第9話 入学式と真実
「実は、その入試1位の人、多分俺たちのクラスなんだよ!」
「へぇ...そうなんだ?」
誠也曰く、教室でのHRの際には席が2つ空いていたらしい。しかし、新入生の席は俺が来るまで1つしか空いていなかった。つまり教室に来なかったもう一人は新入生代表あいさつを行う人、つまりは入試1位の人である。との事だ。
ゲームにおいては、入試1位はなんと主人公である。
何故か?それは主人公君が探索者として最高のポテンシャルを秘めているからである。
主人公君は魔力量が多いことに加えて、すべての属性に適性があるのだ。
魔法は、火、水、風、土、雷、光、闇の7つの属性に分かれている。大体の人はこの7つのうち0~3つの属性を扱える、すなわち適性があるわけなのだが、主人公君はすべての魔法に対する適性がある。
つまり主人公はこの世のすべての魔法を使用することが出来るのだ。
その適性を評価されて、主人公君は入試1位をもぎ取ったのである。
そう言えば、俺には属性の適性はあるんだろうか?
確か公式が出したファンブックの資料では、学生証の裏側に学生の魔力量と適性が書いてあるってことになってたな...
そう思って胸ポケットから学生証を取りだし、裏面を確認する。
そこには、魔力量:A+、属性適性:なしと書かれていた。
つまり魔法は身体強化しか使えないってことね...トホホ
ていうか魔力量多っ、これストーリー中盤の主人公より多いじゃん!?道理で属性適性がないのに入学できているわけだ...。
まぁ何はともあれ、シナリオに従っているならば主人公君はこのクラスに所属することになる。
俺が転生者であることを鑑みると、主人公君も転生者である可能性は十分ある。
主人公君、ちゃんとシナリオ通りに行動してくれるだろうか?
一抹の不安を感じながら、雑談を続けていると、ついに入学式が始まった。
式の最中周りを見渡してみたが、ヒロインらしき人は見当たらない。
やっぱりここは「天虹」に似ているだけの別の世界なんだろうか?
式はつつがなく進行し、ついに新入生代表挨拶が行われる。
しかし、司会の先生から出た言葉は俺の予想を裏切り、大いに驚愕させるものだった。
「新入生代表挨拶、新入生代表、
「えっ???」
呼ばれたのは主人公の名前ではなかった。
紫堂 命。それは、俺が「天虹」のキャラクターで最も推している先輩ヒロインの名前だった。
「はい。」
凛とした声が体育館に響く、中学生ながら「凛々しい」と言う表現が当てはまる少女が、スッと立ち上がる。
中学生にしては背の高い、深い紫色のウルフカットの美少女が、まっすぐ、堂々とした歩調で壇上へ歩く。
壇上に立つと、マイクを直し、目を閉じる。小さく深呼吸をした後、髪色よりもやや薄い紫色の目を見開いた。
「先生方、そして先輩方、本日は私たち新入生のために、このように素晴らしい入学式を開いていただき、誠にありがとうございます・・・」
紫堂先輩の美しい声による挨拶が行われる。
本来ならば、俺もオタク心全開で、紫堂先輩の言葉を一言一句聞き逃さないように耳を澄ませるのだが、今はそれどころではなかった。
なぜなら、この世界がどういう世界なのか理解してしまったからだ。
ここは間違いなく「天虹」の世界だ。似ているだけの別世界でも、ましてシナリオから外れてしまった世界でもない。
ではなぜ、主人公の担任であるはずの栗沢先生はどこの担任もしないと言ったのか?
なぜヒロインたちが見当たらないのか?
その答えはシンプルだった。
俺は、主人公の1個上の先輩として、本編開始の1年前の世界に転生してしまったのだ。
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描写が無いのに龍平が自分の適性を知っているのはおかしい。というご指摘をいただきましたので、修正いたしました。
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