第6話 誤解と詰問
「あの...すみません。俺、新入生なんです...。」
「え゛?」
俺が学生証を見せると、栗沢先生は驚愕の表情を浮かべる。
「ごめんなさいね?その学生証、ちょっとよく見せてもらえる?」
そう言うと、彼女は俺の手から学生証を奪い取り、食い入るように確認する。
「1年2組...相澤 龍平くん...20XY年入学...今年だ...ってことは本当に新入生!?ってことはあなた...まだ魔法の授業受けてないの!?」
俺は気まずそうな顔で答える。
「はい...本当です。まだこの学園で授業は受けてません...。」
「そんな...まだ授業を受けてないのにどうやって!?」
あり得ない、とでも言いたげに俺の方を見つめる。そんな表情もかわいいなぁ...。流石はゲーム内人気投票で、サブキャラにもかかわらずヒロインたちに次いで8位になった先生だ。
違う違う。まずい...素直に話過ぎて怪しまれている...。とりあえず誤魔化すか。確か原作では探索者の親が、子供を優秀な探索者に育てるために小さい頃から魔力の使い方を教えることがある、とか言う設定があったはず。
「えっと...自分の親も探索者だったので、それで魔力の使い方を教えてもらっていたんです。」
「だったら制御の仕方も教えてもらってるはずでしょう!?なんで暴走しちゃってるのよ!?」
それもそうだ、まずいな...どう誤魔化す?
何せ、この体の記憶が全くない。あまり適当なことは言えないぞ...
いや、そうだ!この体の名前と前世の自分が完全に一致しているし、姿も若い頃の自分そのままだから、生い立ちもそのままだったりするんじゃないか?だったら...
「ええと...それは、魔力の使い方を習ってからすぐに、親は海外に行ってしまって...それからは親戚の家で暮らしてまして...、親戚は厳しい人で、「危険だから」って言って魔力を使うことを禁止してたんです。だから、学園生になった今日からは魔法を使ってもいいんだ!って思って...」
俺は落ち込んだ様子を見せながら生い立ちを話す。
まぁ、実際には禁止されてたのは漫画とゲームなのだが...。
俺の話を聞いた先生は、「そうだったの...」と、少しだけ憐れんだ表情をする。
どうやら上手くだませたようだ。
「なるほどそんな事情が....いやそれにしてもよ!、新入生であの出力は異常よ。まさか、その小さい頃にダンジョンに入ったりはしていないでしょうね?」
これも確か原作で言及されていたな。探索者養成校に通っておらず、かつ探索者資格を持っていない者は、例え探索者が同伴していても、ダンジョンに立ち入ってはならない。と言う法がこの世界にはある。
しかし我が子を優秀な探索者にしたい、という考えが行き過ぎるあまり、自分の子供を、小さいうちからダンジョンで鍛える親もいるという。
当然そんなことをすれば資格剝奪レベルの厳罰が下る上に、自分の子供を危険に晒す。というわけで、養成校に通わせないうちにダンジョンに子供を潜らせるのはこの世界では忌避される。具体的には未成年のタバコと飲酒くらいに。
「いえ、自分が覚えている限りでは、ダンジョンに入ったことはありません。」
実際はダンジョンに入った記憶どころか、この体の12年分の記憶が丸々無いのだが。
「そう、じゃああなたは本当にただの新入生なのね...。」
「はい...。」
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