちに後悔が生まれる。

言えばよかった、やればよかった、もっとああすれば良かった。

それを未来に繋ぎたい。


毎秒新しい未来を刻む自分であるから、今が1番未来の中で若い自分になる。

どこかで聞いた大好きなこの言葉と進む世界を、どうにか受け入れながら私もゆっくり歩んでいきたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今日の夢明日の夢 れい @waiter-rei

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る