第26話 反省と提案

「は...半年!?もう半年経ってたんですか!?」


 思わず詰め寄ってしまう。いつの間にそんな時間が経っていたんだ!?


 予定ではそろそろ鍛錬を終え、ダンジョン攻略に乗り出さなければいけない時期だ。


 全然そんな実感無いんだけど!?


「あ...ちょっと!?ち...近い近い!」


 命先輩は顔を真っ赤にしてのけ反った。


「あら~命ったら恥ずかしがっちゃって~ウブだね~」


「う...うるさい!!ちょっと驚いただけだ!」


 推しを驚かせてしまった...俺はなんてことを!


「す...スミマセン!!」


 急いで離れて頭を下げる。


 少し深呼吸をして平静を取り戻した命先輩は言う


「い...いや...大丈夫だ。それより、覚えていないのか?ちゃんと毎日、登校はしてただろう?」


 そう言われ、思い出す。


 確かに、この半年間の記憶はある。


 身体強化の制御方法も、恐怖の消し方も、後の閃の完璧なタイミングも、授業で学んだ内容も覚えている。なんだったら定期試験を受けた覚えもある。


 けど、入学から2か月を超えたあたりからの意識が曖昧だ


 鍛錬をしなければならない、と言う考えだけが頭を支配していた


 正気だったとはとても言えない、まるで別の何者かに体と思考を乗っ取られていた感覚に、戦慄した。


 えぇ怖!原作ではこんな描写なかったんだけど!?


 いやでも、半年間も休み無しで動いてたらそりゃ気も狂うか...


 ゲームではプレイヤーがボタン一つで簡単に行動を操作できるけど、実際にやってみると大変な事になる。


 後の閃を最初に試した時に実感したはずなのに、それをすっかり忘れていた。


 ごめんよ原作主人公君...タイムのためとはいえ気が狂う程の鍛錬をさせてしまった...


 今後は自制出来るように鍛錬は程々にしよう...


「あぁ...大丈夫です覚えてますよ。ただ半年も経った実感が無くてですね...」


 反省しつつ、取り敢えず返事をする。


「そうか?、それなら良いんだが...ただ、普段から今みたいに気迫を抑えてくれると助かる。皆が少し怯えてしまっていてな。」


「はい...気を付けます。」


 返事をして片手で頭を抱える。


 狂ってる時の俺どんだけヤバかったんだ...


 いや~それにしても、考えが回ってなかった...命先輩は学級委員だし実力もある。


 いろんな人から頼られている描写も多かったし、そりゃ同級生が狂ってたら様子を見に来てもおかしくないか...


 原作中では鍛錬中にキャラクターが訪ねてくるイベントは無かったから油断していた。


 今回は警告に来ただけだから大丈夫だろうけど、本格的に心配とかされたら本編ストーリーに影響出ちゃうかもしれないからな...


 なるべく命先輩はの手を煩わせないように、鍛錬は狂わない程度にしとこう...


 と反省していると


「ま~夢中になってる時って周りが見えなくなっちゃうことも多いし、傍から見てるとちょっと圧倒されちゃうときってあるよね~」


 と、真先輩がフォローしてくれた。


 沁みる...


 そして思い出したかのように


「自己紹介がまだだったね~私は紫堂しどう まこと、命のお姉さんだよ~生徒会の庶務で~す。よろしく~」


 と、手をひらひらと振りながら自己紹介をしてくれた。


「は、はい!相澤 龍平と申します!よろしくお願いします!ところで...紫堂先輩も何か俺にご用事が?」


 未だに緊張しつつ返事をし、尋ねる。


「ややこしいから真でいいよ~。私も用事はほとんど命と同じかな~。相澤君の迫力に圧されちゃって禅堂とかに入れないって人が居るから、なるべく抑えるか、鍛錬場に来るのを控えるようにお願いしに来たんだ~」


 確かに途中から瞑想中に人いなくなったな~とか思ってたけど、俺が威圧したからいなくなってたのか!?


 生徒会に苦情が出るレベルとは...無意識とは言え、悪いことをしてしまった...


 前世では真面目に生きてきたから、こんな風に警告を受けるのは初めてだ...なんだろう、結構凹むな...


 原作に描写されてないけど、主人公君はこの警告を無視し続けたんだろうな。


 ホントごめんよ主人公君、タイムのためとはいえ、周囲からの印象を悪くしてしまうようなことをさせてしまった。


 原作主人公に申し訳なさを感じつつ俺は肩を落とす。


「はい...気を付けます...」


「あちゃ~、ホントに落ち込んでるよ~」


 その様子を見た命先輩が、申し訳なさそうに口を開いた


「すまない...クラスのことにしろ、鍛錬場のことにしろ、相澤君自身に責任が無いのは分かっている。君は鍛錬をしてただけなんだからな。だから、その...あまり落ち込まないでくれ、君が鍛錬で得た成果は見させてもらった、凄まじい剣術だったよ。」


「本当ですか!?」


 真先輩も頷いて続く


「うんうん、あれだけの実力があればダンジョンでも大活躍するだろうね~」


 まさか、推しからのお褒めの言葉を生でいただくことが出来るとは!どこから見てたかは分からないが...感動だぁ...


「だから...」と言って命先輩は真剣な顔で口を開いた。



「相澤君、ダンジョンに行かないか?もう充分、鍛えただろう?」


「あ、はい行きますよ。今日の放課後にでも。」



 俺の即答に、命先輩は少し顔を引きつらせた。


「き、今日か?そうか...そうだな...うん、早いほうが良いな...うん」


 後ろの真先輩がクスリと笑って言う


みこと、拍子抜けって感じだね~?正直私も、まだ鍛錬したいからって断るかと思ったけど~」


「心を読まないでくれ姉さん!」


 真先輩の方を振り向いて叫んだ命先輩は「コホン」と咳ばらいをして俺の方を向き直り、俺の目を見据えて、言った。


「君のダンジョン探索、私も同行させてもらえないだろうか。」



#-----------------------------------------------------------------------------------------------

次回 おそらくダンジョンへ行きます

#-----------------------------------------------------------------------------------------------

いつも応援ありがとうございます。

更新頻度についてのご質問を多く頂いております。

序盤の投稿でスケジュールを設定したものがそのままになっていました。大変失礼いたしました。

基本的に書いたら挙げる、自転車操業方式で投稿しておりますのでストックと言うものが存在していません。

そのため更新頻度及び更新時間が大変不定期になりがちです。

続きが気になるなぁ、という方はフォローをして気長にお待ちいただければと思います。

今後とも応援の程、よろしくお願いいたします。

#-----------------------------------------------------------------------------------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る