第25話 正気と動揺
「トレーニング中すまない。今、少しいいだろうか?」
後の閃を成功させ、更なる鍛錬に励もうとする俺の前に現れた存在
それは、
少女を前に、突如として頭に推しと言う単語が飛び回る。
推し...?
推しとは...なんだ?
推しとは...人に薦めたいほど好感を持っている人物で?
俺には推しが居て...?
その推しが目の前にいて...?
でもそれは「天涯の虹」と言うゲームの登場人物であるから、目の前にいることはあり得なくて...?
でも俺は「天虹」世界に来た、だから目の前にいるのはあり得る話で...?
目の前の光景をきっかけに、次々と思い出していく。
35歳のリーマンだったこと、「天虹」の世界に来た事、推しの同級生である事、武神ルートを参考に生計を立てようとした事
そして、鍛錬にのめり込んだ事
自分がここにいる経緯を思い出し、改めて現状を理解する。
推しが!! 目の前に!!
正気を取り戻すと同時に、前世を含めて過去最大級の動揺が脳を支配する。
その結果
「しっ...しししししシシ、シドッ、しどぅ、紫堂先輩!?」
めっちゃ嚙んだ。
「んん...?」
目の前の紫堂先輩は首を傾げ
「え、私?」
と、後ろにいた少女が自分を指さす。
紫堂先輩とそっくりな顔、緩くウェーブのかかった紫のロングヘア、優し気に少し下がった目尻。
うおお!!紫堂先輩のお姉さんの
父の背中を追う命先輩を公私ともにサポートしている大変素敵なお姉さん、攻略キャラではないけどこれまた人気の高い人物だ。
それもあって、サブキャラではあるが命先輩に次ぐ推しと言っても過言ではない。
厳格で凛々しい命先輩とは対照的に、優しくしてふわふわした印象を受けるが、その実力は折り紙付きで、ダンジョン攻略のみならず生徒会の庶務としても活躍している。
おぉお...!推しとそのお姉さんを生で、しかも同時に拝むことが出来るとは...!ありがたや...!
いやいや、感動してる場合ではない!折角推しが話し掛けてくれているんだ、ちゃんと答えなければ!
「あっ...えっとすみません、久々に人と話したので...ちょっと動揺しててぇ...それで、紫堂せんぱ...紫堂さんはどうしてここに?」
ヤバい、緊張してうまく喋れてない...
紫堂先輩...もとい命先輩は不審そうな顔をしつつも、答えてくれた
「さっきまでの気迫はどこに?まあいい...最近、相澤君の様子がおかしいとクラスのみんなから報告を受けてな」
「俺の様子が...変?」
ただ鍛錬してるだけだったんだけど?
俺は首を傾げる。
すると、真っ白な髪が、俺の視界の端に映った。
え?これ俺の髪?めっちゃ伸びてんじゃん...ていうか白!?何事!?
俺の更なる動揺をよそに、後ろの紫堂先輩...もとい真先輩が腰に手を当て、うんうんと頷く
「そうだよ~キミ、なんだかすごい迫力だったんだよ~?びっくりしちゃった~」
「はぁ...」
迫力?なんのことだ?集中はしてたけど...
命先輩が腕を組んで頷く。
「まぁ、確かにあれだけの剣術を手に入れるために半年も鍛えていたんだ。あれだけの気迫も身につくだろう。」
「は...半年!?もう半年経ってたんですか!?」
もう鍛錬を終わらせてダンジョンに行かないといけない時期じゃないか!?
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もう一話上げます
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