第8話 良い奴と雑談
「シナリオが崩壊してしまった時に、自分を守れるだけの力は持っておいた方がよさそうだな...。」
誰もいない廊下を歩きながら、俺は小さく呟いた。
どうやって強くなるべきか、と考えながら
時計を見ると9時30分。入学式は10時スタートのはずだが...
黒板を見ると、「遅刻した者は、荷物を置き次第すぐに体育館へ」と書いてあった。
成程、早めに会場に移動して待機しているのか。
地図を見ながら体育館へ向かいつつ、考え事を継続する。
ゲーム通りに強くなるなら、ヒロインたちと共にダンジョン攻略をするのが手っ取り早いんだけど...。
既にシナリオから外れた事象が起きている中、俺が下手にヒロインに関わってシナリオに影響を与えるわけにはいかない。
とあればやっぱり普通にヒロイン以外の友達作ってパーティーでダンジョン攻略して力をつけるのが良いか...。友達出来るかなぁ...。
それか、あのルートか...。
歩いているとようやく体育館にたどり着いた。入り口を潜り、自分のクラスの席を探す。
すると、「1年2組」と書かれたプラカードと、その周りに座っている生徒たちが見えた。よし、あそこが俺のクラスの席か。
席へ向かい、担任の先生らしき男性と話をする。ゲームでは見たことない先生だ。ちなみに禿げてはいない。
担任の先生に学生証を見せ、遅刻したことを謝罪する。
担任は大らかな人で、笑いながら許してくれ、席に案内してくれた。
俺のクラスの席は一つだけ空いていた。どうやら遅刻したのは俺一人だけのようだ...席に向かう間クラスメイトの視線が集まる...恥ずかしい...。
席に座ると、隣に座っていた金髪の少年が声をかけてきた。
「おっ?キミあれだろ?さっき校庭で凄い勢いで転がって木にぶつかってた奴だろ?凄い音してたぜ?大丈夫だったか?」
ずいぶん明るい奴だ、ともあれ話しかけてくれるのはありがたい。
「うん、大丈夫だったよ。心配してくれてありがとう。ごめんねぇ驚かせちゃって。遅刻しそうになったから急いでてねぇ。」
「おぉ...なんかおばあちゃんみたいな喋り方だな...」
しまった、中学生が相手だからと話し方が優しくなりすぎてしまった。
今の俺は35歳ではない...12歳だ...相手は年が離れた子供ではない...同級生なんだ...。
「あ~っとぉ...ごめん。俺、かなりおばあちゃんっ子だったから、たまにこんな感じの喋り方になっちゃうんだ。変だったらごめんな?」
「いや?全然変じゃねえぜ!ばあちゃんのこと大事にしてんだな!俺は
良い奴...!世界線が違えば主人公でもおかしくないぞ! 良かったぁ初日に誠也と知り合いになれて...!
「俺は
「おう!よろしくな!龍平!」
そうして俺と誠也は雑談を続ける。自然と話題は俺の身体強化の話になった。
「そう言えば、龍平の走りは凄かったな!あれはやっぱ魔法を使って走ってたのか?」
「そうだなぁ、身体強化使って走ってたよ。けど、まだまだ使いこなせなくてね、うっかり暴走させてあの様ってわけ。」
「やっぱりもう使えるのか~良いなぁ~俺も早く魔法使いてぇ~」
そう言って誠也君は唇を尖らせる。が、すぐに俺の方に向き直って言う
「正直あんな凄い魔法使えてるなら入試1位でもおかしくないと思うんだけどな~」
俺は、魔法が使えても入試1位にならない理由をゲームで知っていたので答える。
「まぁ、入試に必要なのは魔法よりも魔力量とか純粋な身体能力とか、ダンジョン探索の素質だからな。魔法が使えるからと言って評価が上がるわけでもないんだよ。」
「ほぉ~そうなのか~よく知ってんだな~」
誠也君は腕を組んで感心している。しかし...
「でも、これは知らないだろぉ?」
と言ってニヤニヤしながら俺を見る
「何を?」と俺が尋ねると誠也君は腕を組んだまま胸を張って自慢げに語る。
「実は、その入試1位の人、多分俺たちのクラスなんだよ!」
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伊藤君の名前が例の誠君に似ている、と言う感想をいくつか頂いています。
偶々です、なんかいい奴そうな名前を考えていたらそうなってしまいました。
例の彼のような男ではありませんので、ご安心ください。
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