第10話 基本方針と自己紹介
俺は、主人公の1個上の先輩として、本編開始の1年前の世界に転生してしまったのだ。
俺は愕然とする。
いや、本編の1年前に転生したからで何だっていうんだ?
その後も入学式はつつがなく進む。式の最中、俺は今後どうすべきか考える。
まず学年が違うということで、俺はシナリオ上、ただのモブであることは確かだ。
俺のオタク心的に、ヒロインたちと関わってしまったら必ずお節介を焼いてしまうだろう。
そうなればシナリオが崩壊してしまう。
それに、仮にヒロインたちと関わるとしたら、主人公の1個下の後輩ヒロイン、つまり、今の俺の2個下のヒロインたちは関われる時間が1年分短くなる。
そうなれば後輩ヒロインたちが抱える問題を解決することは難しくなってしまう。
なので、ヒロインと関わることは基本NG。関わるとしてもまぁ、せいぜい知り合い程度にとどめるべきだろう。
ヒロインたちの問題解決は、来年入学する主人公君に任せるとしよう。
では、俺はこの世界でどのように生活すべきか?
きっと本編が終わった後、すなわち高等部を卒業した後、俺は探索者として生活していくことになるだろう。
そのためには死なないことは当然として、生活していくにはある程度、実力をつける必要がある。
ならば、俺がこの学園で目指すべきことは、目立たず、かつ冒険者として食べていける程度に実力をつけること。
「なら、ルートは決まったな。」
決意を新たにした俺は、誰にも聞こえないように小さく呟く。
考えているうちに、いつの間にか入学式は終わっていたようだ。次々と生徒たちが教室に戻っていく。
教室に戻り、席に着くと後ろの席の誠也がこっそり話しかけてきた。
「やっぱり入試1位の人、俺らのクラスだったな!」
そう言って教室の真ん中の席に座っている紫堂先輩に目をやった。
「そうだな」と言いて俺は少しだけ目を瞑り、神に感謝をささげる。
いや全く最高の幸運だ。大好きなゲームの世界に転生できただけで無く、推しヒロインと同じクラスになれるとは...!!
俺はモブだから深く関わるのは無理だが、あの紫堂先輩のお姿を間近で見ることが出来る!
もしかしたらクラスメイト程度には認識してもらえて、多少は話すこともあるかも!?
俺がトリップしているのも構わず、さらに誠也は目を輝かせて言う。
「紫堂さん、めちゃくちゃ綺麗だよな!!」
「そうだな、それに紫堂せんぱ...紫堂さんは入試1位なわけだから、実力も相当だろうな。」
「だよな~!綺麗で強いとか無敵じゃん!」
そうなんㇲよ紫堂先輩は綺麗で頼りがいがあって、でもその中にちらっと見える乙女心がこれまた良い~アクセントになって最高、すなわち無敵のヒロインなんよなぁ...いや~よくわかってるわ誠也は!
俺は腕を組んでうんうんと頷く。誠也が「どうしたんだ?」と訝しんでいるがそんなことは気にしない。いや~最高なんㇲよ紫堂先輩は!
そうしていると、ガラリと教室の扉が開き、担任の先生が入ってきた。
「よし、全員揃ってるな。じゃあ出席番号順に自己紹介していくぞー」
俺の苗字はあいざわなので出席番号は当然1番だ。まぁ35年も生きていれば今更自己紹介で緊張するようなことはない。適当に流そう。
「出席番号1番、相澤 龍平です。探索者として死なない程度には強くなろうと思ってます。よろしくお願いします。」
さぁ反応はどうだ...?
「あいつ遅刻してきた奴だよな?」
「転んで女の先生に引っ張られてたよね?」
「結構な問題児かもな...」
うん、微妙!
「お~。中々現実的だな。頑張ってくれ。」
担任の先生は朗らかに笑って言う。
次の誠也の自己紹介は、大変元気な様子で、皆からの反応もとても良かった。誠也はダンジョン探索のパーティーに引っ張りだこかもな~元気な奴いるとパーティーの士気が上がるからな~
うん、これはやっぱり一人で強くなる方向で考えた方がいいかも!
そうして自己紹介も順調に進み、ついに紫堂先輩の自己紹介が始まる。
新入生挨拶は聞き逃してしまったから今度は聞き逃さないようにしなければ...!
俺は全力で耳を澄ませる。
紫堂さんはキリっとした表情で、ピンと背筋を伸ばして話し始めた。
「出席番号18番、
おぉ...と教室がざわめく。所々から「やば...カッコイイ」と言う女子たちの声や、
「紫堂って...もしかして治安維持会の会長の子供か!?」と言った驚愕の声が聞こえてくる。
そう、紫堂先輩は探索者治安維持会という、ダンジョンにおける警察の役割を持った組織のトップの娘さんである。
厳格で格好いい父の背中を追いかけ、紫堂先輩も治安維持官を目指している。
そんな事情もあって、紫堂先輩は将来立派な治安維持官として活躍するために、清廉潔白で皆に頼られる振る舞いを心掛けているのである。
それにしても...
なんと凛々しい声だろうか!!俺は感動する。
いやぁ~この世界に転生できて良かった~まさか紫堂先輩の声をイヤホン、スピーカー越しでなく生で聞けるとは...!
その後の自己紹介は紫堂先輩のインパクトが強すぎて全く覚えていなかった。
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