第11話 ルート決定とその理由
その後の自己紹介は紫堂先輩のインパクトが強すぎて全く覚えていなかった。
最後の生徒の自己紹介が終わり、先生が「よし!」と言って出席簿を閉じる。
「じゃあ自己紹介も終わったし、これでHRも終わりだ。今日はもう帰っていいぞ。それと、今日から新入生も学園内の設備を使えるぞ。ダンジョン探索にしっかり役立ててくれ。あと、早朝に設備を使いたいときは事前に先生に伝えるように。では、解散!」
HRの終了と共に、生徒たちは思い思いの場所へ向かう。
「ねぇ、どこ行く?お昼時だしまずは学食?」
「やっぱ天涯学園来たんだからダンジョンだろ!」
「いや、まずはダンジョンの下調べとして図書館に...」
などと様々な会話が聞こえてくる。
俺にも誠也が声をかけてきた。
「なぁ、龍平はどこ行く?やっぱダンジョンか?」
「いや、鍛錬場だな。」
俺は荷物をまとめる。
「おぉ~1日目からトレーニングか!ストイックなんだな龍平は!俺はダンジョンの下見に行ってみるぜ!!」
誠也は感心している。どうやら鍛錬場についてくることはなさそうだ。
「おう、気をつけてな。また明日。」
と言って俺はそそくさと教室を出る。
そう、俺がこれから行くのは鍛錬場、すなわちトレーニング施設である。
俺が選択したルートは1日目からちゃんと行動しなければならない。
俺が目指すルート、それは目立たず、且つ実力もつけることが出来る、俺にはうってつけのルートである。
そのルートの名前は 武神ルート
早朝、昼休み、放課後など、行動可能な全ての時間を鍛錬、あるいはダンジョン攻略に充てることで、中学生ながら大人の探索者と遜色ない実力を得ることが出来る代わりに、どのヒロインとも結ばれることなくエンディングを迎えるルートである。
恋愛を捨て、ひたすら己を鍛えると言う恋愛ゲーにあるまじき行為を行うこのルートは、ゲームを如何に早くクリアできるかを競う遊び、RTAにおいて重宝されるルートであった。
なぜなら殆どのヒロインと会話が行われないため演出が短く、且つこのルートを踏めば3年後のとあるイベントのタイミングで、そのままエンディングに直行する、すなわちゲームの後半部分である高等部編をまとめてスキップすることが出来るからだ。
そんな武神ルートのエンディングはこうだ。
中等部時点で実力をつけた主人公は、高等部でも鍛錬を続け、探索者として屈指の実力を身につける。高校卒業後も実力をいかんなく発揮し、探索者として大成する。
しかし、どこか満たされない、それは強くなりすぎてしまったが故の退屈なのか、あるいは愛を知らないからか...。
そんな空虚な気持ちを抱えながら、ダンジョンでモンスターを狩り続ける毎日を送る。
と言う、なんとも寂しいエンディングである。
どのヒロインとも結ばれずに独りでエンディングを迎えることから、ユーザーからは「童貞ルート」と呼ばれている。
ルートなどと言っているが、ヒロインとのフラグが立たないから強制終了しているだけの、ただの特殊なバッドエンドである。
しかし、そんな童貞ルートも、俺からすれば大変都合の良いルートに早変わりする。都合が良いのは「中学生ながら大人の探索者と遜色ない実力を得ることが出来る」と言う点だ。
と言うのも、行動可能な全ての時間を鍛錬に充てる、と言うのは実は正確ではない。
武神ルートの達成条件は、本編開始2年後の2月までに、一定以上のステータスを保持している事である。そのステータスを達成するためには、全ての時間を鍛錬に充てなければならないという話である。
つまり2年分全力で鍛錬すれば、大人の探索者同然の実力を得ることが出来る。
俺と主人公では適性の面で大きく差はあるが、俺には桁外れの魔力量がある。
身体強化してゴリ押ししてれば、ステータス確保に十分な量のモンスターを倒せる筈だ。
しかも俺は本編開始の1年前の世界にいる。つまり本編時系列的には、主人公よりも1年早く成長できる。
卒業までの3年間で、2年分の鍛錬をすればいいわけだから時間的余裕もできる!
俺のチャートはこうだ。
主人公が入学するまでの1年間はひたすら鍛錬、そして主人公の入学後の2年間はほどほどに鍛錬しつつ主人公とヒロインたちの絡みを生で堪能する。
武神ルートを生活の指標にしていれば、ヒロイン達と関わることはないので目立たず、実力をつけることが出来る。
下手に適当に行動してうっかり本編に関わるよりも、ずっと安全だ。
時間的余裕もあるので俺のオタク心を満たすことも可能!
「完璧だな...」
と、独り
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後半部分を大幅に改訂いたしました。
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