第13話 "極める"と鍛錬開始
「ゴブリン討伐完了、同じ内容でシミュレーションを開始しますか?」
再びアナウンスが流れた。
これで...成功なのか?
確かにゴブリンの攻撃が当たるより前に攻撃を与え、倒すことはできた。
しかし、今のが「後の閃」だったのだろうか?特に何か力が働いた様子も、特殊なエフェクトもない。ただ斬った感触があっただけだ。
やはり、ゲームの演出上、あのような表現になっていただけなのか?
「良し、考えてもわからん。とりあえず「後の閃」は成功と思おう。」
では、「後の閃」のレベルを"MAX"にするとは、一体どういうことだろうか?
とりあえず体を動かしながら考えるか...。
再びゴブリンのホログラムを生み出し、「後の閃」の動きを練習する。
レベルMAX、すなわち極めるとは...?
もっと素早く刀を振る事か?
違うだろう、それはステータスを上げることで得られる結果だ。技術の向上とは言えない。
あるいは刀の当て方、つまり斬る技術を向上させるという事だろうか?
う~ん...違う気がする。勿論必要な技術だと思うが...それは他のスキルに関しても言えることだ。
斬る技術を上げたからと言って「後の閃」が上手くなったとは言えないと思う。
「う~む...」
と唸りながら考え込む。いったいどうすれば"極めた"ことになるのか...
20体ほどゴブリン斬り捨てたところで一度、休憩を挟むことにした。
休憩しつつもシミュレーション設定の端末をいじる。すると、先ほどまでのシミュレーションの録画があることに気づいた。
おぉ...流石は名門校、フィードバック機能もしっかりついた良い物を使用している。
思ったより不格好だった己の居合切りにショックを受けつつ録画を見返して見ると、あることに気づく。
それは、斬られる瞬間のゴブリンが、驚いた表情をしていることだ。何匹かのゴブリンは気づいた後に防御姿勢を取っていたものもいる。
「こんなとこまで再現してんのかよ...」
と、シミュレーション技術に感心していると...
「これだ...!」
閃いた。後の閃を極めること、それは相手が俺の攻撃を察知できないタイミングまで待つことだ。
察知しても守れない、ではなく、察知できない。
相手の意識が完全に攻撃に向き、且つ相手が完全に「自分の攻撃は当たる」と確信する瞬間まで、待つ。
限界まで待った上で放たれる攻撃はきっと、相手を斬る瞬間まで、否、斬られた後でも、察知されることはないだろう。
「後の閃」のレベルが上がると威力が高まるのはきっとこのためだ。
相手が察知できないから、防御できない。つまり、こちらの攻撃が直撃=威力が上がる、と言うわけだ。
レベルが低いうちはカウンターをしても相手にガードされている。と言う事なのだろう。
「そうと決まれば...」
休憩を切り上げ、再びシミュレーションルームに入る。
ホログラムのゴブリンが雄たけびを上げ、棍棒を振り下ろしてくる。
それをじっくりと観察する。
まだか?まだ早いか?よし今!
自分が考えられるギリギリのタイミングで抜刀
しかし...
ポコッ
「
ゴブリンの棍棒が、俺の額に直撃した。
シミュレーションなので威力は抑えめであるが、それでもまぁまぁ痛かった。
抜くのが遅すぎたか...
「まぁそう簡単に習得できたら半年も鍛錬場に籠もらないか...」
だが、極めるとはどういう事か理解した。
これから全力で、後の閃を鍛えていくぞ!
その日から、地獄の鍛錬が始まった。
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